VISIONARYMAGAZINE BY LEXUS

CULTURE

世界初、ハンドドリップ日本茶専門店
「東京茶寮」の飽くなき挑戦

2017.07.31 MON
世界初、ハンドドリップ日本茶専門店「東京茶寮」の飽くなき挑戦

2017年1月5日に三軒茶屋にオープンした日本茶専門店「東京茶寮」。私たちが普段何気なく飲んでいる日本茶を再解釈し、コーヒー店のバリスタさながらにハンドドリップで淹れるというスタイルで話題に。新しい日本茶専門店に見るデザインの力とは。

(読了時間:約6分)

Text by Shota Kato 
Photographs by Takuya Nagamine

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固定観念にとらわれない「日本茶の世界に独自の体験を」。

ブラックとコンクリートを基調としたシンプルでモダンなファサード。モルタルと白木と鉄でミニマルに構成された店内の中央には、コの字型のカウンターのみ。カウンター越しにはバリスタが立ち、そばにはコーヒードリッパーが複数置かれている。ここはいわゆるサードウェーブ系のコーヒーショップ?いや、そうではない。「東京茶寮」は世界初となるハンドドリップ日本茶専門店なのだ。
「東京茶寮」のシンプルなファサード。店名ロゴが映えるデザイン
「東京茶寮」のシンプルなファサード。店名ロゴが映えるデザイン
真っ白な空間のなか、バリスタがコの字カウンターを舞台にハンドドリップで日本茶を振る舞う
真っ白な空間のなか、バリスタがコの字カウンターを舞台にハンドドリップで日本茶を振る舞う
「東京茶寮」が世田谷区三軒茶屋にオープンしたのは2017年1月5日。経営元はLUCY ALTER DESIGNというデザインカンパニーだ。デザイン会社が日本茶を事業化すること自体が特異であるが、なぜ伝統的な日本文化に足を踏み入れたのだろうか。代表の青柳智士氏と取締役の谷本幹人氏が答えてくれた。

「僕らはデザイン会社でありながら、プロダクトを作っていくということをやりたかったんです。世界的に拡大しているマーケットの中から嗜好品に注目しました。その中で、もっとも可能性を確信したのが日本茶です。日本茶が面白いのは、茶道という伝統的な世界がある一方で、ペットボトルという利便性と合理性を突き詰めた企業論理の世界もあるということ。そのあいだの余白としてポテンシャルを感じたのが、緑茶葉でお茶を淹れるという世界観なんです。そこに独自の体験を形にしようということで、日本茶をハンドドリップで淹れるというスタイルに辿り着きました」(谷本氏)
使われている道具のほとんどが青柳氏と谷本氏がデザインする、green brewingのアイテム
使われている道具のほとんどが青柳氏と谷本氏がデザインする、green brewingのアイテム
「東京茶寮」を経営するLUCY ALTER DESIGNの青柳智士氏(左)と谷本幹人氏(右)
「東京茶寮」を経営するLUCY ALTER DESIGNの青柳智士氏(左)と谷本幹人氏(右)
青柳氏と谷本氏は「東京茶寮」を始めるにあたり、固定概念にとらわれずに一次産業の現場へアプローチ。九州や静岡などの生産者を訪ねたり、市場に足を運んだりすることで、農家の後継者問題や伸び悩む売上問題に直接触れることができた。

「コーヒー豆のトレーサビリティのように、どこの産地のどこの畑というところまで追いかけて話を聞きに行きました。それを繰り返して見えてきたのは、現在の一次産業を支える方たちの中には、僕らと同じ30〜40代が多いということです。自分たちと近しい世代と意気投合できたことは大きかったですね。農家の方たちは僕らのスタンスを邪道と感じて非協力的かもしれないと心配した部分もありましたが、ふたを開けてみたら、まったくそんなことはなく。茶葉の提供から情報交換まで、良いお付き合いをさせていただいています」(青柳氏)

ハンドドリップから茶葉に新たな活路を

コーヒーは産地や銘柄、焙煎によってフルーティーだったり、マイルドだったりと、味の違いを楽しむスタイルが根付いている。もちろん日本茶にも同じような味の違いはあるが、ペットボトルのお茶を飲み比べるのは一般的な楽しみ方ではない。なぜならば、ペットボトルのお茶は喉の渇きを潤すことを意識して飲まれてきたからだ。

「今まで日本茶は定性的に、なんとなく美味しい、ほっとすると言語化されてきたと解釈しています。その感覚的なものを整理して体系化すると、僕らはお茶を飲むという時間にもっと向き合えるはずだと考えたんですね。そこにハンドドリップを浸透させていくことで、茶葉の新たな活路を見出していけると感じています」(青柳氏)
メニューは煎茶2種飲み比べセット + お茶菓子。煎茶は3煎まで味わうことができる。税込1,300円
メニューは煎茶2種飲み比べセット + お茶菓子。煎茶は3煎まで味わうことができる。税込1,300円
「東京茶寮」の空間は、茶室を現代的に再解釈して設計されている。真っ白い空間の中で展開されるのはお茶と、それを提供するバリスタというシンプルな構成。ミース・ファンデル・ローエの「Less is more.」の発想で作られているが、ハンドドリップという提供方法をはじめ、茶器の提案や3煎目に玄米を選択できるなど、コンテンツにお茶の新たな楽しみ方を知るためのさまざまな入り口が仕掛けられている。

「お客様とは容器や茶葉の提案をきっかけに、お茶にまつわるライフスタイルを一緒に考えていくという概念も共有していきたいです。インタラクティブな関係を構築するためには、ワークショップのような体験会も企画していきたいと考えています」(谷本氏)
店頭販売用の茶葉のパッケージもデザイン。シンプルでミニマルなアプローチが光る
店頭販売用の茶葉のパッケージもデザイン。シンプルでミニマルなアプローチが光る
伝統的な茶屋の茶箱も「東京茶寮」のテイストに合わせてデザイン
伝統的な茶屋の茶箱も「東京茶寮」のテイストに合わせてデザイン

「東京茶寮」が再認識させてくれたデザインの力

青柳氏と谷本氏が追い求めたい理想、それは日本茶をハンドドリップで楽しむことから、大衆的なカルチャーを作っていきたいということだ。「日常に溶け込んでこそ、カルチャーは作られていく」と信じてやまない二人にとって、「東京茶寮」はデザインの力を再認識するきっかけになっているという。

「モノが溢れている世の中で、消費者はより嗜好性の高いものを好むようになり、質の高いライフスタイルの基準が変わってきていると感じています。そんな豊かさに投資する精神世界に、僕らは『東京茶寮』を通じて自分たちなりのテーゼを打ち出していけるんじゃないかなと思っています」(青柳氏)

「グローバルとローカル、どちらにおいても日本茶を理解しているデザイナーはなかなかいませんし、お茶は周辺にあるモノコトを含めて有利な輸出商材だと思います。所作や体験からプロダクトまで、もっとデザインの力で新しいことを表現できるのは間違いありません。秋ごろにはリデザインされた急須をリリースする予定なのですが、お茶に合う食べ物、器、その他諸々へと広げていけば、大日本市が開けるかもしれないですし、お茶の深度は計り知れませんね。お茶と近しい構造の作物・産業はほかにもあるので、それらに対するアプローチも広げていきたいです」(谷本氏)
カウンター席ではお茶を味わえるだけでなく、それまでのプロセスを目の前で確かめることができる
カウンター席ではお茶を味わえるだけでなく、それまでのプロセスを目の前で確かめることができる
お茶の蒸らし時間は1分20秒。この砂時計は1分20秒専用に特注したもの
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日本茶専用ドリッパー「GREEN DRIPPER」。銅と白木の組み合わせがモダンな印象を醸している
日本茶専用ドリッパー「GREEN DRIPPER」。銅と白木の組み合わせがモダンな印象を醸している
バリスタの一つひとつの美しい所作もじっくりと堪能してほしい
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東京茶寮
東京都世田谷区上馬1-34−15
営業時間:13:00〜20:00(平日) / 11:00〜20:00(土日祝)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日休み)
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