VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

CULTURE

「新陳代謝」の激しい都市、韓国・ソウル。
そのカルチャーの最前線に迫る

2018.07.06 FRI
「新陳代謝」の激しい都市、韓国・ソウル。そのカルチャーの最前線に迫る

近年、アジアのなかで活気ある都市の一つとして注目を集めるソウル。特にK-POPをはじめとする音楽や韓国映画などカルチャーの分野における躍進が著しい。その中心を担うミレニアルズによる、クラブやカフェ、書店などの文化発信地を通して、彼の地の魅力に迫る。

(読了時間:約6分)

Text by Shunta Ishigami

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ミレニアル世代による文化の胎動

近年ますます注目の高まりつつある国、韓国。K-POPやヒップホップをはじめとする音楽や、韓国映画・ドラマ、韓国文学、あるいは以前「VISIONARY」でも紹介したような美術館など、この国から生まれている魅力的なコンテンツは枚挙に暇がない。韓国の首都、ソウルはいまアジアのなかで最も活気のある都市の一つだといえるだろう。

いま、ソウルの街では何が起きているのか?この街には魅力的なコンテンツを発信し育てていく、文化の「孵化装置」となるような場所も次々と登場している。クラブ、レコードショップ、書店、カフェなど、なかでも文化の担い手となるミレニアル世代による、ミレニアル世代のための施設の魅力に迫ることで、この街の秘密に迫ってみよう。

独自路線を走るレコードショップ&カフェ

Mmm Recordsの立つヨンサンは駅から離れたエリアでありながら近年新たなお店が多く誕生している
Mmm Recordsの立つヨンサンは駅から離れたエリアでありながら近年新たなお店が多く誕生している
近年日本ではレコードブームが起き、これまでなじみのなかったミレニアル世代にもレコードが浸透している。さらにはいわゆる「サードウェーブコーヒー」に端を発するインディペンデントなコーヒーショップやカフェの人気も根強い。

両者はここソウルにおいても確かな影響力を発揮している。街を歩いてみれば東京の青山や表参道かと見紛うようなカフェといくつも出会えるし、若者でごった返すレコードショップを見かけることもある。
Laundry Projectは洗濯待ちの人がカフェを使うなど自然に地域へ溶け込んでいる
Laundry Projectは洗濯待ちの人がカフェを使うなど自然に地域へ溶け込んでいる
レコードショップ、カフェともに日本に劣らず個性的な店舗が現れていることにも注目したい。ソウル東部、ヨンサンの小高いエリアに立っている「Mmm Records」は屋上付きの建物1棟まるごとがレコードショップになっており、レコードフェアやイベントを盛んに行っているほか、レコードの制作も支援しているという。さらにはカフェも併設されており、DJやレコードマニアでなくとも気軽にレコードを体験できる環境が整っている。

他方のカフェは、特にミレニアル世代に人気の「インスタ映え」を意識した店舗が注目されているほか、コインランドリーが併設された「Laundry Project」のように個性的なカフェも人気を博している。コインランドリーのあるカフェといわれると一風変わった店なのかと思ってしまうが、ゲストハウスの多いソウルとコインランドリー付きカフェの相性はよく、旅行者が気軽にコミュニケーションをとれる空間が生まれているという。

世界を結びつけるクラブカルチャー

Cakeshopは近年メディアで最も露出の増えているクラブの一つ
Cakeshopは近年メディアで最も露出の増えているクラブの一つ
前述のとおり韓国の音楽シーンは世界中から注目されているが、クラブカルチャーもまた例外ではない。ソウルにはいくつもの活気あるクラブが生まれており、アジアのみならず欧米からも多くのアーティストが訪れている。

なかでも賑わいをみせているのはソウル東部のイテウォンと呼ばれるエリアだろう。よくメディアでも取り上げられることのある「Cakeshop」を筆頭に「CONTRA」や「Pistil」、「Soap」など、多くのクラブがこのエリアに軒を連ねている。イテウォンは飲食店がひしめき合うエリアでもあるため、夜になると多くの若者や外国人観光客が訪れ、クラブを行き交う姿が見られるはずだ。
イテウォン地域のクラブは夜になると多くの若者でごった返す
イテウォン地域のクラブは夜になると多くの若者でごった返す
もちろん、クラブカルチャーが栄えているのはこのエリアだけではない。学生で賑わうエリアであるホンデの「The Henz Club」も数年前にオープンしたクラブながら日本からもDJが訪れているし、印刷関係の工場や電器店が密集するウルチロ3街に位置する「seendosi」では、メインストリームとは異なるオルタナティブなダンスミュージックが鳴り響いている。

クラブカルチャーというとどうしてもアッパーで享楽的なものを想像してしまうが、さにあらず。クラブシーンで躍動するミレニアル世代こそが国境を超えて世界各国とソウルを結びつけ、この街を文化の「ハブ」たらしめているのである。

インディペンデントな動きを生む書店

ホンデエリアにたたずむ「THANKS BOOKS」では店内でコーヒーも販売している
ホンデエリアにたたずむ「THANKS BOOKS」では店内でコーヒーも販売している
ミレニアル世代によるムーブメントといわれると、どうしても音楽作品や映像作品のように「ソフト」を想起してしまいがちだが、近年ソウルではミレニアル世代が「書店」を多く立ち上げていることが注目されている。

日本でも編集者の綾女欣伸氏とブック・コーディネーターの内沼晋太郎氏がまとめ上げた『本の未来を探す旅 ソウル』が2017年に刊行され話題を呼んだが、いまソウルでは「本屋ブーム」が起きているのである。

1980年代以降に生まれた若者が中心となっているこのムーブメントを通じてつくられるのは、いわゆる「書店」とは少し異なる、多様で魅力的なインディペンデントの書店だ。詩人によって立ち上げられた書店「wit n cynical」や、デザイナーが運営する「THANKS BOOKS」、ビールの飲める書店「BOOK BY BOOK」など、種類はさまざま。すぐに移転してしまうものもあれば開店してまもないのに2号店をオープンさせるものもあるなど、シーンの動きは非常に流動的だ。
近年は韓国文学への注目も高まり日本でも人気を博している
近年は韓国文学への注目も高まり日本でも人気を博している
こうした本屋ブームと並走するようにして、近年はブックフェアの勢いも増してきている。ソウル発のブックフェア「UNLIMITED EDITION」にはソウルのみならずアジア各国から多くのアーティストが集まり、次なる表現が生まれる場を形成している。

また、日本でも前出の綾女氏と内沼氏が立ち上げメンバーの一部となって、「ASIA BOOK MARKET」を開催し、韓国のみならず台湾や香港を巻き込みながらゆるやかなつながりが生まれていることも見逃せないだろう。

ソウルに見るオルタナティブな都市の未来

ソウルの街並みは古い建物と新しい建物が混じり合いながらつくられている
ソウルの街並みは古い建物と新しい建物が混じり合いながらつくられている
ここまで見てきたようなカルチャーやムーブメントは、一見東京と大して変わらないもののように思えるかもしれない。事実、確かに東京にも若者が集まるカフェはあるし、週末になれば盛り上がるクラブも少なくない。

東京と違う点があるとすれば、それはソウルの方が遥かに「新陳代謝」が激しく、流動性の高い都市だということかもしれない。しばしば韓国は非常に素早くトレンドを取り入れる国だといわれるが、それもまた新陳代謝の激しさの表れだといえよう。次々とトレンドが入れ替わる様子は移り気で飽きっぽくみえるかもしれないが、この都市の文化自体が川の流れのように常に動き続けるものだと考えた方がいいのかもしれない。

もちろん、それはいいことばかりではない。ジャンルを問わず新しい店舗がつくられてはすぐ閉店したり移転したりする背後には、土地代や家賃の高騰がある。出版についても取次の不在がインディペンデントな取り組みを可能にしているが、その前には一度出版文化が途絶えそうになったという歴史が横たわっている。

日本でもミレニアル世代がもてはやされ、2020年の東京オリンピックに向けて都市の新陳代謝はどんどん高まってゆく。都市の文化をどのように育て、どのようにドライブさせていくのか。新陳代謝を一過性のものにせず、「文化」とも捉えられるソウルから、東京が学ぶべきことは少なくないかもしれない。
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