JOURNEY

チョークを削って癒される?
ウェルビーイングの最前線をリポート

2018.11.28 WED
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チョークを削って癒される?
ウェルビーイングの最前線をリポート

2018.11.28 WED
チョークを削って癒される? ウェルビーイングの最前線をリポート
チョークを削って癒される? ウェルビーイングの最前線をリポート

心身ともに良好かつ健康的であることを推奨するウェルビーイング。ミレニアルズを中心に市民権を得ているこのコンセプトは、当初の食事や運動に特化した限定的な定義から、人気拡大とともに解釈も広がり、それに合わせて関連サービスやプロダクトも多種多様に開発されている。破壊行為によるストレス発散から、チョークを削って心を癒すプログラムまで、ウェルビーイングの「今」をみる。

(読了時間:約4分)

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怒りを発散するフィットネス

NBC Newsが行った最近の調査によると、アメリカ人の約半数に当たる49%が、1年前と比べて怒りの感情をもつ機会が増えたと答えている。政治的、経済的など背景はさまざまだが、この「やり場のない怒りを発散したい」という消費者の欲求拡大に応えるユニークなサービスが今話題だ。ヘビーメタルをBGMに流し、日常では使えないスラングなどの汚い言葉を叫び続けることを推奨するヨガクラスや、“Anger Room”と呼ばれる専用空間を設け、他人の目を気にせず思うがままに、胸に抱えた怒りを発散できるスペースが世界中で増殖しているのだ。

その一例が、2018年7月、ロンドンで開催された「Wreck Room(=破壊の部屋)」。スポット的に展開されるこのイベントは、参加者が金属バットやハンマーなど好みの“武器”を選び、特製の部屋でパソコン、食器、電球、ガラス製品をひたすら破壊しまくるというもの。サウンドトラックとなる音楽も自分で選べる。またイギリスの旅行代理店トーマス・クックがギリシャ・クレタ島にオープンした、ミレニアル世代向けに特化したホテル「クックス・クラブ」もこのAnger Roomを設けており、ほかにはないユニークな体験ができると旅行者の人気を集めている。

「身体的に怒りを解消することは癒しであり、多くの満足感も得ることができます」と語るのは、アメリカのエンターテインメント企業、WME-IMGのクリエイティブ・ディレクターを務めるチェルシー・ジェイド・キャンベルだ。「怒りの部屋がこれだけ人気を集めるのは、普段であればやってはいけない行為を体験できる点です。さらにSNS上のコミュニティで自分が一番乗りになるのであれば、参加へのモチベーションはさらに上がるのです」

体内時計を整える

約24時間周期の体内リズムである「サーカディアン・リズム(概日リズム)」を生み出す遺伝子とそのメカニズムを発見した3人のアメリカ人科学者がノーベル医学・生理学賞を受賞して以来、もっとも自然な体の生理現象に関する消費者の興味関心が再燃し、自分の「体内時計」を整えて心身の健康を維持したり、仕事・勉強の生産性を最大化しようとする人が増えている。

『When 完璧なタイミングを科学する』(ダニエル・ピンク著)といった関連書籍が続々と出版されたこともこのトレンドを後押ししているが、サプリメント業界はいち早く「自然の周期」というコンセプトで新しい市場を開拓している。2018年4月、アメリカの化粧品ブランド「Bobbi Brown」は特定の時間に飲むダイエットサプリや粉末ドリンクなどの新商品を発表。例えば、昼食後の午後に眠気に襲われる経験をもつ人は多いと思うが、粉末プロテインの「アフタヌーン・チョコレート」は、眠たくなる時間帯に脳の機能活性化をサポート、結果的に仕事の生産性を引き上げてくれる効果があるという。
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チョークを削って癒される?!

「Autonomous Sensory Meridian Response (ASMR=自律感覚絶頂反応) 」とは、「ささやき声」や「指先を叩く」といった聴覚や触覚への刺激によって醸成される、心地の良い感覚を指す。比較的新しい分野だが、英国シェフィールド大学の研究者が、ASMRが心拍数の低下や心身の健康を増進する癒し効果を引き起こすことを実証したことから注目されるようになった。

これに基づきニューヨークにオープンしたスパ「Whisperlodge」では、ささやく、髪をとかす、紙をくしゃくしゃにするといったアクティビティを通じて、心身を穏やかにするプログラムを提供している。また同様の取り組みとしては、2018年5月にニューヨークでスポット的に開催された「The Oddly Satisfying Spa」もあげられるだろう。子どものころ親しんだ緑色のスライムをつくったり、サンドウィッチの形をした磁石の玩具をナイフで切ったり、チョークを削ったりといった地味ながら、人気の高いASMRコンテンツを再現したメニューが用意され、多くの参加者を集めた。

またオンラインでもASMRエンターテイメントを求める傾向は顕著で、YouTubeチャンネル「Gentle Whispering ASMR」は140万人の登録者数を誇るほど。動画の視聴回数が2億回を超える超人気コンテンツも存在するのだ。新進気鋭のサービス、プログラムが次々と生まれているが、この細分化と多様化の傾向は今後もグローバルに継続していくとみられている。
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