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CULTURE

現代社会が抱える食料問題
「フードロス」に挑む、リバースプロジェクト

2017.05.17 WED
現代社会が抱える食料問題「フードロス」に挑む、リバースプロジェクト

全米で最も住みやすい都市として選出されることもある「オレゴン州ポートランド」。そこで育まれるマインドに共感を示し、フードロスの削減など、社会課題の解決を試みている「リバースプロジェクト」代表の亀石太夏匡氏に、その取り組みについて聞いた。

(読了時間:約4分)

Text by Keisuke Tajiri
Photographs by Shuntaro

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食料問題の解決が本質的な豊かさを生み出す

「日本でポートランド的な動きが起きるようになった背景には、2011年の東日本大震災があると考えらます。生きるとは何か、豊かさとは何か。これまで漠然と考えていたことが震災をきっかけに、現実問題として目の前に突きつけられたんです」。こう話すのは、「リバースプロジェクト」代表の亀石太夏匡氏だ。

2010年に立ち上がったリバースプロジェクトは、東日本大震災発生直後から、被災地への救援物資の提供や炊き出しなど、直接的支援活動行う一方で、「人類が地球に生き残るために」をキーワードに、アーティストやクリエイターらとともに、現代社会に潜む課題をクリエイティブな視点から解決を試みている。
規格外のトマトを使った商品。売り上げの一部が開発途上国の子供たちに還元される仕組みづくりも行った。
規格外のトマトを使った商品。売り上げの一部が開発途上国の子供たちに還元される仕組みづくりも行った。
そして今、リバースプロジェクトがもっとも力を入れているのがフードロス問題だ。少子高齢化を迎え、社会は縮小タームに入り労働生産性が下がるとされるなかで、食糧の総生産量の1/3が捨てられている現実がある。「テクノロジーの進化で食の分野も大きく発展を遂げていますが、残念ながらテクノロジーでは雑草の一本さえも生み出せません。細胞を抜き取って増やすことはできても、無から命そのものは作れないんです。テクノロジーで生きやすい世の中になるかもしれませんが、人類が本質的に豊かになっていくためには、食糧廃棄を減らし、地球が作り出した資源を無駄にしないことが重要です」と、リバースプロジェクトは2年前からフードロスプロジェクトに取り組んでいる。

フードロスは、個人による食べ残しや賞味期限切れの食糧破棄のほか、豊作による生産調整や規格外品の除外など、社会システムに起因する食糧廃棄がある。こと個人においては間接的な働きかけしかできないものの、社会システムは人の手で変えられる可能性があると見込んだ亀石氏は、青果における日本一の規模を誇る大田市場に協力を仰ぎ、解決方法を探っていった。
高知県産の規格外野菜を都内企業の社員食堂で活用する「“E”REGULAR」プロジェクト。
高知県産の規格外野菜を都内企業の社員食堂で活用する「“E”REGULAR」プロジェクト。
着目したのは規格外の青果だ。店頭価格に影響が及ぶため、形の歪んだ規格外の青果を出荷することに否定的な意見を持つ農家は少なくない。通常のルートで規格外の青果は使えない、ならばと導き出したのが社食での使用だ。社食であればカットした状態で提供できる上に、仕入れコストも安くてすむ。さらにはフードロス削減に取り組む企業として、社会的責任を果たすことへと繋がると亀石氏は考えた。

さらにスキームを強固にするため、貧困にあえぐ人たちへ食材を寄付する、フードバンク団体との連携を図った。「社食のビジネスで得た利益を現地のフードバンク団体へ渡すことで、その土地で捨てていたものがその土地の未来をつくる子どもたちに使われるようになる。するとフードロスと貧困問題の2つの大きな社会課題を解決できるのではないかと、高知県知事に会いに行って、5月から高知のとある大企業とフードバンクでプロジェクトが実施することが決まりました。これが全国の都道府県に、ひいては世界に広がっていけば、大きなイノベーションになる」と亀石氏はその未来に期待を寄せる。
20代でブランドを立ち上げ、30代は映画製作に没頭。その時々で一番伝えたい想いを発信してきたと語る
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バーチャルにつながれる時代だからこそ、必要なリアルコミュニケーション

ポートランドにおける特徴の一つに、人と人との近い距離感が挙げられる。例えば日本でも近年行われるようになった、生産者と消費者を結ぶファーマーズ・マーケットにもその傾向が見て取れるように、ローカル色の強い付き合い方が好まれつつある。

「モノも情報もワンクリックで手に入り、SNSでバーチャルに繋がれる時代だからこそ、リアルなコミュニケーションを欲するようになってきたのではないでしょうか。一昔前は最新の音楽を知るためにレコード屋へ行って店員から情報を仕入れたり、海外へ行っては慣れない英語で会話したりすることで、その土地の文化や空気を知ることができました。今の時代からすると遠回りかもしれませんが、無駄とも思える時間を作る余裕を持つことが、次の時代に求められるのかもしれませんね」と亀石氏は分析する。
被災地の優れたモノを東京に。この想いから岩手県の世嬉の一酒造とともにオーガニックビールを開発
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そんな思いから、リバースプロジェクトは開かれたコミュニケーションの場として数年前にバーを開いた。事務所の地下1階にひっそりと佇む、大人の色香漂うバーだ。
「ここでは、お酒一杯で業種も年代も異なる人と会話ができる。考えてみたら日常生活ではなかなかないことですよね。かつては社交場として多くの人々が集い、情報交換していたように、ここでもインターネットでは手に入らない情報が手に入るはずです。ちょっといいお酒を口にして見知らぬ人と会話する。小さなことですが、これが豊かさをつくるきっかけになるのではないでしょうか」
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