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ミレニアルズが熱狂する「パルクール」の“いま”

2018.11.19 MON
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ミレニアルズが熱狂する「パルクール」の“いま”

2018.11.19 MON
ミレニアルズが熱狂する「パルクール」の“いま”
ミレニアルズが熱狂する「パルクール」の“いま”

フランス発のエクストリームスポーツ「パルクール」が、にわかに熱を帯びている。今年6月には国内最大規模の専用スペースがオープンするなど、いま10代〜20代を中心に注目を集めるスポーツの最前線をお届けする。

(読了時間:約5分)

Text & Edit by Keisuke Tajiri
Photographs by Kenji Yamanaka

パルクールカルチャーの節目になるパークの誕生

身体ひとつで障害物を飛び越え、建物から建物へと乗り移り、巧みな動きで街なかを縦横無尽に駆けまわるエクストリームスポーツ「パルクール」。これまで映画『007カジノ・ロワイヤル』や、有名アーティストのMVなどでも取り入れられ、そのアクロバティックな動きで若い世代を中心に魅了してきた。

パルクールのオリジナルは第二次世界大戦時、元フランス海軍将校の教官がフランス軍のトレーニングメニューとして開発したもの。1980年代に入って、パリの地元少年らが結成したグループ「YAMAKASI」がパルクールの原型を作り上げ、2001年にリュック・ベッソン監督による映画『YAMAKASI』が公開されると、その知名度が爆発的に広がっていった。

その後もたびたびメディアで取り上げられ、エクストリームスポーツのひとつとして確立。競技者はトレーサーという呼び名で親しまれている。日本で火がついたのは、動画SNSアプリ「Tik Tok」やインスタグラムだった。そして、そのムーブメントをさらに加速させようと、この6月末に日本のパルクール集団「monsterpk」がパルクール専用施設「MISSION PARKOUR PARK」を東京にオープンした。

倉庫を改装したパーク内は、天井に向かって反り上がる壁、3mの高台から飛び込める巨大スポンジピットなど多数の障害物を備えた、日本最大規模のパルクールトレーニングスペースとなっている。フリースペースのほかメンバーによるレッスンもあり、10代〜20代を中心に人気を集めているという。
屋外にある障害物をイメージしてつくられた、パルクール施設「MISSION PARKOUR PARK」
屋外にある障害物をイメージしてつくられた、パルクール施設「MISSION PARKOUR PARK」
しかし、人間離れしたパフォーマンスがクールだと賞賛されるばかりではなく、トレーサーによっては不法に建物へ立ち入ることもあり、海外ではしばしば批判の的になることも。しかし、「僕らは絶対に悪いことはやらないです」と、monsterpkのリーダーYUUTAROU氏は話す。

「とくに日本は社会が厳しいのも分かっていますし、これからパルクールの文化を盛り上げたいのに、迷惑をかけたり批判を浴びたりするようなことをやっては意味がありません。そんなことにならないように、自由にできる場所があればいい、ということでここを作ったんです。スケボーにスケボーパークがあるように、パルクールも専用の施設があれば誰でも健全に楽しめますよね。それにパルクールはストリートの文脈から来ていることもあって、チャラついた人が多いと思われがちですけど、いまの若い人たちはみんな真面目に取り組んでいますよ」
「危険なものだと思われますが、正しい動きを身に着ければけがしにくいスポーツです」とYUUTAROU氏
「危険なものだと思われますが、正しい動きを身に着ければけがしにくいスポーツです」とYUUTAROU氏

次代を見据えるミレニアルズのトレーサーたち

パルクールカルチャーが浸透し始めたとはいえ、まだ世界レベルには及ばない日本の実力。「デンマークには専門学校があるほどパルクール先進国として知られていますが、日本はそもそもパルクールの情報すら入ってこないんです」とYUUTAROU氏が話すように、トレーサーのあいだで情報を共有するプラットフォームがなく、個人や小さな集団で消化されてきたため、文化として根付くまでに時間がかかっていた。そこで、リアルなスペースをつくり、人と情報を集めることで、コミュニティの拠点として機能させながら、そのカルチャーを醸成していこうというのがYUUTAROU氏の狙いだ。

「新しく始める若い子たちが少しでも最先端の情報に触れられるようにしていきたいです。僕もパークの運用がスムーズにまわるようになったら定期的に海外に行ってコーチングや技を学んできて、ゆくゆくは各地域に新しいパークを作っていきたいですね」
6mはあろうかという天井まで、壁の登るようにして駆け上がるTAISHI氏のパフォーマンスは圧巻の一言
6mはあろうかという天井まで、壁の登るようにして駆け上がるTAISHI氏のパフォーマンスは圧巻の一言
YUUTAROU氏のように、自身の活動だけでなくパルクールカルチャーの成長を見据えたトレーサーが日本にもあらわれはじめている。monsterpkのメンバーの一人、弱冠20歳のKENICHI氏もその高いクオリティのパフォーマンスで人々を魅了する。

彼は独学でパルクールを始めてわずか4年で頭角をあらわし、いまでは大手企業のTVCMの主演に起用されたり、2017年にはレッドブルアスリートとスポンサー契約を結んだりと、プロとして活躍する期待のトレーサーだ。「社会的にもスポーツ的にもまだ発展してないところがありますが、ストリートならではの自由なスタイルの魅力と、スポーツとしても本当に楽しいものだということを、もっと広めて行きたいですね」
体操ではないからと公共施設からマット貸出の許可が降りず、野原で技を身に着けていったKENICHI氏
体操ではないからと公共施設からマット貸出の許可が降りず、野原で技を身に着けていったKENICHI氏
いまのミレニアルズが注目するパルクールは、“遊び”からひとつの“文化”へと発展している最中。彼らが本気で取り組むことで切り拓かれる、パルクールの新たな地平に期待したい。

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