VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

CRAFTSMANSHIP

25年以上も愛用しつづけている
ターンブル&アッサーのシャツ

2018.12.07 FRI
25年以上も愛用しつづけているターンブル&アッサーのシャツ

仕事柄、さまざまなブランドのシャツを購入してきたという中村孝則氏が、25年以上も前から愛用しつづけているのが英国の「ターンブル&アッサー」のシャツだ。本コラムでは、なぜこのシャツが氏を魅了しつづけるのか、その理由をつづる。

(読了時間:約4分)

Text by Takanori Nakamura
Photographs by Masahiro Okamura

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カジュアルフライデーで知ったターンブル&アッサーの真価

こういう感覚も“肌が合う”と表現するのだろうか。クローゼットからシャツを選ぶとき、ターンブル&アッサーに手が伸びがちなのは、無自覚に肌が求めているのだと思う。仕事柄もあり、いろいろなブランドのシャツを買い求めてきたが、結果的に手元にあるシャツの7割以上はターンブル&アッサーのものになってしまった。肌とは、正直なものである。
ターンブルカット
ここのシャツを最初に買ったのは、25年以上も前のことだが、以降はロンドンのジャーミンストリートの本店などで買い足している。英国紳士にとって「シャツは第二の皮膚」と捉える流儀が今も残っているようで、その意味でも、彼らにとってシャツの着心地は重要なのだろう。高温多湿の季節を持つ日本において、多くのビジネスマンはシャツの下に下着を着用すると思うが、素肌に直接シャツを着用する心地良さがあることにも目覚めてほしいと思うのである。少なくとも、ターンブル&アッサーのシャツには、素肌にフィットするさまざまな工夫が施されているので。

同社のシャツは、千種類以上の生地を取り揃えているそうだが、特筆すべきは「ターンブルカット」と呼ばれる、襟の独特の形状である。よく見ると襟元から剣先にかけて、ごく微妙なS字のラインにカットされているのが分かると思う。たかが襟のディテールと侮るなかれ。私がその真価を知ったのは、日本に導入されたカジュアルフライデーであった。

カジュアルフライデーそのものは利点も多いが、シャツのスタイルにとってこれほど不幸な出来事はないと思う。当時、いや今でも多くのビジネスマンたちは、普段のシャツをそのままノータイで着用していると思うが、そもそもタイドアップを前提としているシャツの多くは、ノータイの場合にジャケットの収まりがしっくりこないのだ。これも着用してみてはじめて実感するが、ターンブル&アッサーのシャツは、このS字カーブにより、たとえネクタイをしない場合でも、ジャケットのラペルからシャツの襟が飛び出すことを防ぐのであった。

ジェームズ・ボンドも40年以上にわたり愛用

ターンブル&アッサーの創業は、1885年。レジナルド・ターンブルとアーネスト・アッサーの二人のシャツ職人によって、ロンドンのチャーチプレイスに開業した。その後、1903年に上流階級をターゲットに、現在の本店があるジャーミンストリートに移転。第二次世界大戦以降は「世界で最も有名なシャツメーカー」として、チャールズ・チャップリンやショーン・コネリー、アル・パチーノ、ピアース・ブロスナンなどのハリウッドスターにも愛用されている。

映画『華麗なるギャツビー』(1973年)で主演のロバート・レッドフォードが着用したのは、原作者のフィッツジェラルド自身が顧客であったこともあるのだろう。映画といえば『007』シリーズでは、第1作『007/ドクター・ノオ』から2006年の『カジノロワイヤル』まで、40年以上にわたり、ジェームズ・ボンドのシャツとして、ターンブル&アッサーが愛用されている。
カラフルなストライプシャツ
さて、英国の紳士のシャツといえば、カラフルなストライプ柄でおなじみだが、それは古くからの伝統なのかと思い込んでいたが、意外にも近代になってからの流行の名残りなのだという。長谷川喜美著『英国王室御用達』(平凡社新書)によると、1920—1930年代にかけて、モノトーン基調であった紳士用シャツにかわり、もともとミュージカル衣装用に製作したカラフルなストライプシャツを販売し始めたのが発端となり、ターンブル&アッサーは、新たな流行を作ることに成功し、シャツメーカーとして広く認知されるきっかけになった、とある。それを「世界で最も有名なシャツメーカー」にしたのが、ハリウッド映画の黄金期というわけである。

チャールズ皇太子によってロイヤルワラントに認定

ターンブル&アッサーを語るとき、英国のロイヤルワラント、いわゆる英国王室御用達という制度についても触れなければならないだろう。私は、2007年にロンドンのロイヤルワラント協会を取材しているが、ロイヤルワラントとは、12世紀半ばまで遡る、世界最大規模を誇る英国王室独自の認定制度である。

現在、王室が愛用する企業やブランド約800社が認定を受けているが、当時の協会長だったリチャード・ペッグ氏によると、ターンブル&アッサーは、チャールズ皇太子によって、1980年よりロイヤルワラントを認定されて以来、英国王室にとって最も重要なブランドの一つだということだった。

先の『英国王室御用達』によると、ウィリアム王子とケイト・ミドルトン嬢の婚約写真で、ウィリアム王子はシャツだけでなくスーツやネクタイもターンブル&アッサーを着用していたとのこと。将来の英国国王候補が着用することは、大きな意味を持つと思うが、同時に英国におけるブランディングの巧みさ、ある種の逞しさを思うのは私だけでないはずだ。翻って、日本では宮内庁御用達制度は、1954年に廃止されてしまったが、日本のブランドを盛り上げる、という意味でも、復活を願うのである。
     
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