VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

TECHNOLOGY

進む身体と機械の融合

2018.10.29 MON
進む身体と機械の融合

デジタルテクノロジーやロボティクス技術の進歩を遂げている昨今。それにより、義足や補聴器など福祉機器にも大きな進化をもたらしている。本コラムでは、内外のテック企業によるそうした機器の具体的な例をみながら、身体と機械の融合が進む未来について考える。

(読了時間:約4分)

Text by Nobuyuki Hayashi
© exiii Inc.

SHARE

この記事をシェアする

デジタルテクノロジーやロボティクスの技術で進化する義足

TEDのカンファレンスでの、有名なスピーチの1つに「エミー・マランスと12組の義足」というのがある。パラリンピック選手で女優でもあるエミー・マランスは脚がないからこそ、競技の時にはより速く走れる義足を身につけ、パーティー会場にはより背が高くきれいに見栄えする義足を身につけて現れ、「女友達からズルいと言われる」と笑ってみせる。

彼女の義足はほとんど従来型の動かない義足だが、最近ではこうした義肢もデジタルテクノロジーやロボティクスの技術で進化を始めている。

通常の義足は、例えば足首の角度などの調整が難しく段差につまずいたり、階段の上り下りを片足主導で行ったりといった不自由がある。しかし、こうした問題を解決する義足が次々と開発され始めている。

すでに製品化されているものとしては、階段の昇降や靴の着脱などの動作に応じて快適な足首の角度の情報をインターネット経由で収集し進化するという米Orthocare Innovation社の「Magellan」という製品もある。そこまで高機能ではないが、日常生活には必要十分な機能を手頃な価格で提供する東京大学のBionicMというチームがつくっている「SuKnee」という義足もある。

義手の世界はさらに進化をしている。筋肉に力を込めたりするとその電位の変化(筋電)を検知して、まるで本物の手のように指を開いたり、閉じたり操作できる筋電義手が以前からある。筋電だけでは、複雑な手の形などがつくりづらいが、そこをスマートフォンからの指示で補う英touch bionics社製の高級義足なども出ていれば、こちらも高価な筋電義手をもっと安価に広めるためのオープンソース義手なるものも登場し始めている(日本のイクシー株式会社が開発した「Hackberry」などが有名だ)。

最近では3Dプリンターを使って、日曜大工的に、使う人の腕に合わせた義手をつくることも盛んに行われており、腕を失って消沈している子どものためにスーパーヒーローの腕を模した義手をつくった親の話などが話題になったこともある。

落合陽一氏によるデジタルネイチャー研究室による研究は、ARやVR用途でも注目が集める

また、「聞こえ」の悪い人用にスマートフォンと連動する補聴器などもあれば、耳の後ろの骨に埋め込む 骨導インプラントというものも登場している。これらの補聴器やインプラントはスマートフォンを使って、正面からの音だけに集中するモードと周囲の音をまんべんなく聞くモードを切り替えたり、人の声だけ聞こえをよくしたりといった調整が可能だ。

学校などで先生が使う連動型の小型マイクなども用意されており、教員がこれを使ってくれれば騒がしい教室で、他の生徒たちが聞こえていない先生の言葉を難聴の子どもだけが聞き取れるという逆転現象も起こりうる。

目の角膜や水晶体(レンズ)の傷などが原因で目が見えにくくなっている人にも、最近、網膜にレーザーで映像を直接映し出す網膜レーザー投影という技術を使ったメガネの開発が進んでいる。

筑波大学の落合陽一准教授が主宰するデジタルネイチャー研究室でも研究されているが、日本の株式会社QDレーザーが法人用に「RETISSA Display」という製品の提供を開始している。製品を健常者が搭載した場合でも、通常のディスプレイやプロジェクターを内蔵したウェアラブル眼鏡と比べて映像が鮮明なので、ARやVR用途としても注目を集めている。

この分野はこれから競争が激しくなりそうで、イスラエルのICI VISIONという会社も主に障害者向けとして同様の製品を開発している。網膜投影技術を使っても、視界のすべてが使えるようになるわけではないので、例えばどちらの方向から人の声がするかなどを矢印で表示するなど、補助情報の提供にも力を入れるようだ。

2017年末に表参道の「Intersect by LEXUS」でもスピーチイベントを行ったニール・ハービソンは、視力には問題がないが、色が分からないという障害をもっていたために自分で触覚のようなアンテナをつくり、色の違いを音で感じ取る能力を機械的に身につけている。

義手や義足がそうだったように、これからは高性能な福祉機器が開発される一方で、自らの能力を向上させるために身体拡張のための機械を個人が自力で開発することも増えてくるのかも知れない。

こうした機械を通しての身体拡張には、自らの障害を克服するためのものもあるが、生身の身体以上の能力を発揮するためのものも含まれる。

冒頭で紹介したエミー・マランスと義足の話のように、いずれは生身の身体パーツよりも、置き換え用の機械のパーツの方が有利だからと置き換える、まるでSFのような未来もやってくるのだろうか。
記事一覧へ

BACKNUMBER Tech Inspiration

    RANKINGランキング
    Daily
    Weekly
    PICKUP今週の編集部おすすめ記事
      Mail Newsメールニュース
      レクサスの最新情報をお届しています。ここでしか見られないVISIONARY特集号も配信中。
      購読はこちら
      RANKINGランキング
      Daily
      Weekly
      PICKUP今週の編集部おすすめ記事
        Mail Newsメールニュース
        レクサスの最新情報をお届しています。ここでしか見られないVISIONARY特集号も配信中。
        購読はこちら