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CULTURE

大友啓史監督が語る、映像クリエイターはいかに世界で戦うべきなのか?:「LEXUS SHORT FILMS」ワークショップレポート

2018.01.26 FRI
大友啓史監督が語る。映像クリエイターは、いかに世界で戦うべきか?:LEXUS × SSFF & ASIA 少数精鋭ワークショップ

映画監督の大友啓史氏とSSFF & ASIAの諏訪慶氏を講師に招いて行われた、「LEXUS SHORT FILMS」の実践型ワークショップ。そこで語られた言葉には、日本の映像クリエイターが世界に出て活躍するためのヒントが無数に秘められていた。

(読了時間:約6分)

Photograph by Junichi Higashiyama
Text by Shunta Ishigami

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広がるショートフィルムの可能性

いま、映像制作は大きな変革の時代を迎えている。誰もがドローンやアクションカメラのような新たな撮影デバイスを利用できるようになり、NetflixやHuluのように従来とは異なるプラットフォームが登場したことで映像コンテンツのあり方は急速に多様化した。さらにはVRやARといったテクノロジーも生まれ、映像がもつストーリーテリングの可能性はますます豊かになっている。

そんな時代にあって、いまクリエイターはどのような映像をつくり、世界へ発信してゆくべきなのか。レクサスは「ショートフィルム」というフォーマットに着目し、「LEXUS SHORT FILMS」と題した若手クリエイターを支援するプログラムを実施してきた。2013年から始まった本プログラムは、アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア2017(SSFF & ASIA)」による全面サポートを特徴としており、これまでの受賞作品は世界各地の映像フェスティバルで多数の賞を受賞するなど、華々しい成果を収めてきた。

2017年に、レクサスは世界を目指す若手映画監督の支援を目的に10月と12月の2回にわたりワークショップを開催。本プログラムの一環として実施されたワークショップの講師を務めたのは、映画『るろうに剣心』シリーズや『3月のライオン』で知られ、世界的に活躍する映画監督の大友啓史氏だ。「少数精鋭ワークショップ:意思を力にする2日間 大友啓史監督と考える、あなたの世界戦略」と題された2日間のワークショップには20名の若手映像クリエイターが参加し、与えられた課題をもとに制作した作品への講評のほか、SSFF & ASIAによる世界の映画祭に関するレクチャーなど充実のプログラムが行われた。
ワークショップの会場となったのは、INTERSECT BY LEXUS TOKYO。
ワークショップの会場となったのは、INTERSECT BY LEXUS TOKYO。

世界で活躍するための「戦い方」

果たして、映像クリエイターはいかなる「世界戦略」を講じるべきなのだろうか? SSFF & ASIAのチーフプロデューサーを務める諏訪慶氏は次のように語る。

「企業のブランディング手法としても注目されるなど、ショートフィルムの可能性が急速に拡大してきています。そればかりか、『ラ・ラ・ランド』のデイミアン・チャゼル監督がそうだったように、短編作品が長編デビューへのきっかけになることもあります」

しばしばショートフィルムは低予算・小規模なものとして長編映画の下位に位置づけられることがあるが、動画配信プラットフォームの整備された現代においてはむしろショートフィルムの方が魅力を発揮するチャンスは多い。さらに、第33回サンダンス映画祭ショートフィルム部門で日本作品である『そうして私たちはプールに金魚を、』がグランプリを受賞するなど、近年日本をはじめとするアジアの短編作品は欧米の映画祭でも大きな注目を浴びているのだという。
SSFF & ASIAの諏訪慶氏。SSFF & ASIAでは映画祭への出品支援も行っているという。
SSFF & ASIAの諏訪慶氏。SSFF & ASIAでは映画祭への出品支援も行っているという。
日本の短編作品が世界から注目を浴びる一方で、まだまだ世界での「戦い方」を知らない日本人クリエイターが多いのも事実だと諏訪氏は語る。「海外の映画祭では社会問題を扱う作品が評価されることが多いんです。社会問題をどうエンターテインメントに昇華させるか。日本の人々はその意識が足りていないように感じます」。それだけでなく、作品をどう世界に届けるかという点においても日本人クリエイターには問題が残されているという。

「世界最大の規模を誇るクレルモン・フェラン短編映画祭を見てみると、韓国は日本の5〜6倍もの作品を出品しています。無料でエントリーできる映画祭もありますし、海外に出れば各国から助成金を得るチャンスも生まれるのにもったいない」。そう諏訪氏は語り、まずは映画祭へのエントリーというかたちで世界に踏み出す重要性を説いた。
ワークショップの様子。当日は、自分が今後どんな映像作家になるか宣言する時間も設けられた。
ワークショップの様子。当日は、自分が今後どんな映像作家になるか宣言する時間も設けられた。

「つくる」ことと「伝える」こと

今回のワークショップに集まった20名のクリエイターもまた、世界で戦おうとする者たちだ。課題作品の制作にあたり、企画段階から講評に携わってきた大友氏が指摘したのも「社会性」の問題だ。

「単に自分がやりたいことをやるのではなく、自分のやりたいことがいまの世の中になぜ必要なのか問い詰める作業が必要です。なぜいまその物語が必要なのか考えなければいけない。日本は職人文化やオタク文化がベースにあるからか、『伝える』ことより『つくる』ことに重きが置かれがちですよね。その文化があったからこそガラパゴス的な独自性を発揮できたともいえますが、一方ではクリエイターが社会性を欠いてしまう問題もある」
映画監督の大友啓史氏。かつてNHKで働いていた経験が、社会的な視点を育んでくれたと語った。
映画監督の大友啓史氏。かつてNHKで働いていた経験が、社会的な視点を育んでくれたと語った。
かねてより若手育成に力を入れてきた大友氏はそう語り、今回のワークショップにも積極的な姿勢で臨んだ。参加者の作品はすべて3回ずつ観てきたと語り、テーマ設計や構成など、至らない部分には極めて実践的なアドバイスを送り、可能性を感じた作品には素直に賛辞を捧げる。参加者のひとりは、「こんな機会はめったにないので、とても嬉しいです。自分の作品だけじゃなく、ほかの参加者へのアドバイスも非常に参考になりました」と感想を述べた。

今回のワークショップは、単に作品をブラッシュアップするのではなく、クリエイターに社会性をインストールする場としても機能しているのかもしれない。「社会性という意味では、レクサスのような企業がこうしたワークショップを行うのは非常に素敵なこと。それにいまは色々なプラットフォームが増えたので社会に届けやすい状況は生まれてきていると感じます」と大友氏が語るように、クリエイターが置かれた状況は大きく変わってきている。
ワークショップ後に開かれた懇親会には大友氏も参加し、熱く議論を交わす参加者の様子が見られた
ワークショップ後に開かれた懇親会には大友氏も参加し、熱く議論を交わす参加者の様子が見られた

続けることの重要性

確かに、インターネットがない時代と比べれば、現代は遥かにクリエイターが社会と繋がりやすい。クリエイターの方から積極的にアプローチせずとも、世界の方が作品を「発見」してくれるという事例も近年ではそう珍しいものではなくなった。一方で、実はクリエイターのすべきことは変わっていないのだと大友氏は続ける。

「新しいプラットフォームが増えたことでアウトプットのチャンスが増えたようにみえるけど、実際はそこに極めて多くの人が集まるからかえって競争は激化している。弱肉強食の世界だし、結局そこで役立つノウハウは既存のテレビ・映画業界で築き上げられたものだったりする。だからこそ、クリエイターは技術を磨いて面白いものをつくることを考えた方がいい。若い人たちも色々なものを見て、誰もやっていないことやストーリーを考える訓練を続けるしかないと思います」

映像のあり方が多様化したからこそ、かえって求められるスキルはシンプルになるのかもしれない。「結局ぼくらはコツコツつくり続けるしかない。楽な道はないんですよ」と大友氏は笑う。

大事なのは、面白いものをつくり続けること。それは昔から変わっていないかもしれないが、大友氏や諏訪氏が「自分たちの若いころはこんなワークショップなんてなかった」とこぼすように、クリエイターにとってのチャンスは日々増え続けている。機は熟した。あとは頭と手を動かして作品をつくり、それを世界に届けるだけなのだ。

大友啓史

1966年岩手県盛岡市生まれ。慶應義塾大学法学部卒。90 年NHK入局。秋田放送局を経て、97年から2年間LAに留学、ハリウッドで脚本や映像演出を学ぶ。帰国後、連続テレビ小説『ちゅらさん』シリーズ、『ハゲタカ』、『白洲次郎』、大河ドラマ『龍馬伝』等を演出、映画『ハゲタカ』(09)監督を務める。2011年4月NHK退局、株式会社大友啓史事務所を設立。
同年ワーナー・ブラザースと日本人初の複数本監督契約を締結。『るろうに剣心』(12)、『プラチナデータ』(13)を公開。
『るろうに剣心 京都大火編/伝説の最期編』は14年度の実写邦画No.1ヒットを記録。その後も『秘密 THE TOP SECRET』(16)、『ミュージアム』(16)、『3月のライオン』二部作(17)など、話題作を次々と手がける。2017年には電通との合資会社「OFFICE Oplus」を新たに立ち上げ、海外での映像制作も視野に活動を続けている。

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