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熊本発のシタテルが仕掛ける!
型破りのビジネスモデルによる衣服の産業革命

2018.03.07 WED
熊本発のシタテルが仕掛ける!型破りのビジネスモデルによる衣服の産業革命

ファッションが好きであれば一度は持つ「オリジナルの服を作りたい」という願い。熊本発のアパレル系ベンチャー企業である「シタテル株式会社」が展開するプラットフォームを使えば、実現できるかも知れない。

(読了時間:約5分)

Photographs by Yusuke Hayashi
Edit & Text by Keisuke Tajiri

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熊本発ベンチャーのシタテル株式会社がファッションのあり方を変える

もしあなたに素晴らしい服のデザインが浮かんだとして、ファッションブランドを立ち上げようと思ったらどのようにプロジェクトを進めていくだろうか。販売はECで行うとしても、どこから生地を仕入れるのか、誰にパターンを起こしてもらうのか、どの工場に発注するのか、皆目検討もつかないところだろう。

テクノロジーの恩恵で多くのことが個人レベルでてきるようになった今でも、ファッションの世界に飛び込むことはたやすいことでないことが分かる。同様に、洗練されたユニフォームを取り入れたいショップや飲食店のオーナーといった非アパレルの業界も、同じような悩みを抱えている。
熊本に本社を構えるシタテルの代表、河野秀和氏。熊本には腕のいい工場が多いという
熊本に本社を構えるシタテルの代表、河野秀和氏。熊本には腕のいい工場が多いという
一方で、衣服を生産する日本の縫製工場も過渡期を迎えている。ファストファッションの波が押し寄せ、安い労働力を国外へ求めた結果、内需が減り経営が立ち行かずに工場閉鎖を余儀なくされたケースも少なくない。営業力を持たない工場は新規顧客の開拓が難しく、既存の付き合いの中でどうにか凌いでいるのが現状だ。

こうした全国に点在するデザイナーや企業、工場が抱える悩みをマッチングするサービスとして誕生したのが“シタテル”だ。既存のファションブランドをターゲットに、小ロットの衣服生産を可能にした「sitateru」と、非アパレル企業や個人を中心とした「WE ARE」という2つの衣服生産サービスで、服にまつわるあらゆる問題解決を図ろうとしている。

アパレル業界に根付く独自性と課題

人と空きスペースをマッチングする「Airbnb」をはじめ、人材、車など数々のマッチングサービスがあるが、シタテルはそれらとは一線を画す。シタテルが工場と人材をストックして、あとはルールの上でどうぞお好きに、というものではなく、立場によってことなる知識レベルをサポートする役割から、商品のクオリティコントロール、そしてアパレル業界の構造改革まで、衣服生産に関わるあらゆるポイントでシタテルがコミットしている。
ブランド立ち上げから半年で15型を制作した「DONTSUKI」。©sitateru
ブランド立ち上げから半年で15型を制作した「DONTSUKI」。©sitateru
アパレル業界には古くから続く商慣習が残っており、シタテルの代表、河野秀和氏が同社を立ち上げる時も、その独特の慣習をいくつも目の当たりにしてきたという。

「今までリスクマネジメントや流通システムなど、さまざまなビジネスの最適化を図ってきましたが、アパレル業界は複雑過ぎて分析できなかったのです。ブランドやメーカー、工場や小売がそれぞれ違う思想で、なかなか統計が取れない。さらに商社や問屋、バイヤーも渾然一体となって複雑に絡み合う、極めて特異な産業だということが分かりました」

これまで各事業者がバリューチェーンを構築して部分最適を行ってきたものの、横のつながりが少ないため、業界全体として大きなイノベーションが起きにくかったのではないかと、河野氏は分析する。
人生を費やすのであれば、社会課題を解決したいという思いから、シタテルが誕生した
人生を費やすのであれば、社会課題を解決したいという思いから、シタテルが誕生した
リサーチしていくなかで、アパレル業界にいくつもの「課題」があったことも分かった。春夏の衣服を前年の秋冬に開発するスピード感の遅さや、生産から消費者の手に渡るまでに関わる業者の数、作られた衣服のうちの20%が焼却されているともいわれる生産効率の悪さなど、いくつもの課題を抱えている。

シタテルのプラットフォームで誰もが自由にファッションを楽しめる時代に

そのような状況を改善すべく、河野氏は仮説と検証を繰り返して一つずつ課題を洗い出し、スケールしていった。その成果はすぐに表れ、サービスを開始してわずか4年経った現在、シタテルに登録する事業者は5,400社を超えた。工場や生地を提供するサプライヤーは400社に及ぶ。
サプライヤーの一つ、「NAKADEN」の生地はハイブランドからも引き合いが多い©sitateru
サプライヤーの一つ、「NAKADEN」の生地はハイブランドからも引き合いが多い©sitateru
その勢いはとどまらず、さらなる最適化を図るため、IoTを取り入れた「スマート工場プロジェクト」にも注力する。工場はシーズンや受注状況によって繁閑期があり、これまでブランドやメーカーはオーダーをかけるたびに工場に稼働状況を問い合わせていた。そこでシタテルは、工場の受注状況やラインのリソースをリアルタイムで管理できるシステムを導入し、顧客のニーズに合わせて数十着から数万着まで生産できるプラットフォームを構築。
「アンリアレイジ」が手がけた「一風堂」のワークウェアはシタテルとのプロジェクト©sitateru
「アンリアレイジ」が手がけた「一風堂」のワークウェアはシタテルとのプロジェクト©sitateru
そうした先進的な取り組みは業界内でも話題を呼び、「アンリアレイジ」や「ミノトール」など新進気鋭のブランドからメゾンブランドといった大手企業まで、数多くの案件が舞い込んでくる。


「我々が目指すところは、幅広い層に低価格でサービスを提供し大企業になることではありません。大量生産によって手頃に手に入れることができる衣服がある一方で、私たちがサービスを提供したいのは、トレンドゾーンと呼ばれる、いいモノを相応な価格で、と考えている方々のための衣服です。これまでアパレル業界は閉鎖的なところがありました。ブラックボックス化していた情報や仕組みをテクノロジーで整理・可視化して、消費者だった人たちがアイデアひとつで生産者にもなれる世の中にしていきたいですね」

これからさらに人々のライフスタイルは多様化し、顧客のニーズは細分化していくことが予想される。衣服におけるその課題は、そう遠くない未来にシタテルのプラットフォームが解決してくれるのだろうか。テクノロジーで衣服の産業改革を目指す、シタテルの今後の展開に注目していきたい。
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