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イギリス発、子ども発明家を育てる
「Little Inventors!」

2017.05.17 WED
イギリス発、子ども発明家を育てる「Little Inventors!」

子供のピュアな発想が社会を豊かにする発明に。キッズクリエイターたちのアイデアをカタチにする「Little Inventors!」、その主催者であるドミニク・ウィルコックスに聞く、プロジェクトの全容と伝えたいメッセージとは。

(読了時間:約5分)

Text by Shota Kato
Photographs by Briony Campbell
Translation by Miwako Nishimura

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子供の想像力と大人の経験との共同プロジェクト

子どもは純粋無垢な存在だ。固定概念がない故に、私たち大人が思いつかないような、自由でユニークな発想を思いつくことがある。そんな子どもたちのアイデアに社会問題を解決する可能性を見出した、子どもたちの発想を発明に変えるプロジェクト、「Little Inventors!」が注目を集めている。
「Little Inventors!」の代表はイギリスで活躍しているデザイナー、ドミニク・ウィルコックス氏。日常を見つめ直して生まれた数々のアイデアをイラストで表現した著書、『ヴァリエーションズ・オン・ノーマル』で一躍有名になったクリエイターである。ドミニク氏はなぜ「Little Inventors!」を立ち上げたのだろうか。

「子どもたちのクリエイティブイベントに招待されたときに、彼らにアイデアを描いてもらったことがきっかけで、「Little Inventors!」の構想を思いついたんだ。子どもたちのアイデアの質の高さに驚かされて、それをもって試作品を作るべきだと。初めてのプロジェクトはサンダーランドにある僕の故郷からクリエイティブの仕事の依頼を受けて、450人の子どもたちと地元の15人の開発者たちと取り組んだのさ。僕の信条は、子どもたちのアイデアを真剣に受け止めて、創意に富んだ考えができる大人に成長できるよう、彼らを刺激すること。「Little Inventors!」では、子どもたちにアイデアを考え出し、その創案を描くように伝え、開発者やメーカーには優れたアイデアを実際に形にすることを依頼しているよ。これはまさしく、子どもたちの突飛な想像力と大人たちのスキルや経験との共同プロジェクトなんだ」
ドミニク氏自身は幼少期に創造性に長けた子どもではなかったという。ものづくりをするとしても、飛行機の模型を作ったり色を塗ったりする図画工作程度。自ら描いたものから自分の考えを伝えることができると気付いたのは大学に入学してからだった。

「チャーリー・ホームズという大学時代の先生の影響が大きくてね。彼は一風変わった日用品のアートブックを見せてくれて、それがきっかけで僕は新しいアイデアを生むことにチャレンジしようという気持ちになったんだ。先生から学んだことは、人はクリエイティブになれる可能性を持っているけれども、誰らが何ができるのかを示して、それを試してみようという気にさせてくれない限り、その可能性に気付かないかも知れない、ということ。「Little Inventors!」を通じて僕が取り組んでいるのは、つまりはそういうことさ」

子供たちの想像力が社会を豊かにする

では、実際に「Little Inventors!」に参加した子どもたちからはどんなアイデアが生まれているのだろうか。クレイジーなものやユニークなもの、社会問題に対する実用的な解決策など、実に幅広いものがあるという。

「初期に実現されたアイデアの一つは9歳のウェンディによるファミリースクーターだね。4人乗りのスクーターを家族全員で走ることを楽しめるというものなんだ。これはサンダーランドにある最新の自動車に関する研究を行っているAMAPという会社の依頼から生まれたもので、私はこれをシンプルでいて素晴らしくユニークな発明だと思ったよ。日頃から熱心にニュースを観ている11歳のシャーロットは、戦争地帯から家を守るためのアイデアとして、家を持ち上げて目に見えないブランケットで守りながら、車輪で戦争地帯から運ぶ装置を考えてくれた。Fab Labのエリンがこのコンセプトに基づいた模型を作るという形に発展したよ」
子どもたちと作業を共にすることで、ドミニク氏は彼らの想像力が社会を豊かにする可能性を大いに秘めていることを確信した。子どもたちから「大きくなったら発明家になりたい!」という声が上がるたびに、もっと自信を持たせるために「君たちのアイデアを表現して伝え続けるんだ」と言い聞かせている。

「僕ら大人は、子どもたちのクリエイティブなアプローチから多くを学べる。それを大人の世界に取り込めれば、仕事や生活において僕らは確実にもっとクリエイティブになれるはずだ。何かの問題に対して、初期の段階から遊び心のあるアプローチをすることは、よくある解決策以外のアイデアを見つけるのにとても重要なんだ。子どもたちのアイデアはまったく使われていない資源。僕らは子どもたちの絵やアイデアを冷蔵庫のドアに貼り付けがちだけど、彼らに世界の情報を与えれば、想像力に富んだアイデアを思いついてくれるからね」

ドミニクと“発明家たち”のこれから

最後に、車にまつわる質問をドミニク氏に投げかけてみた。昨今の自動車業界は自動運転をはじめとする新しい技術開発のために、自動車メーカーとIT企業との技術提携が盛んに行われている。ドミニク氏は発明家として未来の自動車へのアイデアをプレゼンテーションしてくれた。

「自動運転車の可能性という意味では、ドライバーなしで眠ることのできる全面をステンドグラスで覆われたコンセプトカーを作ったことがあるよ。そのほかにはそうだな……。子どもたちは霜で覆われた窓ガラスに指で絵を描くのが好きだろう? それを発展させてみると非常に面白いと思うな。たとえばARの窓、インタラクティブなタッチスクリーンの窓が実装された車なんかは想像しやすいね」
現在、ドミニク氏はアーティスト・デザイナーとしての本業と両立させながら、ほとんどの時間を「Little Inventors!」に費やしている。彼自身が優れたデザイナーであり続けるためにも子どもたちと接する時間は重要だ。「Little Inventors!」の今後の活動予定について話してくれた。

「いろいろな組織やブランドと組んで、ほかの国へも活動を広げていきたいね。今はカナダ政府の自然科学・工学研究会議 (NSERC)との試験的なプロジェクトを無事に終えて、中国の上海デザインチームと組み、「Little Inventors! China」をスタートさせたところなんだ。もうすぐ100人の子どもたちの発明が実現される大規模な展示が行われる予定だから、僕自身とても楽しみにしているよ」
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