ART / DESIGN

スペインはリオハを代表するワイナリー
「クネ」社で手に入れたフラッグシップワイン

2018.07.25 WED
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スペインはリオハを代表するワイナリー
「クネ」社で手に入れたフラッグシップワイン

2018.07.25 WED
スペインはリオハを代表するワイナリー「クネ」社で手に入れたフラッグシップワイン
スペインはリオハを代表するワイナリー「クネ」社で手に入れたフラッグシップワイン

旅先でワイナリーを巡るのが、ライフワークの一つだと語る中村孝則氏。本記事では、スペインはリオハのワイナリーに足を運び手に入れた、とっておきのワインについてつづる。

(読了時間:約3分)

Text by Takanori Nakamura
Photographs by Masahiro Okamura

ワインは、それが作られるワイナリーで飲むのが一番旨い

旅先でワイナリーを巡るのは、ライフワークの一つである。ワイナリー取材そのものが仕事という場合もあるが、たいていは別の理由で訪れた機会を利用して、ワイナリーまで足を延ばすことが多い。

今年の6月も、スペインのビルバオで開催された「世界ベストレストラン50」のアワードに参加したついでに、リオハを代表するワイナリー、「クネ(C.V.N.E.)」社を訪れた。リオハと言えば、スペインを象徴するワインの生産地としても知られるが、クネ社はリオハの最大のワイナリーで、100%自社畑で生産する最高級のワインでも有名である。

これは個人的な嗜好なのだが、ワインは、それが作られるワイナリーで飲むのが一番旨いと信じている。グルメ漫画『美味しんぼ』第一話「豆腐と水」編で、主人公の山岡士郎の「ワインと豆腐には旅させちゃいけない」という台詞があったが、おそらくワインは振動や温度変化を伴う移動が大敵だ、というような意味合いだと思うが、だからといって自分が旅をしてワインを味わうべきだ、なんて大層な理由ではなくて、単純に現地で作り手の顔を直にみて、その人となりと比べながら飲むのが好きなのである。

一般的にワインというのは、品種や産地や収穫年、あるいは葡萄の栽培法や醸造プロセスなどでその個性が形成されるそうだが、私はワインのプロではないので正直言って、それらの厳密な違いまではよく分からない。むしろ、作り手である醸造家の人となりの方が気になってしまうのだ。その人の性格や癖、あるいはファッションセンスだって、少なからずワインの味わいに影響することを、経験的に知っているからである。

たとえば葡萄畑に雑草一本許さない人と、逆にあえて草ぼうぼうに育てる人では、味わいに差が出て当然であろう。そういった作り手の個性は数値化されにくく、実際にワイナリーに訪れないと分からないことが多いのだ。
クネ インペリアル グラン・レゼルバ2009

ワインは作り手の体温がまだ近くにあるような感覚で味わうのが最高のぜいたく

さて、話をリオハに戻すと、くだんのクネ社には、「インペリアル(IMPERIAL)」というフラッグシップのワインがある。2004年にスペインのフェリペ皇太子の結婚式のワインに選ばれたことで有名になり、2013年には、米国の専門誌『ワインスペクテーター』で、その年のNo.1ワインに選ばれてさらに有名になったから、通の方はご存じかもしれない。

芳醇かつおおらかでありながら、凛とした細やかさが対比する味わいで、私の好きな赤ワインの一つである。このワイナリーに興味を持ったのは、醸造家チームが女性で構成されていると聞いたからである。もっとも、名実ともに皇帝(インペリアル)なんて冠したワインを、どんな女性たちが作っているのか、想像するなという方が無理だと思う。

クネ社では、ツーリストのワイナリーツアーを受けていて、お約束どおり、葡萄畑から醸造プロセス、そして熟成するためのセラーまで案内していただいた。そのセラーは「エッフェル・セラー」と呼ばれ、1909年にエッフェル塔をデザインしたギュスターヴ・エッフェルによって設計されたのだというが、鉄筋の美しい造形にしばし圧倒されるのであった。

ツアーの最後は、いよいよ醸造家スタッフたちとのテイスティングが待っていた。噂通り醸造チームすべて女性だった。どんな女性たちだったのか……、それは実際にこのワインを飲んでいただき、ご想像にお任せしたいと思う。

この旅の思い出に、お土産として買ってきたのが、この「クネ インペリアル グラン・レゼルバ2009」である。ワインに旅をさせてはいけないというが、飛行機で大事に運べば、ダメージは最小限に抑えられるのではないだろうか。

こうしたお土産のワインは、大事に寝かせるのもいいと思うが、私は、旅の味覚の記憶を定着させるために、帰国したらなるべく早く飲むことにしている。それと、ワインは作り手の体温が、まだ近くにあるような感覚で味わうのが、最高のぜいたくだと思っているからである。

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ご回答いただきありがとうございました。

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