JOURNEY

石巻市雄勝町の
体験型宿泊施設「モリウミアス」。
子どもたちの未来はここから創られていく

2017.08.02 WED
JOURNEY

石巻市雄勝町の
体験型宿泊施設「モリウミアス」。
子どもたちの未来はここから創られていく

2017.08.02 WED
石巻市雄勝町の体験型宿泊施設「モリウミアス」。子どもたちの未来はここから創られていく
石巻市雄勝町の体験型宿泊施設「モリウミアス」。子どもたちの未来はここから創られていく

石巻市の体験型宿泊施設「モリウミアス」に、世界中の子どもたちが集まっている。教材は豊かな自然とそこで暮らす人々だ。2017年1月には、大人の協働宿泊施設「モリウミアス アネックス」をオープン。子どもと大人の地域交流から、豊かな未来が見えてくる。

(読了時間:約5分)

Text by Shota Kato 
Photographs by Takuya Nagamine

復興の一環として有識者らと5,000人以上のボランティアが取り組んだ廃校のリノベーション

宮城県北東部に位置する石巻市雄勝町。豊かな森と海に恵まれたリアス式海岸の町に、築90年以上の廃校、桑浜小学校をリノベーションし、世界中の子どもたちに開かれた新たな学び場がある。子どもたちと地域の明日をつくっていく。そんな次世代と雄勝町の未来への想いが込められた場所、「モリウミアス(MORIUMIUS)」だ。
廃校をリノベーションしたモリウミアスの校舎。地域の人々を招いて交流会も行われている
廃校をリノベーションしたモリウミアスの校舎。地域の人々を招いて交流会も行われている
モリウミアスがオープンしたのは2015年7月。東日本大震災以降、企業ボランティアを含む多くの人々が足を運び、校舎に流れ込んだ泥かきにはじまり、家曳職人の手を借りては校舎全体をジャッキアップし歪みを直すなど、毎週末に学校再生のプロジェクトが行われてきた。訪れたボランティアの総数は2年半で5000人以上にも及ぶ。
渡り廊下もほぼそのままの形で活用。滞在する子どもたちは何度もここを駆け抜ける
渡り廊下もほぼそのままの形で活用。滞在する子どもたちは何度もここを駆け抜ける
パーマカルチャーの理論に基づいた設計された、バイオジオフィルターと呼ばれる浄化水装置
パーマカルチャーの理論に基づいた設計された、バイオジオフィルターと呼ばれる浄化水装置
自然と調和する木造建築を生かしたデザインプランは、隈研吾氏や手塚貴晴氏をはじめとする建築家と、スタンフォード大学などの建築学生たちのデザインワークショップから開発された。東京駅の丸の内駅舎と同じ雄勝石(おがついし)の屋根は、もともとこの校舎で使われてきたもの。建築基礎の木材などもなるべく生かしながら、古き良き桑浜小学校のたたずまいを残しつつ、宿泊施設として求められる快適さと強度を確保してリノベーションされている。

サステナブルをテーマに、たくましく成長していく子どもたち

子どもたちの受け入れを始めて以来、モリウミアスにはつねに無邪気で元気な声が響き渡っている。大切にしているテーマはサステナブルだ。共同生活をともにするメンバーたちと食物を収穫して調理。余った食物は家畜の餌となって土に還される。生活排水を自然浄化して植物と生き物を育てるなど、子どもたちは1泊2日 / 2泊3日、7泊8日などの滞在を通じて、そうした自然の循環と命、そこでの生き方を学び、たくましく成長していく。
地元漁師とともに雄勝湾の上でホタテやホヤ漁を体験。初めて目にする海の幸の収穫に興奮
地元漁師とともに雄勝湾の上でホタテやホヤ漁を体験。初めて目にする海の幸の収穫に興奮
校舎にはガーデンキッチンが設置されている。米を炊いたり作物や海の幸を包丁で切ったりする子どもたち
校舎にはガーデンキッチンが設置されている。米を炊いたり作物や海の幸を包丁で切ったりする子どもたち
自分たちでつくったものに加えて、モリウミアスのキッチンスタッフ謹製の特別料理が振る舞われる
自分たちでつくったものに加えて、モリウミアスのキッチンスタッフ謹製の特別料理が振る舞われる
そのほかにも、校舎の裏山でのこぎりを使った木の伐採・植樹、地元漁師が伝える海の上でのホヤ・ホタテ漁、澄みきった川に入っての沢登りなど、雄勝の自然を満喫する体験プログラムを考案したのは、モリウミアスの代表としてフィールドディレクターを務める油井元太郎氏。子ども向けの職業体験型テーマパーク「キッザニア」を日本国内に立ち上げた人物である。

「モリウミアスで過ごす子どもたちは、普段の生活とは違った経験から我慢する力が付いたり自信が芽生えたりと、日毎に表情が輝いていきます。親御さんは帰ってきた我が子からたくましさを感じるはず。そういった自発的な成長機会を子どもたちに提供していくことで、よりよい未来を作っていきたい。ここで学んだことを生かすことで、子どもたちの生きていく力が底上げされてほしいと願っています」
モリウミアスの代表であり、フィールドディレクターを務める油井元太郎氏
モリウミアスの代表であり、フィールドディレクターを務める油井元太郎氏

子どもたちと地域の未来のためには、さらなる大人たちの関わりが必要

かつて約4300人だった雄勝町の人口は震災の影響で1000人以下までに減ってしまったが、モリウミアスができたことをきっかけに、地域の交流人口は増え続けている。子どもと街をよりたくましく、そして豊かにしていきたい。そのためには、もっと多くの大人たちが雄勝の町に関わることも必要と考え、2017年1月には別館施設として、大人の協働宿泊施設「モリウミアス アネックス」が誕生した。
モリウミアスアネックスの外観。ウッドボイラーや太陽熱温水器などの自然エネルギーを利用している
モリウミアスアネックスの外観。ウッドボイラーや太陽熱温水器などの自然エネルギーを利用している
大人たちは中村好文氏が設計した宿泊施設を舞台に、主には家族連れで訪れる保護者が寛ぎ、企業が研修やオフサイトミーティングに取り組むこともできる。リモートワークのベースとして個人でモリウミアスアネックスに滞在するのもいいだろう。雄勝の豊かな自然に囲まれながら、仕事の合間には地元の人々や子どもたちとふれあう。仲間たちと自炊したり語らいあったり、モリウミアスアネックスでの滞在は、きっと普段の環境とは別の角度からアイデアをもたらしてくれるだろう。
4名定員の客室を5部屋完備。ツインベッドとソファ、オーガニックコットンの寝具とリネンを用意している
4名定員の客室を5部屋完備。ツインベッドとソファ、オーガニックコットンの寝具とリネンを用意している
食事や仕事、ミーティングに活用するスタジオとキッチン。Wi-fi、プリンター、プロジェクターを完備
食事や仕事、ミーティングに活用するスタジオとキッチン。Wi-fi、プリンター、プロジェクターを完備
また滞在オプションとして、子どもたちの豊かな学び場づくりや、町民と交流し町の活性化に関わるワークショッププログラムに参加することもできる。大人も雄勝を訪れ、地域と関わってみてほしい。子どもたちが雄勝の自然と人々から多くのことを学んできたように、きっと、これからの生き方や働き方のあるべきカタチが見えてくるはずだ。
モリウミアス / モリウミアス アネックス
宮城県石巻市雄勝町桑浜字桑浜 60
※ 宿泊に関する問い合わせは各ウェブサイトの予約ページより
http://moriumius.jp
http://moriumius.jp/annex

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