VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

EXPERIENCE

話術に想いを乗せて、相手に伝える──
声の仕事に秘められたクリエイティビティ

2018.12.21 FRI
話術に想いを乗せて、相手に伝える──声の仕事に秘められたクリエイティビティ

それぞれのフィールドにおいて活躍する第一人者にインタビューし、彼らのクリエイティビティの源泉を明らかにしていく連載企画「Source of Creativity」。第3回は、FMラジオ局J-WAVEにてナビゲーターを務めるサッシャ氏に話を聞いた。

(読了時間:約6分)

Text & Edit by Hitomi Miyao
Photographs by Sachiko Horasawa(CROSSOVER)

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相手を活かし、語らせる“脇役”ならではの会話術

Vibe(MTVの前身となる音楽チャンネル)の VJとしてのキャリアを皮切りに、声の仕事を始めてからもうすぐ20年になるというサッシャ氏。現在ではラジオに留まることなく、自転車やモータースポーツ、サッカーなどのスポーツ実況や、イベントのMCなど、活動の幅を広げている。

もともとJ-WAVE開局時からのリスナーで、大のラジオファン。好きなことを仕事にしたい一心でこの世界に飛び込んだ。「師匠もなく手探りでここまでやってきましたが、やるほどに声の仕事は脇役であり続けることが重要だと実感します。魅力的な音楽や面白い情報、いい試合などがあって初めて成り立つのがこの仕事。僕の役目は『こんな面白いものがあるからもっと見てほしい、聞いてほしい』と、リスナーや視聴者に伝えることです」
「音楽でもスポーツでも、主役を引き立てることができたと感じる瞬間が、なによりも楽しい」
「音楽でもスポーツでも、主役を引き立てることができたと感じる瞬間が、なによりも楽しい」
人前に出る仕事をしているものの、もともと目立ちたがり屋なタイプではないというサッシャ氏。自分が紹介することによって何かが面白くなったり、魅力を引き出したりする“まわし役”に徹するのが楽しいのだと話す。

「ラジオであれば音楽や情報が主役だし、スポーツ実況であれば試合そのものが主役です。僕の役割はその魅力を引き出し、伝えること。脇役だけど、ないと主役が締まらないし、どこか物足りない──自然にそこにある存在。カレーでいえば、福神漬けのような存在になれればいいと思っています」

脇役だからこそ、主役を活かせるかどうかはその手腕に懸かっている。彼が理想にしているのは、トーク番組「徹子の部屋」。司会の黒柳徹子さんの存在感やキャラクターが圧倒的ではあるが、主役はあくまでもゲストであるよう徹底したスタンスがすごいという。「ゲストの情報をきっちり調べたうえで、あえて相手に水を向けて語らせる。あの方の話術だからこそ引き出せるゲストの話や表情があって、それが番組の魅力につながっていると思います。名司会者と呼ばれる方々は、話し上手ではなく聞き上手、まわし上手なのだと納得させられます」
毎週月〜木曜の昼間に担当するラジオ番組J-WAVE「STEP ONE」には、多彩なゲストが登場する
毎週月〜木曜の昼間に担当するラジオ番組J-WAVE「STEP ONE」には、多彩なゲストが登場する
ミュージシャンから専門家まで多彩なゲストを迎える自身の番組でも、いつもゲストの持ち味を最大限に活かすことを考えているのだとか。とはいえ、番組出演の数分前が初対面になることも珍しくなく、考えることができる時間はほんのわずか。「いくらゲストについて予習していても、人となりは分かりません。挨拶してから本番に入るまでの時間で、そのゲストがどういう方なのかを探ります。自分が率先して話したいタイプなのか、問いかけがあった方が話しやすいタイプなのかを見極めて、トークの進め方を変えるだけで相手の反応が随分違ってくるんです」

気持ちよく語ってもらえるような合いの手を入れ、本音や核心を引き出す。その一方では聞き手のことも考え、話の要点を押さえて時間内で結論を導き、わかりやすいトークになるようまとめることも重要だ。「ゲストからは『この番組は話がしやすい』、リスナーからは『この番組では、ほかでは聞けない話が聞ける』と言ってもらえるのが理想」だという彼の、脇役ならではの工夫である。

自分の声と言葉を駆使し、本音で話すことで伝わるもの

どんな内容であれ、一方的に伝えるのではなく「こうしたら面白いよ」、「こういう視点で捉えることもできるよ」といった楽しみ方を聞き手にプレゼンしている感覚だというサッシャ氏。内容にふさわしい声のトーンや話し方なのか、言葉選びなのかをいつも意識しているという。

ナビゲーターを始めてまだ間もない頃のこと。番組で流す曲を紹介する際、イントロから歌に入るまでの時間を計るためにストップウォッチを使用していたそう。するとタイムキープが完璧になる一方で、別の弊害が生まれることに気がついた。

「歌が始まるまでの秒数内に情報を収めることがメインになってしまって、言葉の選び方や話すテンポが曲にあっていなかったんです。曲をよりよく聴いてもらうためのトークのはずが、魅力を半減させていると思いました。そこで、ストップウォッチを使うのをやめて、曲のテイストや世界観を意識して話すように心がけました。時間を気にしなくなったことで、音楽のフローと喋りをマッチさせることができるようになったと思います」
オーディオテクニカのモニターヘッドホンを愛用。新機種が出るたびに買い替え、現在使っているもので8機目
オーディオテクニカのモニターヘッドホンを愛用。新機種が出るたびに買い替え、現在使っているもので8機目
そして、聞き手に声を届けるうえで重宝しているというのがモニターヘッドホン。音をデフォルメして表現するリスニング用ヘッドホンとは異なり、そのままの音を拾って再現するのが特徴だ。スタジオに設置されているマイクによって声の拾い方や再現性が異なるため、自分の声をチェックするために欠かせない存在なのだとか。

「声をフラットに再現するので、マイクがどのように僕の声を捉え、相手に聞こえるのか把握することができます。いまは長年の感覚で自分の声の調子はある程度分かりますが、マイクとの距離やトーンなど、聞き手にどう届いているかを意識するうえで必要です。ラジオは基本的に1対1のメディア。だからこそ、その1人に向けて喋りかけ、問いかけるようなトーンを大切にしています」

もうひとつ、語りのテンポや声のトーンと同じくらいサッシャ氏が大切にしているのが、自分自身が楽しんで興味を持つこと。「仕事だから予習する、押さえておくという感覚だと、どうしても言葉に深みが出ない気がするんですね。ラジオの仕事をきっかけにスポーツ実況、映画や音楽イベントの司会など仕事の幅は広がっていますが、どれももともと僕が好きだったことです。好きだからこそ自然と知識が深くなって言葉にも熱が入る。自分自身が興味を持って嘘のない言葉で伝えることが、結果的に相手の心に届くのではないかと思います」
スポーツ実況やイベントなどの司会を務めた際のスタッフパス。「好き」を極めた結果、活動の幅が広がった
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声のトーンや口調、話し言葉など相手のことを意識しながらも、自分の感情を伴った言葉で伝えるという真摯な姿勢。そうやって聞き手と向き合うことで価値観を共有したり、新しいことに興味を持ってもらうきっかけになれたら、それが一番の理想だというサッシャ氏。誰にでもできるようで奥が深い「人に伝える」仕事のクリエイティビティを支えているのは、扱う情報と届けたい相手の両方に対するひたむきな想いだった。

連載企画、「Source of Creativity」。次回は、写真家・桐島ローランドさんのクリエイティビティの源泉に迫ります。
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