JOURNEY

台湾の今を巡る旅 Vol.2──
屋台グルメはもう古い?
独自の進化を遂げた台湾グルメ最前線

2018.08.27 MON
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台湾の今を巡る旅 Vol.2──
屋台グルメはもう古い?
独自の進化を遂げた台湾グルメ最前線

2018.08.27 MON
台湾の今を巡る旅 Vol.2──屋台グルメはもう古い?独自の進化を遂げた台湾グルメ最前線
台湾の今を巡る旅 Vol.2──屋台グルメはもう古い?独自の進化を遂げた台湾グルメ最前線

B級グルメがメインストリームだった台湾グルメに変化が表れはじめている。世界に通用するフレンチレストランや現地の食通たちに人気を集めるプライベートキッチンなど、いまの台湾の食文化に起きているシーンに迫る。

(読了時間:約6分)

Text by Keisuke Tajiri
Photographs by Jr Tan Lin
Coordination by DESIGNSURFING

台湾のガストロノミー界に革命を起こした「RAW」

台湾のガストロノミー界に革命を起こした「RAW」1
夜市にずらりと並ぶ屋台食や、小籠包、かき氷と、台湾を訪れたことがある人なら誰しも味わったことのある台湾グルメ。庶民的な料理はソウルフードとして観光客からは根強い人気を誇るが、その裏では世界に名をとどろかすレストランが数多くオープンしているのをご存じだろうか。そのなかでも2018年の「アジアベストレストラン50」で国内トップの24位を獲得した「RAW」は、台湾で最も予約の取れないレストランとして人気を博している。

オーナーのアンドレ・チャン氏はピエール・ガニェール氏やジョエル・ロブション氏のもとで修行を積み、シンガポールにオープンした「レストラン アンドレ」では二つ星を獲得。その後、2011年に帰国し台北で「RAW」をスタートすると瞬く間に予約困難のレストランとして国内外で話題に。過去には「DINING OUT with LEXUS」の有田の地で腕を振るった経験もあり、いま世界が注目を集めるシェフの一人だ。
台湾のガストロノミー界に革命を起こした「RAW」2
店内に入るとまず目を引くのが、雲のようなかたちをした巨大なバーカウンター。台南から運んできた大木をレーザーで加工し、9カ月かけて作られたという。広々としたフロアは50席ほどで、客席からはセミオープンのキッチンをのぞくことができる。RAWが掲げるコンセプトは「ネイチャー&クラフト」。四季をさらに細分化した「二十四節気」の概念を取り入れ、台湾で採れる旬の素材をメインにしたコースを、年間で24種類提供する。
「RAW」ならではのオリジナリティあふれるオニオンスープ
「RAW」ならではのオリジナリティあふれるオニオンスープ
一品目に提供されたのはローストされたタマネギ、かと思いきや皮を手に取ると現れたのが揚げたパン。実はオニオンスープだという。オニオンスープといえば、バターで炒めたタマネギにブイヨンのスープを加え、フランスパンを浸していただくというものが定番。これはその逆で、パンの中にグラタン状になったオニオンスープが入っていて、揚げパンの生地と濃厚なソースが絶妙に絡み合う味わいに。
チョウザメのしゃぶしゃぶ
チョウザメのしゃぶしゃぶ
続く料理はチョウザメのしゃぶしゃぶ。サクッとした食感のポン菓子にムール貝のソースと旬の野菜を載せ、新鮮なチョウザメの刺し身をあしらった見た目にも美しい一品。もともとチョウザメはキャビアをとるために台中で養殖しているものだが、「食材がもったいない」と香り高いネギのオイルとチョウザメの骨で煮込んだスープをかけていただくことで、さっぱりと洗練された味へと変化する。
台湾のガストロノミー界に革命を起こした「RAW」5
こうした料理のアイデアの源泉はどこからくるのか。「RAWはレストランではなくプラットフォーム」とチャン氏が掲げるように、「フロリレージュ」の川手寛康シェフが参加するなど、定期的に国内外からトップシェフを招いてコラボレーションすることで、台湾料理の新たな可能性を探っているのだという。

「フレンチの技術を使っているので、初めて台湾に来る人は台湾料理だとは思わないでしょう。ですが台湾料理がベースなので現地の人から見るとどこかそのエッセンスを感じられるようになっています」と担当者が話すように、国内外の誰にとってもRAWのプレゼンテーションが新しい体験となり、ガストロノミー界に新風を巻き起こす存在として今後も目が離せない。

コースは1,850TWDと2,680TWDと3,500TWDの3種類で、アルコールはペアリング(1100TWD)も選択可。予約は60日前の12時からRAWのオフィシャルサイトで受け付けを始めるが、数秒で埋まると言われ激戦が予想される。席が取れたら台湾旅行の計画を立ててみる、というかたちで挑戦してみてはいかがだろうか。

「RAW」
住所:台北市中山區楽群三路301號
営業時間:11:30~14:30、18:00~22:00 月火休
オフィシャルサイト
https://www.raw.com.tw/

台湾の食通たちが集う、いま話題の「プライベートキッチン」

台湾の食通たちが集う、いま話題の「プライベートキッチン」1
いま台湾の食通たちのあいだで人気を集める「プライベートキッチン」というスタイルのレストラン。これはビルやアパートの一室をレストランとして開放し、1日1組から数組限定のプライベート感覚でシェフの料理を楽しめるというもので、特に日本ではガイドブックにもあまり載ることのない知る人ぞ知るレストラン。ブームの先駆けとなったのが、ここ「屋頂上的貓」だ。台北市のとある住宅街にひっそりとたたずむ、「RP」と書かれた暖簾がまた隠れ家のような雰囲気を演出している。
台湾の食通たちが集う、いま話題の「プライベートキッチン」2
経営するのはロイ氏とパンパン氏。もともとシェアメイトだった彼らが住んでいたアパートの屋上に友人を招いてホームパーティを始めたことがきっかけで、その料理の腕前が話題をよび次々と人が押し寄せるように。そこから現在の場所へと自宅を移し、その一角をプライベートキッチンとして開放してお店をスタートさせた。店内は巨大な桜のオブジェに仏像、キャンドル、イタリア製のアンティークの器と、シンプルな店構えに対して、彩りあふれる異空間が広がる。
オードブルはキャラメリーゼしたフォアグラのムースと、マッシュルームを加えたマッシュポテトのタルト
オードブルはキャラメリーゼしたフォアグラのムースと、マッシュルームを加えたマッシュポテトのタルト
まずはオードブルから。キャラメリーゼしたフォアグラのムースと、マッシュルームを加えたマッシュポテトのタルト。プチプチとしたえんどう豆の食感とアーモンドの香りが香ばしい一品。二皿目はズッキーニ、レンコン、しそ、青りんごにコチュジャンベースの甘辛く仕立てたソースを絡めたサラダと続く。

屋頂上的貓の料理は台湾の食文化をベースにフランス、イタリア、中国、日本など多国籍の文脈を取り入れたフュージョン料理。メニューはコース一本で、季節に応じてさまざまな料理が提供される。そのなかでも看板メニューとして通年提供されているのが、「麻油鶏麺」と呼ばれる一皿。ビーツで色付けした鮮やかな赤色の麺の上に、香ばしく焼き上げた鶏肉とハヤトウリを載せ、鶏の骨と老生姜で出汁をとったスープとともにいただく。これは台湾で親しまれている家庭料理を現代風にアレンジした一品で、この料理が生まれた背景には、日本の食文化からインスピレーションを受けているという。
看板メニューとして通年提供されている「麻油鶏麺」
看板メニューとして通年提供されている「麻油鶏麺」
「日本は旬な食材を取り入れ、伝統を守りながらも新しいスタイルの料理を常に提案し続けています。台湾にもアイデア料理はありますが、見た目だけのインパクトばかりで味の本質を追求したものはあまり多くありません。日本の食に対する探究心を台湾料理にも活かせないかと生まれたのがこの料理なんです」とシェフのロイ氏。
台湾の食通たちが集う、いま話題の「プライベートキッチン」5
こうした料理がおよそ8品続き、全体のボリュームはなかなかのもの。「来ていただいた人にはお腹いっぱいになって満足してもらわないと」という、台湾流のおもてなしのかたちだ。各国の表現を取り入れた数々の料理は、台湾グルメのニューウェーブとして現地の食通たちに刺さり、いまや予約困難のレストランとして連日賑わっている。

料金はランチ1,800TWD、ディナー2,000TWDで、それぞれ8人~10人の2組限定。予約は毎年5月末に電話で1年分の受け付けを始めるというが、すぐ埋まってしまうということと、スタッフが話せるのは中国語のみなので注意が必要だ。予約時期、人数、中国語必須という、日本からの予約はハードルが高めではあるものの、訪れるチャンスがあれば一度は行ってみたいレストランだ。

「屋頂上的貓」
住所:台北市信義區逸仙路32巷9號
営業時間:12:00~、19:00~ 不定休
Facebookページ
https://www.facebook.com/RPLesChats/

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