VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

EXPERIENCE

モロッコの旅 前編──
男たちがまとう長い服、そして帽子  

2018.09.07 FRI
モロッコの旅 前編──男たちがまとう長い服、そして帽子  

魅力的な被写体との出合いを求め、世界中を飛び回り続けている写真家、在本彌生。彼女が印象深い出合いを自らの作品と文章で綴る連載。第4回は、モロッコの旅で見かけた、北アフリカ独特の民族衣装「ジェラバ」について。

(読了時間:約4分)

Phtographs & Text by Yayoi Arimoto

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北アフリカの服、ジェラバ

極個人的な意見だが、男性が長い衣服をまとっている姿は、堂々と立派に見えると常々思っている。和装の着物、洋服のロングコート、イスラム圏の国々で見かける丈の長いノーカラーシャツ(シャツワンピースのよう)も、視覚的に長さを強調するので、背を高く姿を堂々と見せる効果がある。

もちろん、寒さや熱やほこりから体を守るため、宗教的な理由で肌を極力見せない、頭を覆うものが必要、などなど、規制の中で機能性を追求した結果出来上がったデザインなのだが、それが格好良いのだからこんなに素晴らしいことはない。こういった服装の構造や成り立ちを改めてみると、デザインとは生活の中から生まれるものなのだと再確認してしまう。
こちらの紳士、大きな黒とグレーのストライプのジェラバに黒いニットの帽子がしゃれている
こちらの紳士、大きな黒とグレーのストライプのジェラバに黒いニットの帽子がしゃれている
このたび訪れたモロッコの街々でも、たくさん男性のすてきな着こなしを見た。ここでは特別なドレスアップはしていない、普段着の範疇でのルックを紹介したい。

北アフリカの国々では、この地域独特のジェラバというフードのついた長い衣装を人々は身にまとっている。この服の形はユニセックスなので女性が着ているのもしばしば見るが、圧倒的に男性が身につけている場合が多く、女性に向けて作られたのものよりも、男性用のものの方が素材感や小物との合わせ方が面白くて、私は好きだ。(女性用のものはフェミニンなイメージのしなやかな化繊素材を見かけることが多く、その点でも男物の方がざっくりとして自然な印象。)
  • 軽い素材、明るめの色のジェラバにヤシの葉で編んだ帽子を合わせて。帽子も透かし編みで凝っている
  • ジェラバのフード無しバージョンに、ヤシの葉帽子。白は暑い土地柄、涼しげに見えて良い感じ
  • 田舎の市場で塩を売っていた男性。ニットの帽子の柄、色と、モロッコ仕立てのカフタンの色がコーディネート
柄も、素材も、丈も全くさまざまで、レディメイドのものもあれば、望み通り、理想のジェラバを生地から選んでオーダーしてハンドメイド(伝統的な特殊な手法の手縫い仕上げ)で作り上げることもできる。仕立て屋の前を通ると、職人が二人掛かりで飾り糸をよったり、飾り縫いで袖や前合わせを仕上げているのを見かける。

こんな風に丁寧に仕立てられたジェラバ、私も一着くらいオーダーしてみたくなる(結局アンティークショップで見かけた年代物のシンプルな乳白色のウールのものを購入)。多くの人が着ている分、さまざまな形のジェラバを街で見かけることになるから、散歩の合間にもすれ違う人々のジェラバチェックが止まらないのだ。
市場で売られているヤシの葉帽子。さまざまな形があるので一つ選ぶのが難しい。店主の山高のものも気になる
市場で売られているヤシの葉帽子。さまざまな形があるので一つ選ぶのが難しい。店主の山高のものも気になる
私が訪れた時期はとても暑い時節だったので、さすがにウール素材を身につけている人は少なかったが、摂氏四十度近い気温の中でこの長袖長丈の衣服を身につけるのは暑いのではないかと思われる。しかし、これも常に着ていたらさほど気にならないのか、むしろ肌を炎天にむき出しに晒すよりは良いのかもしれない。

また、この服の丈は極端に短いことはないが、ひざ下20cmくらいのものを着ている人もいる。絶対にくるぶしくらいまで隠れなければいけないというものでもないようだ。色も、非常に地味な濃茶、黒などもあれば、コントラストの強い縦縞、辛子色など、派手なものも多い。シンプルな一色、細工の少ないものは簡素な服とされているようだ。
  • 仕立て屋の職人がジェラバの飾り縫いをしているところ。何本もの糸を編みながら布に縫い付けはぎ合わせていく
  • ターバン姿は男女ともによく見かける。靴の修理工の彼は、写真を撮られるならと綺麗に巻き直した

帽子の色々、モロッコの場合

モロッコでは、特に田舎に行くほど頭をあらわにしている人は少ない。習慣や宗教的な意味合いがあると思うが、頭に何かかぶっていた方がジェラバ姿はさまになるように思う。ジェラバはそもそも先の尖った形のフードがついている服なので、頭を覆うならそれをかぶるのがまず一つの方法。かぶり方もフードが深いのでちょっと折り返したりすると可愛い印象になる。普通にかぶるとゲゲゲの鬼太郎のねずみ男風だ。

レース編みや、模様編みの頭にぴったりのサイズでかぶるニットの帽子もとてもよく見かける。ニットの場合、丸く頭に沿った形が一般的で、布で作られたものだと、てっぺんが平らな形もある。ありとあらゆる色、デザインがあるので、ジェラバとのコーディネートを皆さん楽しんでいる。熟練のスタイリングゆえ、誰1人としておかしな合わせ方をしている人を見なかった。
  • 村の長老の休日スタイル。ジェラバではなく白い襟なしの丈長シャツでゆったりと
  • 楽師は濃い緑色の細ストライプのジェラバに、青と緑と白のニット帽を合わせて
  • 山の中の農場を訪ねた時に見かけたヤシの葉帽子。ウチワサボテンにも似合ってしまう
そして、もう一つ、南モロッコではよく見かけるヤシの葉で編んだ帽子も、ジェラバと合わせると面白いバランスになる。ヤシの葉帽子は、これまたあらゆる形があって、山の高いものなどは、ちょっとおどけて楽しい雰囲気だし、つばの広いものはエレガンスを演出できる。

そうは言ってもこの帽子、そもそも農作業や放牧の時に、強烈な日差しをしっかり避けるための実用的な用途が求められたもののはず。それでいて形がいいのだから優秀だ。村の市に出かけると、あらゆる形のヤシの葉帽子が売られているし、それを身につけているカントリージェントルマンたちの着こなしを堪能できる。

長い服の装いと帽子は、洒落者のモロッコ男たちをよりチャーミングに引き立たせるスタイルだ。
  • 田舎の市場で羊を買った男性。ニット帽にジェラバのフードを重ねて。フードを折り返すと視界が広がる
  • ゲンズブール似の紳士は透け感のある素材で仕立てられたジェラバをさらりと。帽子もレース編みで涼感アップ
記事トップの写真は、エッサウィラの港で男たちが集っておしゃべりしている様子をとらえたもの。ジェラバの着こなしが四人四様なのがいい。足首が隠れないくらいの長さがスタンダード。色も柄もさまざまで、帽子との合わせ方もそれぞれ。

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