大人が夢中になる究極のレース
これまでに39か国で165回を超えるレースが開催され、参加者数100万人以上、年間観客数30万人以上と、世界で人気を博している障害物レース「スパルタンレース」。これはふたりのアメリカ人、ジョセフ・デセナとアンドリュー・ワインバーグが2004年に開催した、過酷な48時間耐久レース「デス・レース」のスピンオフとしてスタートしたもので、日本には2017年に初上陸。2018年に開催された国内第4回目となるレースは群馬県の水上宝台樹スキー場を舞台に、鍛え上げられた屈強な男女4303人ものランナーが集まった。
コースは主に3種類用意されている。約5kmのコースに21個の障害物が配されている初挑戦者向けの「SPRINT」。約13kmのコースに26個の障害物が待ち受ける、よりハードな「SUPER」。そして12歳以下の子どもを対象とした「KIDS」。そのなかでも「SUPER」は完走を目標とする「オープン」と、全てのアスリートのなかの頂点を目指す賞金レース「エリート」に分かれ、初心者から上級者まで楽しめるようなコース設計になっている。
コースは主に3種類用意されている。約5kmのコースに21個の障害物が配されている初挑戦者向けの「SPRINT」。約13kmのコースに26個の障害物が待ち受ける、よりハードな「SUPER」。そして12歳以下の子どもを対象とした「KIDS」。そのなかでも「SUPER」は完走を目標とする「オープン」と、全てのアスリートのなかの頂点を目指す賞金レース「エリート」に分かれ、初心者から上級者まで楽しめるようなコース設計になっている。
初参戦となる我々取材チームは「SPRINT」コースにエントリー。開催当日、雨降りしきるなか会場に配された数々の障害物とスキー場の急な勾配を目の前に、果たして完走することができるのかと不安は募るばかり。スタートのゲートに入るとMCの煽りが始まり、ランナーたちは「We are SPARTAN!」とコール&レスポンスを繰り返して士気を高め、会場のボルテージが最高潮に達したところでいよいよレースがスタートした。まず待ち構えるのは身長ほどの高さの壁の連続。早くも苦戦を強いられるランナーもいるのだが、この程度すらクリアできない者は参加する資格すらないと言われているかのようだ。
ランナーの体力を奪ういくつも関門
進むにつれて障害物の難易度は増し、ランナーたちが最初に悲鳴を上げたのは「Dunk Wall」という種目。これは、腰の高さまである泥水に設置された壁を下からすり抜けるというもので、雨でずぶ濡れとはいえ、冷え切った泥水のなかを潜るというのはやはり躊躇ってしまうもの。意を決して飛び込み、全身泥まみれになったところで、これがスパルタンレースの洗礼かとその醍醐味が感じられた。
そこからおよそ約50kg(女性は約30kg)の鉄球運びや、張り巡らされた有刺鉄線をほふく前進で進んでいく種目が続き、ランナーたちの体力を次々に奪っていく。なかでも一番過酷だったのは、レース終盤にあらわれた「Bucket Brigade」。石がぎっしり詰まった大きなバケツを、勾配のある100mほどの坂道を腕の力だけで持ち運ぶというもので、鍛え上げられた肉体をもつランナーさえも険しい顔つきで残された力を振り絞って進んでいく。
そこからおよそ約50kg(女性は約30kg)の鉄球運びや、張り巡らされた有刺鉄線をほふく前進で進んでいく種目が続き、ランナーたちの体力を次々に奪っていく。なかでも一番過酷だったのは、レース終盤にあらわれた「Bucket Brigade」。石がぎっしり詰まった大きなバケツを、勾配のある100mほどの坂道を腕の力だけで持ち運ぶというもので、鍛え上げられた肉体をもつランナーさえも険しい顔つきで残された力を振り絞って進んでいく。
さらにロッククライムのように握力のみで壁を伝っていくものや、ロープを登るものなど、まったく箸にも棒にもかからない障害物もいくつかあり、何度も挫折感を味わうことに。クリアできない種目はバーピー(腕立て伏せ&ジャンプ)を30回することで免除されるわけだが、これまた心が折れるほどにキツい。取材チームも途中、疲労のあまり足がつるなどハプニングがあったものの、炎を飛び越える最後の試練をクリアしてゴールした。タイムはおよそ3時間。距離にして約5kmという長さにも関わらず、ここまで時間を要してしまうのは、スパルタンレースがいかに過酷かということがわかるだろう。
エクストリームなスポーツに注目があつまる未来
どのような障害物が用意されているか当日まで伏せられ、ランナーはあらゆる身体能力と応用力が求められるスパルタンレース。ここで試されるのは、重い物を持ち上げる筋力や高い壁を一気に跳び越える瞬発力、そしてそれらを走りながらクリアするための持久力など、生物にとっての根源的な能力だ。
印象的だったのは過酷を極めた環境にも関わらず、ランナーたちは生き生きと楽しんでいたということ。完走が目標のオープンレースでは、職場の同僚やジム仲間などチームで出場しているランナーも多く、ときに励まし合い、ときに助け合いながら試練を乗り越えていく様子が見られ、非日常的なシーンとして新しい体験をもたらしたに違いない。
SNSなどでメンバーを募集し、見ず知らずの人とチームを組んでいる例も多く、自分の周りにアスリートがいなくても気兼ねなく参加できる。それだけでなく、レース中での過酷な環境は、自然とほかのランナーとの“励まし、励まされる関係”をもたらしてくれる。エクストリームな環境を仲間とリアルに共有することで、日常にはない、濃度の高い共有体験を味わえるのが、スパルタンレースがここまでの盛り上がりを見せている要因ではないだろうか。
こうしたムーブメントは一時期のファンラン・ブームと同じく熱が冷めていくのか、もしくは鍛え抜いた肉体を持て余した市民アスリートにとって、オルタナティヴな存在になり得るのか。おそらく、トップアスリートが生身に近い身体で山の頂や海の底を目指し続けるように、人類が己の限界に挑戦することを諦めない限り、このムーブメントが止まることはないのかもしれない。
次回はアジア初となるスタジアムレースを開催。広大な自然の中で開催される通常のレースとは違い、コンコース内を走ったり、観戦スタンドを駆け上がったりとコース設計もユニークになることが予想される。今後、ますます盛り上がりを見せるに違いない「スパルタンレース」に目が離せない。
スパルタンレース
http://spartanracejapan.info/
こうしたムーブメントは一時期のファンラン・ブームと同じく熱が冷めていくのか、もしくは鍛え抜いた肉体を持て余した市民アスリートにとって、オルタナティヴな存在になり得るのか。おそらく、トップアスリートが生身に近い身体で山の頂や海の底を目指し続けるように、人類が己の限界に挑戦することを諦めない限り、このムーブメントが止まることはないのかもしれない。
次回はアジア初となるスタジアムレースを開催。広大な自然の中で開催される通常のレースとは違い、コンコース内を走ったり、観戦スタンドを駆け上がったりとコース設計もユニークになることが予想される。今後、ますます盛り上がりを見せるに違いない「スパルタンレース」に目が離せない。
スパルタンレース
http://spartanracejapan.info/
ミレニアルズが熱狂する「パルクール」の“いま”