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レクサスと「時間の彫刻」とのコラボレーションは、豊かな時間の流れを生み出した

2018.03.05 MON
レクサスと「時間の彫刻」とのコラボレーションは、豊かな時間の流れを生み出した

今年もテクノロジーアートの祭典「Media Ambition Tokyo」においてレクサスのコラボレーション作品が発表された。アーティスト後藤映則氏の作品とレクサスのデザインフィロソフィが共振した結果、会場にはこれまで見たことのない空間が生み出された。

(読了時間:約6分)

Text by Shunta Ishigami
Photographs by Junichi Higashiyama.

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COLLABORATED WITH

二つのコラボレーション

2018年2月9日(金)から25日(日)まで開催されたテクノロジーアートの祭典「Media Ambition Tokyo」。2014年から本イベントをサポートしているレクサスは今年、メディアアーティスト後藤映則氏の代表的な作品『toki-』シリーズとコラボレーションし、『ENERGY #02 with LEXUS LC』と『THOUGHT with LEXUS LS』という二つの作品を発表した。
Media Ambition Tokyo「ENERGY #02 with LEXUS LC」
後藤氏による『toki-』シリーズは、時間の「彫刻」として国内外で高い評価を集めている作品だ。歩行やダンスといった人間の動きを捉えた連続写真をモーフィングによってつなぎ合わせ、それを3Dプリンターによって実体化させて彫刻をつくり出す。そこに光を当てることで人間の動きが浮かびあがり、光の当て方や彫刻そのものを動かすことで、複数の時間軸やうつろいゆく時間の流れそのものが表現されている。

あえて定義づけるとすれば、今回展示された2作のうち『ENERGY #02 with LEXUS LC』は時空間のコラボレーションであり、『THOUGHT with LEXUS LS』は思想のコラボレーションと呼ぶべき作品だ。

極めて野心的な試み

『ENERGY #02 with LEXUS LC』では真っ暗な展示室の中に後藤氏の作品『ENERGY #02』が吊るされ、その下にレクサスのフラッグシップクーペLC500hが展示されている。鑑賞者はまず初めに『ENERGY #2』の美しい光の動きに目を奪われ、次にLC500hの存在に気づき、ボディに映り込んだ光を通じて再び『ENERGY #2』を体感する。暗闇の中でうっすらと照らされながらなめらかな輪郭を露わにするLC500hは、どこか妖艶でさえある。ライティングが施されるのが当たり前とされているクルマの展示において、作品の放つ光のみによってクルマを際立たせようとする試みは極めて野心的だ。
『ENERGY #02 with LEXUS LC』はバレエの動きを表現している
『ENERGY #02 with LEXUS LC』はバレエの動きを表現している
一方『THOUGHT with LEXUS LS』は、今回のために後藤氏が新たに制作したものだ。これまでバレエなど西洋の動きをベースに制作を続けてきた後藤氏が、今回は日本の技術や「匠」の精神を体現してきたレクサスからインスパイアされ、日本舞踊の動きを作品へと落とし込んだ。単に日本舞踊の動きを再現するだけではなく、日本的な思想を象徴する「円」の形を組み合わせている点がこれまでの後藤氏の作品と大きく異なっているといえるだろう。作品が回転するにつれ日本舞踊を舞う人の形が円へとメタモルフォーゼしてゆき、さらには回転する作品そのものが美しい円を描いている。
『THOUGHT with LEXUS LS』は舞踊の動きが円へと変化する様が美しい
『THOUGHT with LEXUS LS』は舞踊の動きが円へと変化する様が美しい
クルマとコラボーレーションする今回の展示は、後藤氏にとっても新鮮なものだった。「これまでの展示とは異なり、展示室に入ってから出てゆくまでの時間の流れを意識しました。鑑賞体験全体を設計するのはとても面白かったです」と後藤氏は語る。同氏は展示室に入って一からレイアウトを構成し、LC500hの配置も含め細かな微調整を行いながら最も美しい体験が生まれるよう試行錯誤を繰り返したのだという。
LC500hへの映り込みもさまざまな見え方が検証されたのだという
LC500hへの映り込みもさまざまな見え方が検証されたのだという
2月15日には本コラボレーションを特集するトークイベントが行われた
2月15日には本コラボレーションを特集するトークイベントが行われた

時間・距離・動き

「『ENERGY #02 with LEXUS LC』では、遠景、中景、近景と作品との距離が変わるにつれて異なる鑑賞体験が生み出されていますよね。これは日本独特の『間』の感覚とつながっていると思います」。そう分析するのは、Lexus International Presidentの澤良宏氏。「LCのデザインは、見る角度や方向はもちろん、光の強弱、時間によってもさまざまな変化を見せます。そんなLCの意匠と、後藤氏の作品が持つ時間とのか掛け合わせが、『ENERGY #02 with LEXUS LC』の醍醐味なのだと思います」。さらに澤氏は本作の「時間」と「距離」の感覚が、日本庭園を歩くときに経験するものと非常に近しいものだと語った。
Lexus International Presidentの澤良宏氏。今回の展示に感銘を受けたと語る
Lexus International Presidentの澤良宏氏。今回の展示に感銘を受けたと語る
「こうした距離の感覚は、レクサスのデザインにも通じています。レクサスは各モデルに合わせてデザインランゲージを少しずつ変えているんです。遠くから見たときに誰もがレクサスだと分かるものでありながら、クルマのディテールから受ける印象は、どれも異なったものになっています」


さらには動きの面でも今回の作品とレクサスは通じている。『THOUGHT with LEXUS LS』は日本舞踊という日本古来の動きをモチーフにしているが、レクサスもウィンドウの開閉に「襖」の所作を意識するなど、日本的な動きをデザインに組み込んでいるからだ。澤氏は、レクサスの根底にある思想が今回の作品と共振しているのではないかと指摘する。

「レクサス独自のデザイン理念を表す『エルフィネス(L-finesse)』という言葉があります。これは『純』『妙』『予』という3つの要素を組み合わせることで日本らしさを表現するもの。今回の作品を観たとき、後藤さんの作品はまさに『エルフィネス』を体現しているなと思ったんです。特に『予』は時間をデザインすることを表していますから」
メディアアーティストの後藤映則氏。今後はもっと巨大な作品をつくりたいとのこと
メディアアーティストの後藤映則氏。今後はもっと巨大な作品をつくりたいとのこと

複層的な時間の表現

「僕たち人間は4次元時空の世界に生きているのですが、直接時間を見ることはできません。でも、この作品は時間軸を3次元の空間に出現させることで、時間を立体的に捉えることができます。映画『インターステラー』のように、より高次元から世界を捉えられたらこういうふうに見えるかもしれません」

そう後藤氏が語るように、この作品の中にはいくつもの時間が束ねられているのだ。『toki-』シリーズとレクサスの思想が共振しているのだとすれば、恐らくレクサスについても同じことがいえるはずだ。
六本木ヒルズカフェの外にはLS 500hが展示され、足を止めて写真を撮る人の姿も見られた
六本木ヒルズカフェの外にはLS 500hが展示され、足を止めて写真を撮る人の姿も見られた
レクサスは日本の伝統的な設えや動きをそのデザインへと取り込む一方で、独創的なスピンドルに象徴されるように、オーセンティックなデザインの考え方からすると「タブー」ともいえるような設計を取り入れてもいる。さらに、朝日や夕焼け、東京の光とLAの光、といったように時間と場所が変わるだけでレクサスはまったく異なった姿を見せるようデザインされているのは有名な話だ。

そして、それは一台のクルマの中に複数の時間が流れているようでもある。レクサスの中に流れる時間と『toki-』シリーズの中に流れる時間。過去・現在・未来、春夏秋冬、朝と夜──二つの作品が表現するいくつもの時間が掛け合わさることで生まれた、単なる「二律双生」を超える体験は今回のコラボレーションの最大の成果だといえるだろう。

過去・現在・未来を溶かすことで、時間を越えた表現を生み出すこと。それが『toki-』シリーズもレクサスも、共通して体現してきたことだ。だからこそ、今回の作品はまさに「コラボレーション」と呼ぶにふさわしい共創的で豊かな空間をつくり出しているのだ。
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