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TECHNOLOGY

「スマートシティエキスポ2017」に見る、
未来型都市の青写真
前編

2018.02.16 FRI
「スマートシティエキスポ2017」に見る、未来型都市の青写真 前編

バルセロナで開かれた「スマートシティエキスポ2017」では、世界各国の700以上の拠点都市から講演者や出展者が集結。未来に向けた街づくりのための取り組みやテクノロジーを発表した。その模様を、2回に分けてリポートする。

(読了時間:約6分)

Translation by Yuka Taniguchi
©2018 Stylus

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ドバイが取り組むスマートシティ化の現状

「都市に暮らす人たちの生活を充実させるためには、利用できるツールはすべて使わなくてはいけません。ツールといえば、昔はショベルカーやクレーン車、鉄骨といったものでしたが、今日ではそれはデータです。私たちはIoTやブロックチェーン、そして人工知能を駆使して、幸福な都市を実現していきます」。スマートシティ化を目指すドバイの政府機関、スマート・ドバイ・オフィス長官、アイシャ・ビン・ビシュル氏はそう語る。
スマートシティに関する市場の規模は2022年までに1.2兆ドルにまで成長する見込み©SMG 2017
スマートシティに関する市場の規模は2022年までに1.2兆ドルにまで成長する見込み©SMG 2017
市民社会を活性化させ、孤立した個々の構造をつないでコストの効率化を実現させていくためには、都市は最新のテクノロジーを使いこなせるようにならなければならない。IoT時代を迎えつつある都市においては、建物から信号機、監視カメラからごみ箱にいたるまで、ありとあらゆるものにセンサーが搭載されている。中国の通信企業「Huawei」社の産業ソリューション担当最高技術責任者、ジョー・ソー氏は、「IoTを用いることで、センサーネットワークを通じて都市を管理し、住人の健康状態や街で起きている出来事をリアルタイムで把握することが可能になりました」と、「スマートシティエキスポ2017」の会場で語った。

ネットに接続された無数のコネクテッドデバイスが収集する膨大なデータから、的確なソリューションを発見することは非常に難しい。ドイツの大手テクノロジー企業「Siemens」社の都市開発部門グローバル責任者、マーティン・パウエル氏は「アプリストアのように、1つのプラットフォーム上にデータセットをまとめるべきです」と話す。
Huaweiはスマートシティの頭脳「インテリジェント・オペレーション・センタ―」を発表©Huawei
Huaweiはスマートシティの頭脳「インテリジェント・オペレーション・センタ―」を発表©Huawei
そこでHuawei社は、スマートシティの神経系を司る頭脳としての役目を果たす、機械学習と人工知能を搭載したプラットフォーム「インテリジェント・オペレーション・センタ―(IOC)」を発表。これはセンサーが収集した情報を分析し、都市のサービスを管理する上でより最適な判断を行うことを可能にしたものだ。都市はそのニーズに応じてダッシュボードをカスタマイズすることにより、交通システムや公共交通機関、危機管理・緊急医療対応、水や廃棄物の管理、照明など、さまざまな分野を横断して情報を統合できる。

ブロックチェーンの登場によって、都市をより効率的に機能させ、情報を保護することができる可能性が出てきた。「既存の都市構造の多くは、ブロックチェーンを活用することで進化させることができるでしょう。例えば投票、エネルギー管理、送金などの分野では、既に実験的な取り組みが行われています」と語るのは、カリフォルニア州のハイテク企業コンサルタント会社「Animal Ventures」社の共同設立者、ベティーナ・ウォーバーグ氏だ。

2017年3月、ドバイ政府は、市民サービスの分野にブロックチェーン技術を導入して、市民の生活を一変させるさまざまな計画を発表した。2020年までにブロックチェーンを活用した世界初の都市となることを目指し、ドバイでは既に土地登記や政府の銀行口座の勘定調整などの分野で、この技術を利用している。前述のスマート・ドバイ・オフィス長官、アイシャ・ビン・ビシュル氏は「 ブロックチェーンは取引における新たな幕開けとなるでしょう」と述べた。

ボトムアップ型のアプローチでスマートシティを目指す

新しい技術を取り入れるにあたって 、地域コミュニティの優先事項が何かをはっきりさせることが必要不可欠である。「Microsoft」社のグローバル政府担当ゼネラルマネジャー、ティム・トゥリット氏は「スマートシティとは、建物やインフラなど都市の構成要素がつながった “コネクテッドシティ” を指します。これは必ずしも技術的なことを言っているのではありません。行政と市民が実際に手を取り合って街づくりに取り組んでいることが唯一の要件です。そのためには、第一に人々の声に耳を傾け、その上で市民の要望に基づいた計画を立てることが大切です」と述べた。

電話アンケートや公聴会といった手段で、市民の本当の声を吸い上げることは難しい。多くのスタートアップ企業は、住人が実際に何を望んでいるのかを理解するための新しい仕組みを模索している。イスラエルのスタートアップ企業、「ZenCity」は、地方自治体向けのサービスとして、人工知能を使ってソーシャルメディア上の会話をモニタリングし、市民が自分たちの都市についてどう考え、どのように利用しているのかといったリアルタイムの本音を抽出する。
ZenCityは自治体向けにSNS上の会話から市民の本音を抽出するサービスを運用 ©ZenCity
ZenCityは自治体向けにSNS上の会話から市民の本音を抽出するサービスを運用 ©ZenCity
このシステムを使うことで、例えばごみ収集業務の不備などの問題、特定の出来事に関する情報などがはっきりと見えてくる。ZenCityは2017年9月に1700万ドルの資金調達を達成し、現在、イスラエル国内10都市とパリでこのプラットフォームの運用を行っている。

「Facebook、Instagram、Twitterを合わせたソーシャルメディア上では、全世界で毎分130万件の投稿が行われています。これは人々が何を大切にしているのか、何を求めているかを示す膨大なデータであり、これを理解することが必要不可欠になります」と、ZenCity最高経営責任者、アヤル・フェーダー=レヴィ氏は語る。

2017年10月に立ち上げられたメルボルンを拠点とするスタートアップ企業、「Neighbourlytics」は、ソーシャルメディア、Google、地域の企業や公共交通機関などから集めたデータに基づき、市民に有益な知見を提供している。地域社会のアイデンティティや、そこに暮らす人々、そのライフスタイルに対する深い理解を促すこのサービスは、都市空間のデザインや管理をより良いものとする一助となっている。
「Neighbourlytics」はSNSなどから集めたデータをもとに市民に有益な知見を提供する
「Neighbourlytics」はSNSなどから集めたデータをもとに市民に有益な知見を提供する
こうした流れの最先端を行く都市は、才能ある地域住民の活用や都市問題の解決、そして、よりパワフルなコミュニティの形成を目的とした、企業活動を活性化するハブ作りに力を入れている。2017年10月にニューヨーク市で立ち上げられた「NYCx」は、新技術を通じた経済の活性化、雇用促進、都市に暮らす人々の問題の解決を図るテックエンゲージメントプログラムである。

都市空間を起業家たちの共同開発の場に変え、ドローンからブロックチェーンにいたるまで、これからのさまざまな技術の研究開発を推進するこのプログラムによって、都市に生きる人たちの仕事、生活、遊びのスタイルは大きく変貌していくだろう。
新技術を通じて都市に暮らす人々の問題などの解決を図るテックエンゲージメントプログラム「NYCx」
新技術を通じて都市に暮らす人々の問題などの解決を図るテックエンゲージメントプログラム「NYCx」
ただ、こうしたスマートシティの推進を目指す自治体は、常に予算の制約に悩まされているのだが、アメリカのネットワーキングハードウェア企業「Cisco」社は、「City Infrastructure Financing Acceleration Program(都市インフラの資金迅速化プログラム)」を発表し、より簡単で迅速、かつ経済的に無理のないスマートシティ化を後押しする。この10億ドルのプログラムは、スマートシティ実現を目指す取り組みに対し、当初の現金支出額を最小限に抑え、借入と株式資本を提供するものである。

後編では、「スマートシティエキスポ2017」で発表された、人口増加や公害など都市が脅かされている諸問題にまつわるリポートをお届けする。
記事トップの写真:ドバイでは、2020年までにブロックチェーンを活用した世界初の都市となることを目指している ©MarekKijevsky
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