STORY 02
メジャー制覇目前で
起きた悲劇。

勝利を重ね、アジア代表ゴルファーへ。
プロ2年目の2014年、前年秋からPGAツアーに本格参戦した松山はアメリカでもさっそく大器の片鱗を見せた。“帝王”の異名を持つジャック・ニクラウスがホスト役を務めるザ・メモリアルトーナメントで初優勝。 日本人4人目の米ツアー優勝を最年少の22歳でマーク した。
1年目からシーズンを通じた年間ポイントレース・フェデックスカップで上位をキープ。30人だけが出場できる最終戦、ツアー選手権への進出を続け、2016年にさらに飛躍。秋に国内最高峰の大会である日本オープンを制覇、その2週後には中国で当時“準メジャー”の格を誇った世界選手権(WGC)のひとつ、 HSBCチャンピオンズで優勝 するなど破竹の勢いで勝利を重ねた。
日本を、アジアを代表するゴルファー。 世間は広く松山をそう認識するようになった。しかし、スターダムにのし上がりながら、本人の立ち振る舞いは朴訥そのもの。公の場では笑顔も、言葉数も少なく、真剣勝負に身を捧げるプロアスリートとして、ある意味での不器用さも目立った。 「ただ、ゴルフがうまくなりたい」。 どれほど大金を稼ぎ、名声を高めようとも奥底にある信念が曲がらない。
栄光を寸前に、
失意の底へ。
2017年の全米オープンで2位に入り、世界ランキングで自己最高の2位を記録した。夏場のブリヂストン招待ではWGCで2勝目。日本の男子ゴルファーがついにメジャーを制する日が間近に迫ったことを世界中のファンに確信させた。
ブリヂストン招待の翌週、松山は全米プロゴルフ選手権でその可能性を大いに手繰り寄せた。2位で迎えた最終日、前半9ホールを終えて単独トップに浮上。しかし、 栄光へのカウントダウンが始まったサンデーバックナインで悲劇が起こった。 11番ホールから3連続ボギーを喫して逆転負け。失意のどん底に追いやられた。 最終18番ホール、タイトルを献上した同じ組のジャスティン・トーマスを祝福した松山は、その直後バックヤードで泣き崩れた。寡黙な男は、目を腫らし、気丈に並べた敗者の弁。 「ここまで来た人はいっぱいいる。ここから勝てる人と、勝てない人の差が出てくる。勝てる人に、なりたいなと思います」――
-2017
- HIDEKI MATSUYAMA
- STORY 02

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全米プロ/運命の最終日、何が起こったのか
運命の最終日、前日までの3日間でトータルイーブンパーと、松山には優しかった「グリーンマイル」が、この日だけは厳しかった。16番では、右ラフからの2打目がフライヤーでグリーンオーバー。そこから1.5mに寄せたものの、先に1.9mのクラッチパットを決めたトーマスに対し、松山のパーパットは無情にもカップに蹴られた。
「ティーショットのミスとパットのミス。入らなかったのが結構、効きましたね」
さらに、続く17番では、トーマスがバーディーを奪って3打差。最終18番を迎える前に、勝負はほぼ決してしまった。その18番では、松山がティーショットを左のクリークに打ち込み、万事休す。5アンダー、5位タイで松山の2017年メジャーは幕を閉じた。
「気持ちの部分も成長しないといけないですね。ただ、自信を持って打てる技術がないのかなと思います」
トーマスの優勝スコアである8アンダーに、10番でいったんは到達していた。ワナメーカートロフィーは、一瞬だが、確実に、松山の手の中にあった。その事実が余計に、松山の涙を誘ったのかもしれない。
「ここまで来た人はいっぱいいる。ここから勝てる人と、勝てない人の差が出てくると思うし、勝てる人になりたいなと思います」
いや、もう充分に、「勝てる人」にはなっている。あとは、順番が回ってくるのを待つだけだということを、世界中の誰もがこの2週間で、これまで以上に感じたはずだ。
2017.08.14 Mon TOUR RESULTより引用

メジャーへの
確信を得た
2016年HSBC

2週前には初の日本オープン優勝。前週は、初めて世界ランクトップ10入り。そして今大会では、アジア勢初の世界ゴルフ選手権初制覇と、まだ3試合で気が早い話だが、フェデックスカップランクで日本人初の首位。初物尽くしの3週間を終え、もはや自他ともに、松山の次の"初めて"は、"あれ"しか頭にない。
「ここで優勝して、メジャーで勝ちたい気持ちがより一層強くなりました。マスターズまで、まだ時間があるので、メジャーで勝つための課題を克服していけたらと思います」日本のゴルフファンにとって、本当に待ち切れない約5カ月となる。
2016.10.31 Mon TOUR RESULTより引用