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LEXUS DESIGN AWARD 2018──
「CO-」な未来への4つのアプローチ

2018.08.20 MON
LEXUS DESIGN AWARD 2018──「CO-」な未来への4つのアプローチ

次世代を担うクリエイターを発掘することを目的に開催されている「LEXUS DESIGN AWARD」。第6回目となる今年も、ミラノデザインウィークにて授賞式が開催された。現地に赴いた筆者が、受賞作品の意義を読み解く。

(読了時間:約5分)

Text by Nobuyuki Hayashi

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2018年のキーワードは「CO-(共)」

次世代を担うクリエイターを発掘するデザインコンペとしてすでに定番となった「LEXUS DESIGN AWARD」。第6回目となる今年もレクサスというブランドに込められた思想を表すいくつかのキーワードからテーマとなるキーワードが選ばれた。

今年のキーワードは「CO-(共)」。CO-llaboration、CO-ordination、CO-nnectionといった言葉で使われる接頭辞で、自然や社会との共生・調和を目指すキーワードである。世界情勢では「分断」のニュースばかりが目につく時代だからこそ選ばれたキーワードかも知れない。

その第6回、LEXUS DESIGN AWARDで見事グランプリに輝いたのは、なんとも意外な作品だった。何せタイトルからして「Testing Hypotheticals」だ。これまでの同アワードでは、デザインアワードということもあり、応募者自らが製作したものが展示されるのが普通だったが、展示されているオブジェはどうやらそうではなさそうで、展示のメインはビデオ映像だという。
「Testing Hypotheticals」
「Testing Hypotheticals」
最近、シェアエコノミーに代表される新しい経済概念や、新しい社会習慣、そして基盤となるテクノロジーのシフトなどが同時に起きており、うまくこれらの歯車が噛み合えば、もっと世の中が一気に本質的に良くなりそうな気配がある。

しかし、現実にはそうはいかない。実社会では多くの人々が、これまでの延長線上で暮らしている。まず経済を変えるのか、それともテクノロジーから変えて来るのか、ついてこられない人たちをどうすればいいのかなど考え始めると、そもそも現状から脱皮するだけでも難題が多く、歯車が噛み合った状態を想像するに至らない。

ロンドンRCA(Royal College of Art)出身で、ニューヨークベースの二人組がデザイン視点で調査を行うThe Extrapolation Factoryは、レム・コールハースやマイク・レイノルズといった建築家にヒントを得て(*1)、地元ニューヨーク州クイーンズの美術館を使って全2週間のワークショップを開催した。

美術館内に新しい暮らしと働き方の試験空間を用意し、そこに近隣の多様な地域住民を集めて、今日のそれとは異なる暮らし方、働き方の代替案を考えるワークショップだ。

最初は地域の課題を洗い出し、その後、出てきた解決案を試験空間内にプロトタイプの形で用意し、参加者にロールプレイをしてもらう形で、物理的構造、システム、メカニズム、社会的状況、経済などの側面から検証するというものだった。

今日、我々の社会では新しいテクノロジーや経済システム、社会のしくみに関するアイデアが矢継ぎ早に登場し話題になる。しかし、そのほとんどは個別に発案された提案に過ぎず、それを実際に社会に受け入れるか否かを判断し、広めるのは他でもない実社会に根ざした生活者の集合体だ。

世の中を変えるさまざまな大胆な試みをグラスルーツ(草の根)の視点から検証する「Testing Hypotheticals(仮説の検証)」は、これまでのように新しいソリューションを一方的に押し付けるのではなく、より高い確度で社会実装する有効な手段になるかも知れない。

LEXUS DESIGN AWARDは、これまでにも一般に広まれば社会に大きなインパクトを与えそうなアイデアを表彰してきた。「Testing Hypothetical」も作品としての実態こそないものの、アイデアとして世の中に広まっていけば、世の中の改善の速度を加速するアイデアになるかも知れない。

1319作品の中から勝ち残った受賞作は、新しい未来の芽が生まれてきそうな期待を抱かせる

4月に開催したミラノデザインウィーク (通称:ミラノサローネ)のレクサスのブースでは、この「Testing Hypotheticals」をはじめとするLexus Design Awardの入選作が展示されていた。ここで簡単に他の作品も紹介しよう。
「Honest Egg」
「Honest Egg」
展示期間中のオンライン投票で1位の「ピープルズチョイス」アワードを受賞したのは、マレーシアのデザイナーユニット「aesthetid」による「Honest Egg」。卵が食べても安全かどうか。消費期限を過ぎているか否かを、あらかじめ測定した消費期限になると色が変化する特殊な顔料インクで可視化するアイデアだ。卵にひびが入ったのを検知したり、CO2の濃度や気温が急激に変化した場合は、自動的に消費期限が短くなる。
「CO-RKs」
「CO-RKs」
ポルトガルのデザインユニット「DIGITALAB」の「CO-RKs」は、丈夫で肌触りがよく、洗濯も可能。環境負荷が小さいサステイナブルな素材であるコルク糸をインテリアに活用するアイデア。ランプ、イス、テーブル、展示空間などの用途に応じて、コンピューターアルゴリズムで形状を自動生成する仕組みも用意した。
「Recycled Fiber Planter」
「Recycled Fiber Planter」
一方、日本人デザイナー、横井絵里子の入選作「Recycled Fiber Planter」は、古着や廃棄された繊維素材を再利用した反毛(古着を割いてワタ状に戻した素材)を利用した作品だ。「繊維製品を再利用するのに、繊維製品に作り変えるだけでは、この素材を活用仕切れていない」という横井は、これを植物を育てる土の代用品にしてしまった。テキスタイルと植物の「CO-」(融合)をすることで、見る人に資源持続利用に目を向けてもらったり、人と植物の関係性を考え直すきっかけにしてもらえれば、と横井は語る。

LEXUS DESIGN AWARDは、受賞作も含めて、現段階では皆、ただのプロトタイプにすぎないかも知れない。だが、世界68カ国から集まった1319作品の中から勝ち残った受賞作は、ここから何か新しい未来の芽が生まれてきそうな期待を抱かせる。


*1)レム・コールハースは19世紀末、ニューヨークのコニーアイランドにあった先鋭的なテクノロジーを採用した遊園地が人々を魅了し、その後のマンハッタンの摩天楼を含む先鋭的な社会づくりへと誘ったと、著書『錯乱のニューヨーク』の中で記している。マイク・レイノルズは、2007年ニューメキシコでSustainable Development Testing Sites Act(環境を壊さず持続可能な開発の試験場法)を手掛けた。“公道システム外で安全に自動車をテストするのに特別な走路が使われるように、この法案は、現実の人々と一緒に、日々の生活環境における住居や暮らしのメソッドをテストするものだった。
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