VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

CRAFTSMANSHIP

1,300kmのロングドライブで見つけた、
日本のものづくりの原点 岡山編

2018.08.10 FRI
1,300kmのロングドライブで見つけた、日本のものづくりの原点  岡山編

地方で脈々と受け継がれる日本のものづくりの原点を訪ねる旅。レクサス「LS」による東京から大分までのロングドライブのなか、岡山の地で出会った、世界最高水準のクオリティをもつ「帆布」の生産技術とは。

(読了時間:約6分)

Text by Keisuke Tajiri
Photographs by Iasmu Ito

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130年前からつづく帆布メーカーの生地を世界が評価する

2017年に11年ぶりにフルモデルチェンジを果たしたレクサス「LS500h EXECUTIVE」に乗り込み目指すは大分県・別府市。その目的は5月26日、27日に開催された「DINING OUT KUNISAKI with LEXUS」へと向かう道中で、日本のものづくりを支える職人に会いに行くというもの。日本のものづくりの原点を訪ねる、総走行距離1,300kmにもおよぶ超ロングドライブだ。

出発はまだ日も明けぬ午前4時。LS500hの後部座席に乗り込んでまず感じたのはその快適な居住性。体を暖めてマッサージを行う「温感リラクゼーション」機能や、電動オットマン、深く倒れ込むシート、映画や音楽を楽しめる「リヤシートエンターテインメントシステム」と、まさにファーストクラスのような極上の体験を味わえる。驚くべきは長時間の移動にも関わらず、身体に一切のストレスがないということ。
LS500hにもレクサスのTAKUMI(匠)による数々の伝統技術が詰め込まれている
LS500hにもレクサスのTAKUMI(匠)による数々の伝統技術が詰め込まれている
東京を出発して8時間、名古屋、大阪、京都と快適なドライブを経て着いたのは岡山県・倉敷市。倉敷は国産初のデニムをつくった町としておなじみだが、国内シェアの7割を占める「倉敷帆布」も広く知られている。今回訪れたのは、瀬戸中央自動車道の水島ICを降りたすぐ先にある、130年前から続く帆布メーカー「タケヤリ」。

帆布といえばファッションアイテムの素材として認知されているが、それはここ数十年の流れで、古くは第一次世界大戦のころに戦闘機の機体など軍事目的として使われ、今でも産業資材など幅広く活用されている。こうした多様な用途に対応できるのも、帆布が綿生地のなかでも最も丈夫な素材であり、経年変化を楽しめる味わい深さがあったから。

帆布を使ったプロダクトをつくるメーカーが数あるなか、タケヤリが世界から注目されるのは生地の製造から行っている点にある。帆布には1号から11号までの種類があり、号数が小さくなるにつれて厚みや密度が増し、堅牢な生地へと仕上がっていく。そのなかでも極厚帆布と呼ばれる1号〜3号は世界でも日本でしか生産できない生地だという。
日本の技術が生み出した上質な帆布生地
日本の技術が生み出した上質な帆布生地
その生地の生産を可能にしているのが、ベルギー製のシャットル織機と呼ばれるもので、日本でもほとんど現存しない貴重な織機だという。最新型の織機は10時間でおよそ500m生産できるのに対して、シャットル織機で織れるのはわずか50mほど。効率が重要視される製造業においてかなりのロスとなるが、「シャットル織機にしか出せないクオリティがあるんです」と、タケヤリでマネージャーを務める賀川翔太氏は話す。単価も一般的な帆布と比べて4倍以上とかなり高価格のため、国内のアパレルメーカーで使われることはあまりないが、海外の顧客からは珍しいものとして有名ブランドを中心に多くの注文が入るという。

一切の妥協を許さない徹底したものづくり

あまりにも轟音のため会話はまったくできず、職人はジェスチャーでコミュニケーションをはかる
あまりにも轟音のため会話はまったくできず、職人はジェスチャーでコミュニケーションをはかる
実際に工場内の製造現場を案内してもらうと、数トンはあろうかというむき出しの鉄塊がずらりと並ぶ。杼(ひ)とよばれる部品がハンマーで押し出されることで経糸(たていと)のあいだを通り、その往復運動で帆布が織られていくのだが、建物中に響くそのけたたましい音に圧倒される。その様はまさにクルマのエンジンのようで、ダイナミックかつ一定の周期で規則正しく動いていく。と、ここで気になったのが織機に付着している大量のほこりだ。ちゃんとした整備が必要では、と感じるものの、実はこのほこりが重要な役割を果たしているという。

「掃除していないというわけでないんですよ。油を吸い込んだほこりがあることで、ちょうどいい湿度に保たれていい生地が織れるようになるんです。毎年、年末にきれいに掃除するんですが、調子が悪くなって一週間は使えない生地しかつくれないんです」
まるでエンジンのようにすさまじい音と動きで生地を織り上げていく
まるでエンジンのようにすさまじい音と動きで生地を織り上げていく
こうして出来上がった帆布は検反へと回されるが、抜き出しでなく全数検査を行うという。一反のこらず全ての生地に目を通し、問題が見つかれば直せるものは手を加えて100%のクオリティで仕上げていく。そしてその検査にも職人ワザが光る。透かし検反と呼ばれる工程では、目にも止まらぬ速さで送られていく生地のなかから、わずか1mm以下のほころびや節を瞬時に見つけ、一つひとつ手作業で修正していくのだ。こうして厳格な審査基準を満たしたものだけが商品となって出荷されていく。
広い生地のなかから一瞬でわずかなほころびを探し出していく
広い生地のなかから一瞬でわずかなほころびを探し出していく

地方から世界へ、タケヤリが生み出したプロダクト製品

持ち手には栃木レザーを使い、帆布と革の経年変化を楽しめるタケヤリ定番のモデル
持ち手には栃木レザーを使い、帆布と革の経年変化を楽しめるタケヤリ定番のモデル
これまで生地の生産をメインにしていたタケヤリだったが、自分たちの力で製品の素晴らしさを発信していきたいと、2013年からオリジナルのプロダクト開発をはじめた。上の写真は、タケヤリを代表するトートバッグ。一見するとシンプルなつくりにも見えるが、手にとって観察するとのその違いが瞬時に分かる。帆布がもつ独特のふわっとした風合いがありながらも、極厚の2号生地がそのシルエットをキープし、置いても型くずれしたり、倒れ込んだりすることなくしっかりと自立するのだ。

そしてこの8月に新たに開発したのがチャコールグレーの緯糸(よこいと)で織り上げたシャンブレー生地を使ったバッグだ(下の写真。開発途中のもの)。よく見る生成りの帆布とくらべて生地に立体感が増し、アウトドアな印象から都会的な洗練さを感じられるものへと仕上がっている。特筆すべきは極めて潔いデザイン。使っている素材は帆布と持ち手をつなぎ合わせるリベットだけ。裏地やほかの素材は一切使うことなく、一枚の帆布を織り上げてつくられているのだ。ここまで無駄を削ぎ落とした決断ができたのも、タケヤリの素材に対する自信の表れに他ならない。
シャンブレー帆布だけで勝負するタケヤリ渾身の自信作
シャンブレー帆布だけで勝負するタケヤリ渾身の自信作
近づいてみると色の違う緯糸が入っていることがわかる
近づいてみると色の違う緯糸が入っていることがわかる
「生地だけで勝負するのも怖い部分がありました。でもこれができないとタケヤリの名を誇れません。自分たちにもお客様にも一切ごまかすことなく、作りたいものを作ろうと決めて出来上がったものなんです」

この商品は大量生産できないため、タケヤリのオンラインサイトのみで販売開始。いつかは各地に路面店を出店し、生地とプロダクトを並べ帆布の良さを世界中に広めていきたいと願うタケヤリ。4月に開催された「ミラノデザインウィーク2018」ではイギリス人デザイナーのフェイ・トゥーグッド氏と組み、帆布だけでつくられたソファを開発するなど、海外展開を見据えたブランディングにも力を注ぐ。いいものは自分たちの手で伝えていく──その精神で生み出されたタケヤリのプロダクトが世界を席巻する日はそう遠くないのかもしれない。

タケヤリオフィシャルサイト
https://takeyari-tex.com/
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