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モノを買わない消費者の心をつかむ
“アフターケア・サービス”

2018.04.16 MON
モノを買わない消費者の心をつかむ“アフターケア・サービス”

小売業界は今、ショッピングの経験を“拡張”しようと躍起になっている。ショップ内で修理サービスを提供したり、ワークショップまで開催する最新のアフターケア・ビジネスにスポットを当てる。

(読了時間:約4分)

©2018 Stylus

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「壊れたら新しいモノを」はもう古い

ウーバーやエアビーアンドビーに代表されるサービスの登場により、消費者の意識は「所有」から“シェアエコノミー”に代表される「共有」へと移行しつつある。そして誰かと共有する(できる)という前提が成立すると、現代の消費者は、時間もモノも再利用することの価値が格段に上昇するのを十二分に理解し、自ずと「長持ちする物」を志向するようになっている。また、いわゆるミレニアルズの多くが社会問題に強い関心を示し、エコ意識の低い企業を評価しなくなっているとするデータもある。もはや「壊れたら新しいモノを買えばいい」という前時代的な消費は支持されないのだ。こうしたグローバルなライフスタイルの転換期にあるなか、世界の小売業界が注目しているのが「アフターケア」だ。

高級志向とアフターケア

アメリカの高級百貨店「サックス・フィフス・アベニュー」は、こうしたアフターケア・コマースの好例といえるだろう。2017年にスタートしたメンズ専門セクション、サックス・ダウンタウン・メンズには、ニューヨークの高級アクセサリーケアブランド「レザー・スパ」が運営するアフターケアシューズコーナーが常設され、持ち込まれた靴の修理やクリーニングサービスを提供している。
米の高級百貨店「サックス・フィフス・アベニュー」にはアフターケアシューズコーナーが常設されている
米の高級百貨店「サックス・フィフス・アベニュー」にはアフターケアシューズコーナーが常設されている
ラグジュアリーハンドバッグに特化したサービスを用意しているのは、イギリスの高級デパート「ハーヴェイ・ニコルズ」。首都ロンドンと北部の都市、マンチェスターにある店舗では、顧客のリクエストに応じてハンドバッグの丁寧な修理とアフターケアを手がけるサービスを提供して、人気を集めている。
イギリスの高級デパート「ハーヴェイ・ニコルズ」ではハンドバッグの修理を手がけるサービスを提供
イギリスの高級デパート「ハーヴェイ・ニコルズ」ではハンドバッグの修理を手がけるサービスを提供
アフターケアに勝機を見出しているのは百貨店だけではない。ドイツのラゲッジブランド「リモワ」は、パリにある旗艦店内に修理コーナーを設置。さらには、マイアミのリッツカールトンやシドニーのウェスティンなど5つ星ホテルと提携して、無料の修理サービスを提供。ホテルのコンシェルジュが指定工場と連携して、修理が必要な顧客のスーツケースのピックアップ、修理、配達の手配を一括して受け付けている。
「リモワ」は、パリにある旗艦店内に修理コーナーを設置
「リモワ」は、パリにある旗艦店内に修理コーナーを設置

修理専門スタートアップも好調

こうした機運に、スタートアップが目をつけないわけがない。「The Restory」は、オンデマンド修理サービスを提供するロンドンベースのスタートアップ。靴やバックといったレザー製品の修理をボタンひとつで専門家に依頼できる。
オンデマンド修理サービスを提供するロンドンベースのスタートアップ「The Restory」
オンデマンド修理サービスを提供するロンドンベースのスタートアップ「The Restory」
「Master Bao」も、同様のオンライン修理サービスを提供する中国のスタートアップ。修理したい製品を発送すると、Master Baoで点検されたのち修理専門店へと手配され、約10日後にはユーザーの手元に届けられる仕組みだ。価格は平均46ドルと安価で、中国国内だけでなく日本、アメリカ、フランスにも顧客をもち、現在22万人以上の登録ユーザーを抱えている。
オンライン修理サービスを提供する中国のスタートアップ「Master Bao」
オンライン修理サービスを提供する中国のスタートアップ「Master Bao」
そのほかにも、衣類のリペアやカスタマイズを手がける「Clothes Doctor(イギリス)」や「Air Tailor(アメリカ)」などが登場しているが、いずれのスタートアップも業績は好調だという。Restoryは、2017年には前年比約3倍の売り上げを記録し、Master Baoも、2017年11月に約1.6億円の資金を調達している。

ブランドとの接点を演出

こうしたアフターケア・サービスには、ブランド/小売店に対する消費者のロイヤリティを高める効果も期待されている。IBMの調査によると、世界の消費者の実に85%が、製品を購入する前後を比較したとき、購入した後の経験こそがブランドへの信頼を高めると考えているという。

そこで、アフターケアに“演出”を取り入れるブランドも登場している。その例として、オランダのデニムブランド「Denham」が「GINZA SIX」内にオープンした新店舗と、ニューヨーク5番街にある「Coach」の旗艦店にも触れておきたい。

Denhamでは、同ブランド専任のデニムスペシャリストがジーンズを洗浄し、リペアを施す様子を自分の目で観察できるのだ。また無料のコーヒーバーが併設されているので、自分のデニムが乾くまでのあいだ、おいしいコーヒーを片手にゆっくりとくつろげる仕掛けになっている。
「GINZA SIX」のDenhamの店舗ではスペシャリストがジーンズを洗浄する様子を観察できる
「GINZA SIX」のDenhamの店舗ではスペシャリストがジーンズを洗浄する様子を観察できる
Coachは、顧客向けにワークショップを開催しており、経験豊かな職人に革製品のアフターケアやクリーニングを無料で教わることができる。さらにはこのショップだけの受注生産もあり、得意客に人気を博している。
ニューヨーク5番街にある「Coach」の旗艦店では、顧客向けにワークショップを開催している
ニューヨーク5番街にある「Coach」の旗艦店では、顧客向けにワークショップを開催している
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