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坂本龍一氏のニューアルバム『async』が、
ドライブミュージックを新たなる次元へと導く

2017.05.17 WED
坂本龍一氏のニューアルバム『async』が、ドライブミュージックを新たなる次元へと導く

坂本龍一氏が8年ぶりのニューアルバム『async』を発表。音楽とノイズの融合を試みた本作品とレクサスが出会い、ドライブ体験にイノベーションを与える「LEXUS Listening Drive│Ryuichi Sakamoto」プロジェクトに迫る。

(読了時間:約4分)

Text by Keisuke Tajiri
Photographs by Isamu Ito

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坂本龍一氏が薦めるドライブルートで『async』を体験するインスタレーション

LEXUS Listening Drive│Ryuichi Sakamoto」プロジェクトは、坂本龍一氏が薦める都内のドライブルートを、ニューアルバムを聴きながら巡る「LEXUS Listening Drive体験」をはじめ、「INTERSECT BY LEXUS - TOKYO」でドライブの疑似体験をできるインスタレーション作品や、坂本氏と『GQ Japan』編集長・鈴木正文氏によるトークショーなど期間限定で開催された。坂本氏とLEXUSのコラボレーション、共通項はどこにあるのか。その答えは『async』のコンセプトにあった。

「世の中の99%の音はひとつの時間軸に沿って同期しています。人間も同じように、たとえば6人それぞれがズレた音程の声を出しても、10分もすれば自然と調和していくんです。そこで、バラバラの音を保ちながらも、ひとつの音楽として成立させることはできないかと数年前から実験していて、ようやく完成しました」と坂本氏は話す。
「東京の街はマンハッタンより静かでしたね。窓を開けてドライブするといいかもしれません」と坂本氏
「東京の街はマンハッタンより静かでしたね。窓を開けてドライブするといいかもしれません」と坂本氏
ミュージシャンや作曲家は、自身の作った音楽がノイズに負けていないか、ドライブをしながら仕上がりをチェックするといったことは少なくない。一方、これまで坂本氏はスタジオでの試聴を基本とし(ドライブ中は音楽に聴き入って、つい目を瞑ってしまうのだそう)、今回初めて、マンハッタンの街をドライブしながら新作を試聴したのだという。「初めてのことだったので、再調整しなければいけないかなと思っていましたが、想像以上にいいものに仕上っていて、その必要はありませんでした。マンハッタンはとりわけ騒がしい街ですが、ノイズと音楽が一体となって、いい作品ができたと思います」。

クラシックのコンサートで客席から時折聞こえる咳払いなどは、ノイズとして敬遠されるものだが、『async』は全ての音に対してオープンだ。「環境音も音楽だと捉えることは今に始まったことではありません」と坂本氏が話すように、アメリカの作曲家、ジョン・ケージがピアノを前にして、4分33秒ものあいだ一切の音を出すことなく演奏を終えた楽曲は、今から65年も前に発表されたもので、その概念は今なお引き継がれている。完全な無音のなかで音楽を聴くことがないように、音楽とノイズは常に共存関係にあり、坂本氏はその関係性を改めて見つめ直し、『async』=非同期というかたちで昇華させた。

ドライブ中の音楽とノイズがひとつとなる瞬間

「LEXUS Listening Drive体験」は、実際にLEXUS「RX450h」に乗り込み、専属ドライバーによる運転で実施された。巡ったルートは次の通り。ワタリウム美術館を起点に、青山通りから神宮外苑のいちょう並木を眺め、坂本氏が幼少のころより好きな景色だったという迎賓館を通り、皇居をぐるりとまわって、東京駅西側に位置する、東京海上日動ビルディング本館へと進む。格子状の赤レンガが印象的なこのビルは、建築家・前川國男氏によるもの。国立近代美術館、市ヶ谷とさらに走りを進め、かつて坂本氏が通っていた高校に隣接する新宿御苑を経由し、最後は南青山の「INTERSECT BY LEXUS - TOKYO」へと帰着する。ルート上に配された13のスポットは、それぞれ坂本氏の思い入れのある地で、ルート設計も坂本氏自ら手がけた。
今回巡ったルートマップ。裏面には各スポットにまつわる坂本氏のメッセージも
今回巡ったルートマップ。裏面には各スポットにまつわる坂本氏のメッセージも
多様な表情をみせる音楽と、均衡を保ったビル群のコントラストが印象深い
多様な表情をみせる音楽と、均衡を保ったビル群のコントラストが印象深い
今回のために録り下ろした坂本氏のメッセージが流れると、いよいよドライブ体験がスタート。舗装されたアスファルトとタイヤの摩擦からくるロードノイズ、都市を改造する工事現場の音、ガソリンの燃焼によって生じるエンジンの駆動音、そしてスピーカーから流れる音楽――本来は共鳴し合うことのない、独立したノイズとして存在するものたちだが、音楽が指揮を執るかのように、それらのノイズを取り込み溶解させていく。
いつもなら気にも留めない景色も、音楽を通すといつもと違った見え方に
いつもなら気にも留めない景色も、音楽を通すといつもと違った見え方に
見慣れたはずの東京の街はドラマティックに、まるで映画の世界に飛び込んだような風景へと変容し、ノイズを持つ意識もまた音楽と一体になっていく不思議な感覚に襲われる。かくして1時間にわたる異世界へのトリップ体験が終了した。

ドライブにとっての音楽とは、あるときには気分を高揚させ、あるときには心を鎮ませてくれるものとして親しまれてきた。『async』はそういったドライブミュージックがもたらすものとは別の次元に位置し、いまだかつてないドライブ体験をもたらす革新的なサウンドといえるだろう。この体験を味わいたいという方は、新作を手にして辿ったルートをドライブしてみてはいかがだろうか。

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