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米国発のプログラミングスクールが
つくる学びの「コミュニティ」は、
未来の学校の姿かもしれない

2018.04.02 MON
米国発のプログラミングスクールがつくる学びの「コミュニティ」は、未来の学校の姿かもしれない

サンフランシスコに誕生したコンピューターサイエンスの学校「Make School」が世界中から注目を集めている。幅広い年齢・国籍の生徒が集まるこの学校が創出した多様性溢れる「コミュニティ」は、今後の教育のあり方を考える上で大きなヒントになりそうだ。

(読了時間:約5分)

Text by Shunta Ishigami
Photographs Courtesy of Make School

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グローバルな学びのプラットフォーム

誰もがインターネットを使いこなせるようになった現在、分からないことがあればグーグルで検索すればいいと思っている人は多い。一人の人間が記憶できるよりはるかに大量の情報がインターネット上に格納されているため、いわばインターネットは私たちの「外部記憶」のように機能している。

そんな時代にあっては、学校教育のあり方も変わらざるをえないはずだ。椅子に座った生徒たちに向かって教師が語り続け、生徒はその発言をせっせとノートに書きつけて記憶する。生徒が一方的に教師から情報をインプットされ続ける教育スタイルは、早晩立ち行かなくなってしまうだろう。

では、これからの教育はどのように行われるべきなのだろうか。その問題を考えるヒントは、サンフランシスコから生まれたコンピューターサイエンスのための学校「Make School」にあるかもしれない。

2012年にジェレミー・ロスマン氏とアシュ・デサイ氏の二人によって立ち上げられたこの学校は、主に中高生や大学生を対象としてプログラミングやプロダクト開発のための教育プログラムを提供している。卒業生のなかにはグーグルやテスラといった大手企業に就職するものも多く、その成果は目覚ましい。現在では米国で2年制のプログラム「Product College」をメインに開催しているほか、近年は東京や北京といったアジアの地域でも「Summer Academy」と題された短期プログラムを実施している。17年秋にはフェイスブックとのパートナーシップが発表されるなど、現在Make Schoolの取り組みは世界中から注目を浴びている。
ゲームアプリを開発することは技術を磨くだけではなく、想像力を鍛えることにも繋がっていく
ゲームアプリを開発することは技術を磨くだけではなく、想像力を鍛えることにも繋がっていく

「スクール」から「コミュニティ」へ

Make Schoolの教育プログラムは、とりわけ「実践的」であることに重きが置かれている。例えば、米国で行われている2年制の「Product College」では、プログラミング技術を習得するだけではなく、実際にアプリケーションを開発してそのプレゼンテーションを行うことが求められている。プロダクトを完成させることではなく、プロダクトを完成させ、それをしかるべき場所や人に「届ける」ことがゴールとして設定されているのだ。時には、Make Schoolがもつネットワークを活かし、生徒をスタートアップや企業とつなげることもあるというから驚きだ。

生徒一人に一人の教師がつくわけではないので、ときには生徒同士助け合わねばならないこともあるだろう。このプログラムでは、一方的に教わり続けるだけではいられないのだ。実践的な訓練を重ねながら、時には自分から発信しなければならない。その結果、従来の学校とは異なる自由闊達な雰囲気が教室には漂い始める。

実践性だけでなく、参加する生徒の多様性もMake Schoolの特徴の一つだ。2017年に東京で行われたSummer Academyでさえ日本を含む4カ国から生徒が集まっているし、米国ではこれまでに50カ国以上の生徒が参加しているのだという。年齢も中学生から大学を卒業した人まで幅広い。通常の学校教育では同じ机を囲むことのない人々がともに学ぶ空間が生まれているのが特徴的だ。

もちろん、プログラムが終わったからといって彼らの学びが完結するわけではない。各国から集まった生徒たちはSummer Academyを通じてコミュニケーションを深め、プログラム終了後も交流を続けることもままあるという。いわば、Make Schoolは単なる「学校」ではなく、グローバルなつながりを生む「コミュニティ」として機能しているというわけだ。
Make Schoolには老若男女を問わず多くの生徒・講師が参加し、さまざまなアプリを開発している
Make Schoolには老若男女を問わず多くの生徒・講師が参加し、さまざまなアプリを開発している

多様性が価値を生む

事実、Make Schoolは自身の活動の重要な価値として、コミュニティの概念を掲げている。彼らは自身のコミュニティを「家族」になぞらえており、お互いにいい影響を与える関係性を築いていくことを目指しているのだという。さまざまな背景をもつ多様な人々が家族のように近しい関係性でやりとりできるコミュニティは、イノベーションが生まれやすい創発のコミュニティとなるはずだ。

テック業界のみならずさまざまな領域で「多様性」の重要性が叫ばれるようになって久しい。日本においても「ダイバーシティ・マネジメント」なる言葉が飛び交い、積極的な取り組みが行われているものの、まだまだ旧態依然としたコミュニティが多いのも事実だろう。そう簡単に世界は変わらないのだ。

その一方で、Make Schoolは着々とコミュニティを広げ、その多様性を豊かにしている。これまでの卒業生は2,000人を超え、オンラインコースの履修者は150万人以上にのぼるという。国籍から年齢まで何もかもが異なっている多様な人々が、プログラミングのもとでつながっていく。それは確かに、「家族」のような連帯を生むのかもしれない。

Make Schoolで学んだ若き生徒たちは、豊かなコミュニティを携えながら高校や大学、企業へと進んでいく。その先々で新たな出会いがあり、彼らはそこでもまたコミュニティを広げていくのだろう。そこにこそ、これからの教育のヒントがある。教える/教わるという関係をつくるのではなく、ともに影響しあえるコミュニティを形づくっていくこと。Make Schoolは、もしかしたら未来の学校のあり方をもつくり出しているのかもしれない。
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