VISIONARY

TECHNOLOGY

「CES 2017」でAIと自動車の融合が一歩先へ

2017.05.17 WED
「CES 2017」でAIと自動車の融合が一歩先へ

ラスベガスで開催された世界最大規模の家電イベント「Consumer Electronics Show(CES)」。昨今はAI技術の進化などにより自動車の存在感が増している。自動運転など最新テクノロジーにおける自動車のトレンドを読み解く。

(読了時間:約4分)

Text by Nobuyuki Hayashi

Photographs by Akio Lorenzo OYA

SHARE

この記事をシェアする

こちらの記事は音声でもお楽しみいただけます。

COLLABORATED WITH

注目を集めている最新テクノロジー「自動運転」

毎年年頭に開催される世界最大の家電見本市、「Consumer Electronics Show(CES)」は最新のテレビやスマートフォンからデジタルカメラ、エレキギター、おもちゃやその部品、サービスに至るまで、家電にまつわるあらゆるものが展示される巨大なイベントであり、その年のテクノロジーの動向を占う上で無視することができないイベントの1つだ。

そのCESでここ数年、「自動車の存在感が増している」と言われている。これがほかの展示会であれば、話題になるのは新型自動車のプロポーションの美しさであったり、乗り心地であったり、走行性能が話題の中心だが、CESはテクノロジーのイベントだ。当然、注目が集まるのはその機能となる。

特にここ数年、注目を集め続けているのが「自動運転機能」と「電気走行」の機能だ。グーグル社の自動運転車が世界で話題になるなか、トヨタが2013年に「自動運転の実験車両」を出品し世界的にも大きな話題になり、その頃から他社も自動運転を始めとする次世代自動車のテクノロジーを競うようにして展示するようになった。

いや、実はそれよりもかなり前、まだグーグルが自動運転車の開発を事業として発表するはるか前の2006年に基調講演を頼まれたラリー・ペイジ現CEOが趣味として開発中だった自動運転車に乗って登壇したのもCESの舞台で、そういう意味ではCESは自動運転車とは非常に縁が深いイベントと言える。

あいにく筆者は今年のCESには参加ができなかったがトヨタ、日産、ホンダ、メルセデス・ベンツ、BMW、フォード、ヒュンダイといったメーカーが自動運転車を出品していたことを公表していたが、今年はそこにちょっとだけ変化が起きている印象がある。

自動運転車とは、平たく言えば自動車の外周につけられたカメラで周囲360度の景色を捉え、道路上のほかの車や歩行者、その他の障害物や標識などをAI(人工知能)で画像認識し、運転するという技術だ。既に大半の状況では人間よりもうまく事故を回避し、より安全な運転が可能になっているが、その一方で法整備など社会的インフラが重要な課題となりつつある。

グーグル社の一部で自動運転車の商品化を目指すWaymo社も完全自動運転の実現は近いとしながらも、最初は運転席のない車を目指していたが、現在では法務上の理由から運転用のハンドルを用意する方向に転換するなど技術開発とは別の方向での動きが多い。

自動運転にとどまらないAI×自動車のテクノロジー

一時の「自動運転」熱に水が差されるなか、自動運転の肝となっている「AI」の技術は昨年もっとも熱いテクノロジーワードとなっている。この「自動運転」と「AI」の話題の温度差を埋めようとしたのか、今年は多くのメーカーが自動運転以外の目的でのAI活用に焦点を当てていた印象がある。

例えばトヨタは「CONCEPT-愛i」というコンセプトカーを披露。道路状況だけでなく、ドライバーの表情や心拍数を認識するカメラや人工知能を備え、運転中に顔に疲れが見えてきたら休憩を促したり、音楽を聴いたりすることを音声による対話で勧めてくれたり、少し遠回りしてでも楽しめるルートを提案するという。ちなみにトヨタはこれら一部機能を搭載した車両を数年内に公道実証実験するという。

一方、フォード・モーターズ社は、車と人との声による対話を行う人工知能エージェントとして独自開発のものではなく、多くの人が慣れ親しんでいるアマゾン社のアレクサにすると発表した。アレクサは、Siriのような対話型人工知能の仮想キャラクターだ。

アマゾン社が米国で提供しているエコーという製品がある。アレクサが搭載されているペットボトルほどのサイズの端末で、リビングルームやキッチン、寝室などに置き「音楽を再生して」や「Uberの車を呼んで」、「Amazonで〜〜を発注して」といった具合に声でさまざまな命令を頼める便利なエージェントとして既に人気を博しているが、このアレクサを使って運転中の車内でも音楽の再生から天気情報を調べたりするのにアレクサが使えるという。

しかし、さらに面白いのが車の中だけではなく、家にいるあいだもエコー経由でアレクサを呼び出して車のエンジンをかけて、車内をヒーターで温めさせておいたり、ドアロックの開閉を操作したりもできるようになる予定で、これらの機能はSYNC 3という技術を搭載した車ではこの夏から提供が始まるという。

さまざまな障害で「自動運転」の開発が停滞したなら、それとはほかのAI活用を先に進めてしまおう、というのが今年のCESでの発表から見える流れの1つと思える。

車は先に進むための道具だが、その車を未来へと推し進める技術の進化も、まだまだ止むことなく続きそうだ。
TOYOTA「CONCEPT-愛i」。AIがドライバーの感情や疲労度を察知、状況に応じた対応をとる
TOYOTA「CONCEPT-愛i」。AIがドライバーの感情や疲労度を察知、状況に応じた対応をとる
ヒュンダイの展示より。車内にCO2センサーを備え、二酸化酸素が増えるとエアコンを自動調整するという
スイスのエンジニアリング企業「リンスピード」が出展した自動運転EVコミューター「オアシス」
スイスのエンジニアリング企業「リンスピード」が出展した自動運転EVコミューター「オアシス」
デンソーがマサチューセッツ工科大学と共同開発した小型モビリティのデモカー。自動運転が想定されている
デンソーがマサチューセッツ工科大学と共同開発した小型モビリティのデモカー。自動運転が想定されている

林信行|Nobuyuki Hayashi

ITジャーナリスト。「ステキな21世紀」をテーマに、これからの時代の風景をつくるテクノロジーやデザイン、そして残すべき伝統を取材。ソーシャルメディアや講演、記事やTV/ラジオ番組を通して伝えたり、その知見を元にした企画政策や企業コンサルティングを行う。最近は特にファッション、教育、ヘルスケア、災害対応といった領域に注力。著書・連載多数。ビジネス・ブレークスルー大学講師。James Dyson Foundation理事、Revolver社社外取締役。

記事一覧へ

SHARE

この記事をシェアする

FOLLOW US

公式アカウントはこちら

RELATED

この記事を読んでいる人におすすめ

POPULAR

RECOMMENDED