VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

EXPERIENCE

地中海の真ん中、シチリア島のその先へ──
野性的な自然の恵みあふれるパンテッレリア島

2018.12.17 MON
地中海の真ん中、シチリア島のその先へ──野性的な自然の恵みあふれるパンテッレリア島

魅力的な被写体との出合いを求め、世界中を飛び回り続けている写真家、在本彌生が、印象深い出合いを自らの作品と文章で綴る連載。第6回は、サマーバカンスの季節には多くのセレブリティが訪れるシチリアの離島、パンテッレリア島のオフシーズンの魅力を記す。

(読了時間:約5分)

Photographs & Text by Yayoi Arimoto

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何と言っても荒々しくむき出しの自然がこの島の魅力

パンテッレリア島は、アルマーニをはじめとしたセレブリティの別荘が建ち並び、自家用ヘリコプターで飛んでくるようなリッチな人々の集まるシチリアの離島だ。いまやその人気は一般的にも定着し「こんな田舎の島にこんなものが!」という具合に、洒落たブティックやレストラン、遊び場がハーバーに建ち並ぶ、ヨーロッパで人気のバカンスデスティネーションと言っていいだろう。
溶岩の黒と水の青が重なる。島には希少な固有種の植物も多く草花を眺めながらのハイキングが楽しい
溶岩の黒と水の青が重なる。島には希少な固有種の植物も多く草花を眺めながらのハイキングが楽しい
夏の間はミラノからのダイレクト便もあり、都会からひとっ飛びで別世界を味わえる(時間があるならシチリア本島のトラパニからの船旅も旅情があっていい)。もちろん新鮮な魚介も豊富、ワインの産地でもあるので、食事やお酒も大いに期待できる。火山の島ゆえ温泉もあり、日焼けしても肌を上質な温泉のクレイでお手入れできるのでご安心を。
島でしか食べられないリコッタチーズのクリームを挟んだ揚げ菓子 / 島の老舗食堂「RISACCA」の魚介を使ったパスタの数々
島でしか食べられないリコッタチーズのクリームを挟んだ揚げ菓子 / 島の老舗食堂「RISACCA」の魚介を使ったパスタの数々
そんなパンテッレリア島、もちろん優雅なリゾートを満喫したい方には自信を持ってお勧めするが、人の数がぐっと減った9月後半以降のこの島の姿は、昔から変わらぬ生活ぶりや自然が露わになってさらに面白い。離れ小島の慎ましくも力強い生活が見えてくる。

この島の魅力は何と言っても荒々しくむき出しの自然、風の強さが独特の風土を生み出しているのも興味深い。火山の溶岩からなる岩山や海岸線は黒々として、男性的な印象だ。波が高い浜と静かな浜の差が両極端なので、ビーチにたたずむだけでなく、海を眺める楽しさもある。
青い海と湖が折り重なる。手前の美しい湖は乙女の鏡と名付けられている
青い海と湖が折り重なる。手前の美しい湖は乙女の鏡と名付けられている
島には天然のサウナや温泉もある。火山灰からなる泥を塗りながら湯に浸かる
島には天然のサウナや温泉もある。火山灰からなる泥を塗りながら湯に浸かる

人の手のかかったありがたいワインが出来上がる理由

島で育つ植物、作物の一番の特徴は、低木であること。常に強い風に晒されるこの島の植物は高さを保つことができず、背を低く保つことで種を守って来た。代表的な産物のワインぶどう「ジビッボ」の畑に行くと、見たことのない形のぶどうの木が、まさに地を這うような姿勢で土を覆っている。たわわな果実が地面ギリギリにぶら下がっている、あるいは寝転んでいる。不思議の島に来てしまったのではないかとひと時錯覚する光景だ。

ぶどうだけではない、オリーブの木までもどっしりと低姿勢。この独特な樹木からなる果実は特別なものに違いない。低木ゆえ、果実の収穫も機械でざっくりと済ませることはできず、自ずと手摘みになる。だから自然の力と人の手のかかったありがたいワインが出来上がるのだ。
栽培されているぶどうは木の高さがないので棚もない
栽培されているぶどうは木の高さがないので棚もない
限りなく野生に近い形で生育したジビッボ種のぶどう
限りなく野生に近い形で生育したジビッボ種のぶどう
パッシートはぶどうを少し干してから仕込む酒。大人が食後に味わうデザートワインとして人気が高いが、同じジビッボで仕込まれた白ワインも少量ながら作られている。イタリア国内でもなかなかお目にかかれないワインなので、この島に来たなら是非とも島の料理とともに味わって頂きたい。野性的な強いミネラルとフルーティさを併せ持った別品だ。

この島の名産物として忘れてはならないのがケッパーとオレガノだ。シチリアの味を支える脇役のツートップと言っても過言ではないだろう。過剰な水分を嫌うケッパーは、最盛期の夏のはじめ、日が昇るとともに収穫される。可憐な花を咲かせるその蕾が、おなじみの小さい粒のケッパー。最近では葉も加工食品として広まりつつある。厳しい環境でも逞しく育ち、水分を蓄えることができる植物ゆえ、食用すると抗酸化作用が期待されるという。美味しくて食べ過ぎてしまう危険も孕んでいるが、健康に良いならばそれほど良いことはない。

オレガノもこの島のものは特別で、島の人々は花の部分しか調理に使わない。他の土地でもよく見かける植物だが、パンテッレリアのものは花の形が短くぼってりとしていて、土着の種が今日まで守られている。爽やかな香りの高さは顔を近づけると頭の中がすっきりとして目がさめるよう、まさに魔法のハーブだ。
花が咲きかけたケッパー。蕾がよく料理に使われる部分
花が咲きかけたケッパー。蕾がよく料理に使われる部分
パンテッレリア発の食材店「KONZA KIFFI」の畑では抜群の環境で完全有機のオレガノやケッパーが育てられている
パンテッレリア発の食材店「KONZA KIFFI」の畑では抜群の環境で完全有機のオレガノやケッパーが育てられている

土着建築の面白さ。ダンムーゾの屋根と石垣

島内はハーバーの華やかなエリアを除けば建物はまばら、むしろ隣の家まで歩いて行くのも大変な場所も多い。宿は機能的なリゾートホテルを選ぶのもいいが、何泊かできるなら是非ともお勧めしたいのがこの土地特有の家屋、ダンムーゾでの宿泊。島の暮らしを垣間見ることができる。

ダンムーゾはパンテッレリア独特の建築で、大抵の場合平屋建て、壁面は石作り、屋根は丸い帽子をかぶったような形をしている。この独特な屋根の形は、貴重な雨水を屋根の淵に流し再利用するために出来上がったという。きのこやお菓子のようにも見えるこの面白い形の屋根の家、内部は石造りのため涼しく快適だ。黒い岩山にポツリポツリと建つダンムーゾと石垣はこの島独特のエキゾティックな景観をつくりあげている。
ダンムーゾの屋根。中央部がこんもりと盛り上がっていて、淵に溜まった雨水を再利用できる仕組み
ダンムーゾの屋根。中央部がこんもりと盛り上がっていて、淵に溜まった雨水を再利用できる仕組み
葡萄畑と石垣とダンムーゾ。島の典型的な風景
葡萄畑と石垣とダンムーゾ。島の典型的な風景
海辺に建ち並ぶダンムーゾ、子供の描く小屋のような形状
海辺に建ち並ぶダンムーゾ、子供の描く小屋のような形状
夜のハーバーはロマンティック、街の中で唯一の繁華街エリアでもある
夜のハーバーはロマンティック、街の中で唯一の繁華街エリアでもある
記事トップの写真は、宿泊したダンムーゾの屋根からの風景

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