CAR

「作品」としてレクサス LCを生産する
元町工場をリポート

2017.05.17 WED
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「作品」としてレクサス LCを生産する
元町工場をリポート

2017.05.17 WED
「作品」としてレクサス LCを生産する元町工場をリポート
「作品」としてレクサス LCを生産する元町工場をリポート

レクサスの新型ラグジュアリークーペ 「LC」。流麗なスタイリングやエモーショナルな走りにも増して注目すべきは、内外の極めて高いクオリティ。専用ラインを新設し、匠の技術によりつくられた。その生産の現場である元町工場をリポート。

(読了時間:約4分)

Text by Fumio Ogawa

スーパーカーLFAで培った匠の技を受け継ぐLC

「製品でなく作品」。レクサスLCが組み立てられている愛知・豊田市の元町工場の専用ライン。そこで責任者が発した言葉である。

天井から床まで真っ白に塗装した、それ自体がアートのインスタレーション(空間を使った作品)みたいだなあ。「LC」の組み立てラインを見るとまずそう思う。

白い空間の中、ゆっくりとベルトに乗って動くLCの車体。アートのようだが、「作品」とは常識をくつがえすほど組み立ての完成度を高めるという意味だそうだ。

そこが元町工場の面白さだ。工場というと一般的にはあまりピンとこないかもしれないけれど、話を聞くとじつに興味深いところである。

いい自動車が出来るかどうか。工場の役割は大きい。組み立てができなければ、どんなに設計が優れていてもこの世に送り出せない。

「私たちはLEXUSの設計者とじっくり話し合いました。いい自動車を作りたいという希望にできるだけ応えられるよう、製造や組み立ての現場から提案もしました」

LCの最終アセンブリーラインの見学をさせてもらったとき、工場の人はそう説明してくれた。

元町工場とLEXUSで思い出すモデルは何か。レースカーのような高性能モデル「LFA」だ。この凝ったつくりの自動車を送り出した場所でもある。

LFAは軽量部材を多く使っていて、その製造方法は現場の士気を大いに上げたそうだ。逆の書き方をすると頭を使わせたとなる。

CFRP(炭素繊維強化樹脂)の部品を作るために編み出されたのがRTM(樹脂注入成型法)。高品質の部品を精度高く短い時間で作る技術である。

LCではさらに進めて「高速RTM」となっている。スポーティな運動性能を追究したLCでは重心高を下げるためキャビンを軽くしなくてはならない。そのためCFRPのルーフを採用した。

元町工場ではCFRP製ルーフをできるだけ短時間で製造する技術を開発。それだけにとどまらず、綾織り模様まで入れてしまった。驚く技術力なのだ。

「それを実現できたのはLFAで培った匠の技があったからです」。現場の担当者は誇らしげにそう説明してくれた。

LEXUS 「LC」は、従来にない高い目標のもと生み出された

元町工場におけるLC組み立てラインで働いているのは、専門の訓練を受けた熟練工ばかりだそうだ。

能力の高さを背景に一人が担当する作業時間は20分。長い。結果そのあいだに行う作業数は通常の何倍にもなるという。

実際に見ていると、迅速な動きに感心する。しゃれたLEXUSのロゴ入りユニフォームに身を包んだ工員たちは、かなり動き回って部品を組み付けている。

さらにラインにはTAKUMI(匠)と呼ばれる技能士が8人。要所要所をきちんと管理する。先に触れたように、その過程でモノづくりへの新しい提案が出てきたりする。

「従来にない高い目標を掲げ、開発の仕組みを変え、新技術へのこだわりを持って取り組んだ結果生まれた自動車」

LCの開発を指揮した佐藤恒治チーフエンジニアはそう述べている。量産する予定はなかったというコンセプトカーとほとんど変わらないスタイリングも大変だったろう。

同時にレクサスの看板クーペだけに、操縦性でも従来とは一線を画した出来でなくてはならない。開発者たちがそう考えても不思議ではない。

新開発の後輪駆動用プラットフォームの出来のよさは操縦すればすぐ分かる。その背景にあるシャシーやサスペンションシステムなどを実現する技術はすごいものだ。

この項の冒頭でいい自動車は単に設計から生まれるのではないとした。いいスーツも精密腕時計も仕立てや組み立てで品質が左右される。それと同じということだ。

アセンブリーラインの最後は、床にまでLEDランプを埋め込んで微細なボディにわずかな歪みやへこみもないことを確認する艤装(ぎそう)検査ブースだ。

そこから出ていく自動車を見送るときの技能工(若いひとも多い)の表情は晴れやかだった。笑顔に見送られる自動車。素晴らしいではないか。
「TAKUMI(匠)」と呼ばれる技能士と専門のトレーニングを受けた熟練工がLC500の組み立てを担当
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1人の作業時間は長いが、腕のいい熟練工が組み立てることが肝要という
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工場内は真っ白でユニフォームも美しい
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塗装工場から送られてきたボディにパーツの組み付けがはじまる
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