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TECHNOLOGY

バーチャルとリアルをつなぐ小さなロボットが、
子どもの想像力の未来をつくる

2017.11.24 FRI
バーチャルとリアルをつなぐ小さなロボットが、子どもの想像力の未来をつくる

小学館が12月に発行を予定している雑誌『小学8年生』が、いま注目を集めている。付録としてついてくる小さなロボットが、次代を担う子どもたちの教育にイノベーションを与える可能性が秘められているというのだ。

(読了時間:約5分)

Text by Ryo Inao(lefthands)
Photographs by Isamu Ito
Edit by Keisuke Tajiri

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ハードウェアとソフトウェアのプロフェッショナルが出会って誕生した小さなロボット

ディスプレイ上を機敏に動き回るロボットの名前はTABO(ターボ)。株式会社バスキュールとプログレス・テクノロジーズ株式会社によって結成されたクリエイティブチーム、touch.plus(タッチプラス)によって開発された、手のひらに乗る小さなロボットだ。

ソフトウェアとハードウェア、得意分野を異にする2社が互いの蓄積してきた経験を掛け合わせることでTABOは誕生した。「これまで広告コミュニケーションを中心に、インタラクティブなクリエイティブを追求してきました。この分野ではある程度の実績を収めたという実感と同時に、スクリーンの中での表現に限界を感じていました。そんな折、プログレス・テクノロジーズさんと出会いました」と語るのはバスキュールのテクニカルディレクター中山誠基氏だ。ソフトウェアにおけるバスキュールの知見と、ハードウェアにおけるプログレス・テクノロジーズの実現力が、スクリーンの上を動き回る、世界でも類を見ない不思議なロボットを生んだのだ。
音に合わせてTABOが自在に動き回る。ピンポンなどのゲームやプログラミングソフトなどアプリの幅は多彩
音に合わせてTABOが自在に動き回る。ピンポンなどのゲームやプログラミングソフトなどアプリの幅は多彩
小学校でのプログラミング課程の必修化が2020年に控えているが、その方法をいかにするかは、まだ議論の只中だ。そうした中、小学館は両社がつくるTABOにプログラミング教育の未来を切り拓く可能性を見出し、2017年12月発売の『小学8年生』特別号の付録というかたちで“TABO8”を発表した。(価格は19,800円と、いわゆる付録よりも高価格だが)

子どもたちに必要なのは大人が想像できないような体験

VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の技術が一般化した昨今、スクリーンを使った表現には目を見張るものがある。「しかし、次代を担う子どもたちにはスクリーンのなかでは収まらない新たな体験が必要です。生まれたときから目の前にスマートフォンやタブレット端末があって、インタラクティブな体験をしている子どもたちは、大人がこれまで見てきたものとは違う世界に生きています。そうした中で彼らにとってスクリーン上での表現や、必修課程としてのプログラミングの授業はつまらないものになるかもしれない」とプログレス・テクノロジーズの小西享氏は警鐘を鳴らす。
プログレス・テクノロジーズの小西氏と(左)とバスキュールの中山氏(右)
プログレス・テクノロジーズの小西氏と(左)とバスキュールの中山氏(右)
子どもたちの興味を誘い、プログラミングを通して論理的思考力や物づくりへの気づきを得てほしいという文部科学省の意図を実現させるには、工夫が必要となる。しかし、これまでにリリースされてきたスクリーン内で完結するツールでは、プログラミングの授業と同じく子どもたちにとって退屈そのものとなるだろう。

そこにひとつの解を提案するのがTABOの存在だ。スクリーン内のバーチャルな世界で組んだプログラムが、リアルな世界にインタラクティブなものとして瞬時に実現される。ここに未知なる体験を呼び起こすというわけだ。

「子どもに限らず、スクリーンに集中しているときの人々の表情は真顔であることが多いですが、不思議なことにスクリーン上のTABOの動きを目で追う人々の顔には、笑みや驚きの表情が出るんです。そしてスクリーンだけではすぐに離れてしまう子どもでも、リアルなものがあると何時間も飽きずにずっと遊んでいるんです。これは想像していなかった反応でした」
プログラミングの基礎を学べるアプリケーション。プログラムに合わせてTABOがリアルに動いていく
プログラミングの基礎を学べるアプリケーション。プログラムに合わせてTABOがリアルに動いていく
これこそが、中山氏の言う「スクリーンの中での表現の限界」を超えた瞬間だった。リアルな世界を生きる我々人間の感情を動かすのは、やはりリアルな存在というわけだ。スクリーンを破り、バーチャルの世界からリアルの世界に頭をひょっこりと出しているようにも見えるTABO。スクリーンの上で物理的に動くその姿はまさに、バーチャルとリアルの境界をなめらかにつなぐ案内人のよう。案内ロボットと会話しながら、プログラミングをインタラクティブに学べる。こうした体験ができる点こそ、TABOが日本のプログラミング教育の未来を切り拓く存在として注目を集める理由だ。
アイデアをすぐかたちにできる、プログレス・テクノロジーズのオフィスに設置されたプロダクト開発エリア
アイデアをすぐかたちにできる、プログレス・テクノロジーズのオフィスに設置されたプロダクト開発エリア
「今はIoTの必要性が叫ばれ、ITに取り組んできた人たちがハードを絡めようと躍起になり、逆にハードに特化した人たちがITと絡めようと躍起になっています。そんな入れ違った現代の状態が吹っ飛ぶような、賢い大人たちが想像もできないような新たな時代が来るはずです。TABOは開発者向けキット(SDK)も配布する予定ですので、そのきっかけとなれば」と小西氏と中山氏は、TABOから生まれるイノベーションに期待を寄せる。

「TABOに触れた子どもたちに、創造の可能性の幅を知ってもらいたい。そしてそんな子どもたちに、我々では考えもしないようなイノベーションを生む、次代のモンスターになってほしい」と両氏は目を輝かせる。TABOが本当に次代を担う子どもたちの教育にイノベーションを与えることができるかどうか。ぜひその可能性に期待したい。
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