オートクチュールの「民主化」をヴィジョンとして掲げる「YUIMA NAKAZATO」のコレクション
2016年、日本人としては実に12年ぶりとなるオートクチュールコレクションの公式ゲストに選出されたファッションブランドの「YUIMA NAKAZATO」。単にオートクチュールに参入しただけでなく、日本ならではのクラフトマンシップと3Dプリンティングをはじめとする最新テクノロジーを掛け合わせたクリエイションは話題を呼び、国内外から大きな注目を浴びた。今年7月に3度目のオートクチュールコレクションを発表するYUIMA NAKAZATOは、その先に何を見据えているのか。
「YUIMA NAKAZATOとしては、オートクチュールにファッションの未来を見ているんです。オートクチュールは究極の一点物をつくるサービスですが、テクノロジーによってコストの概念が変わればそれがマス化する可能性がある。そんな仮説を立てて、オートクチュールに取り組んだのがちょうど1年前のことです」
そう語るのはYUIMA NAKAZATOのデザイナー、中里唯馬氏だ。オートクチュールの「民主化」をヴィジョンとして掲げる中里氏は、毎シーズンそのヴィジョンに向かって挑戦を重ねてきた。1回目のコレクションではバラバラの「パーツ」によって組み立てられた洋服をつくり出し、2回目のコレクションではパーツを自由に組み替えることで、サイズ調整を着る人に応じて行うことに成功した。3Dプリンターを使うため、これまでは使用できる素材に制約があったが、3回目となる今年7月のコレクションでは新たな素材に挑戦するのだという。
そう語るのはYUIMA NAKAZATOのデザイナー、中里唯馬氏だ。オートクチュールの「民主化」をヴィジョンとして掲げる中里氏は、毎シーズンそのヴィジョンに向かって挑戦を重ねてきた。1回目のコレクションではバラバラの「パーツ」によって組み立てられた洋服をつくり出し、2回目のコレクションではパーツを自由に組み替えることで、サイズ調整を着る人に応じて行うことに成功した。3Dプリンターを使うため、これまでは使用できる素材に制約があったが、3回目となる今年7月のコレクションでは新たな素材に挑戦するのだという。
「技術的には進化していても、テキスタイル・糸・針という洋服を構成する三つの要素は数百年前から変わっていないんです。この三つの要素が変わらなければコストの概念も変わらないことに気づいて、洋服をパーツ化するという発想に行き着きました。パーツ化すれば、より簡単に一人ひとりに合わせたカスタマイズができるようになる。それは着る人に合わせてパターンをつくるオートクチュールのあり方とも連動しています。
しかも、サイズが変えられるから着物のように子孫にも受け継いでいける。デザイナーとしてサステナビリティやリサイクルについて考える上でも、人生とともに洋服がずっとあり続けるという新しいプロダクトのあり方をつくり出せるのではないかと考えています。
そのヴィジョンをどこで発表するべきか考えたときに、コレクションのなかで最も歴史があるオートクチュールという舞台が一番いいのではないかと思ったんです。最も歴史ある舞台で、最も未来的なファッションのヴィジョンを発表するのがいいんじゃないか、と」
しかも、サイズが変えられるから着物のように子孫にも受け継いでいける。デザイナーとしてサステナビリティやリサイクルについて考える上でも、人生とともに洋服がずっとあり続けるという新しいプロダクトのあり方をつくり出せるのではないかと考えています。
そのヴィジョンをどこで発表するべきか考えたときに、コレクションのなかで最も歴史があるオートクチュールという舞台が一番いいのではないかと思ったんです。最も歴史ある舞台で、最も未来的なファッションのヴィジョンを発表するのがいいんじゃないか、と」
オートクチュールに最新のテクノロジーと日本ならではのクラフトマンシップを持ち込みたい
ファッションの歴史を更新せんとする中里氏の取り組みは非常に刺激的だが、彼が思い描く「民主化」というヴィジョンはこれまでオートクチュールが保持してきた、「権威」を脅かしかねないものでもある。その「権威」とは「それが不可侵だからこそ生まれる特権性」にあるともいえる。そのようなオートクチュールに参入していくなかで、オートクチュール協会とのあいだに齟齬は生まれなかったのだろうか。
「どちらかというと、やはりオートクチュールは伝統を守るというムードが強いですね。古き良き美意識を守るのがオートクチュールであり、それゆえに存続してきたという側面もある。その伝統に対してリスペクトする一方で、今の世の中とどうやって連動すべきかは考えなければならないと感じています。初めてオートクチュール協会へ挨拶に行ったとき、日本人デザイナーが長らく参加していなかったので興味を持ってくださいました。同時に、日本人として何を持ってきてくれるのかということをすごく問われたんです。そこで最新のテクノロジーと日本ならではのクラフトマンシップを持ち込みたいという話をして、1回目のコレクションにつながっていきました」
こうして12年ぶりの日本人デザイナーとしてオートクチュールコレクションに参入した中里氏だったが、一方で現状のシステムに限界も感じていた。
「過去2回のコレクションでは、オートクチュールのこれまでのフォーマットや暗黙のルールに即すことを意識してきました。それが受け入れられたと思いましたが、一方で新しい思想やヴィジョンを持ち込んでいるので、昔からのフォーマットではどうしても伝えきれない部分があると感じていて。だから、ファッション業界に受け入れられるかまだ分かりませんが、次のコレクションでは我々のコンセプトに合った全く新しい見せ方に挑戦するつもりです」
こうして12年ぶりの日本人デザイナーとしてオートクチュールコレクションに参入した中里氏だったが、一方で現状のシステムに限界も感じていた。
「過去2回のコレクションでは、オートクチュールのこれまでのフォーマットや暗黙のルールに即すことを意識してきました。それが受け入れられたと思いましたが、一方で新しい思想やヴィジョンを持ち込んでいるので、昔からのフォーマットではどうしても伝えきれない部分があると感じていて。だから、ファッション業界に受け入れられるかまだ分かりませんが、次のコレクションでは我々のコンセプトに合った全く新しい見せ方に挑戦するつもりです」
ホログラムや特殊素材など、目の前にある技術や素材を使うことで理想の未来を具現したい
YUIMA NAKAZATOのクリエイションはコレクションという枠組みから逸脱し、既存のシステムを更新しようとする。その先には一体どんな世界が待っているのか。そこでは、ファッションデザイナーの役割も今とは異なっているに違いない。
「いずれは誰もが3Dプリンターを使って洋服をカスタマイズできるようになり、人工知能がデザイナーの代わりにお客様に洋服を提案することが可能になる。将来的には、デザイナーの仕事はコンセプトや物語をつくることに近づいていくんじゃないかと感じています。
「いずれは誰もが3Dプリンターを使って洋服をカスタマイズできるようになり、人工知能がデザイナーの代わりにお客様に洋服を提案することが可能になる。将来的には、デザイナーの仕事はコンセプトや物語をつくることに近づいていくんじゃないかと感じています。
そこで自分が語りたいと思っているのは『人類の未来』です。そしてその核にあるのが『自然』だと思っています。社会背景や価値観が変わったとしても、自然を美しいと思う感覚は変わらないんじゃないかなと。どうすれば普遍的な自然が生み出す感動を再現できるのか。ホログラムや特殊素材など、目の前にある技術や素材を使うことで理想の未来を具現したい。そのチャレンジは続けていきたいと思っています」
そう語る中里氏の後ろで、YUIMA NAKAZATOのドレスは光を受け煌々と輝いている。私たちがそこに見出しているのは、もしかしたら「未来の自然」がたたえている美しさなのかもしれない。
そう語る中里氏の後ろで、YUIMA NAKAZATOのドレスは光を受け煌々と輝いている。私たちがそこに見出しているのは、もしかしたら「未来の自然」がたたえている美しさなのかもしれない。
INTERSECT BY LEXUSレクサスが提供する新たな才能と才能が出会う場所