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TWO EPIC ROADSLEXUS が挑んだデイトナ 24 時間レース

アメリカ最高峰のスポーツカーレース、IMSA ウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップの 2019 シーズン開幕戦デイトナ 24 時間レースが開催されたフロリダ州デイトナ・インターナショナル・スピードウェイへ、新型 RC F SPORT を駆って訪れた。LEXUS TEAM にとって新体制で挑む 2019 シーズン最初のレースであり、今後を占う重要な一戦である。

ドライバーとレースカーが極限に挑む 24 時間耐久レース。ル・マン(フランス)、スパ・フランコルシャン(ベルギー)と並び、このデイトナ(アメリカ)が「世界三大 24 時間レース」と称されている。市街地を走るル・マン、F1 と同一となる難関トラックのスパとそれぞれユニークな特徴を備えるが、デイトナは 1 周約 4 キロのオーバルサーキットを舞台にした超高速レースという点で一線を画す。
また「スポッター」と呼ばれる特殊なミッションを持つスタッフが、チーム戦略上不可欠な存在である点も、ヨーロッパのレースと異なる。どのスポーツにも勝利を演出する縁の下の力持ちが存在するが、アメリカン・レーシングではスポッターがまさにそれと言える。レースをスタンド上部から俯瞰し、ドライバーの第三の目となってコースの前方状況やライバル車の動向、オーバーテイクのタイミングなどの指示を無線で飛ばす彼らは、ドライバーに劣らず非常に重要な役割を担う。
2019 年で 57 度目の開催を迎えた伝統のデイトナ 24 時間レース。国内最高峰のレースである SUPER GT GT500 クラスチャンピオンの経験をもつニック・キャシディ選手の LEXUS RC F GT3 での参戦も現地では大きな話題となっていた。

スポッターブースからは巨大なサーキットを一望

スポッターの存在なしには成り立たないアメリカン・オーバルレース

多彩なコーナーを擁し、ストップ・アンド・ゴーが基本となる欧州のサーキットに対し、オーバル(楕円)が基本のアメリカは、スピード重視ともいえるスリリングなレースが特徴だ。オーバルレースの特徴は、前方のマシンの背後にぴたりと迫り、空気抵抗が低減する現象(スリップストリーム)を利用して、ライバルをオーバーテイクしても、すぐにこれで“勝負あり”とはならないところだ。オーバルトラックであるがゆえに、抜かれてもすぐに相手のスリップストリームに入ることで、次のコーナーで同じ理論で抜き返すことが可能となる。このレースアクションの多さが、アメリカン・レーシングの魅力のひとつでもある。
また、隠れたもうひとつの特徴が“スポッター”の存在。「Spot=標的を見定める」の字義どおり、サーキットを一望できるブースから、双眼鏡を片手にドライバーを取り巻くレース状況を把握、コース上で繰り広げられる激しいバトルをサポートし、走行中のドライバーに重要な指示を無線越しに放つ。

目まぐるしく順位が入れ替わり、目の離せない展開がオーバルの魅力

ドライバーにとって一心同体のレーシングパートナー

ひとたびレースがスタートすると、ドライバーへ指示を送る声が、間断なくブースに響き渡る。それは車線変更指示といったものから、惨事を回避するための非常に高度な内容まであることが聞き取れる。例えば、「DPi(クラスの異なる速い車両)が 10 秒背後に来ている。インサイドに留まれ(アウトサイドから抜かせる)。パッシングのタイミングを言う 5,4,3,2…」といった具合で、速度が異なる 4 クラスの車両が混走するレースを、事故なくコントロールするのも彼らの役割だ。
レースカーはサイドミラーが装備されているのになぜ車線変更の一見シンプルな指示まで必要なのかと、不思議に思うかもしれない。が、急斜度のバンクでは視界のアングルが変わることで、ドライバーは物理的にも肉体的にも視覚が安定しない状況となる。さらには、オーバルトラックゆえに、全車が同じ方向に走り続けることで、フロントガラスにオイルが付着し視界が一層悪くなるのだ。もちろん、夜間走行となるとさらにドライバー自身の視界が限定されるといった、過酷極まりないコンディションなのである。ドライバーとスポッターはまさに一心同体のレーシングパートナーなのだ。

日本のレースを世界に知らしめたいと参戦を決断したニック・キャシディ選手

SUPER GT チャンピオンとしてデイトナに挑む

2019 シーズンから IMSA ウェザーテック・スポーツカー・チャンピオンシップへの参戦を果たし、このデイトナ24時間レースが記念すべきデビュー戦となった「AIM Vasser Sullivan(AVS)」チーム。2 台の LEXUS RC F GT3 を擁して強豪と戦うこととなるが、このデイトナへは 2017 年 SUPER GT(GT500 クラス)王者であるニック・キャシディ選手をドライバーに抜擢。
急きょ参戦が決まったという状況で、スピード調整を強いられたにも関わらず、レース前にインタビューに臨んだニック・キャシディ選手に話を聞く。実はデイトナどころかオーバルコース自体が「初めて」という。さらには 24 時間レースも初挑戦で、初めてづくしの体験にもかかわらず、とてもリラックスした様子で、自信すら覗かせた。
「デイトナのサーキットを初めて見たとき、まずその規模の大きさに驚いたね。コースはスペシャルの一言だよ。準備期間がかなり短かったから、チャレンジングなのは確かだけど、クルマは速いし、もしこれで成功できたら素晴らしいストーリーだよね……なんといっても僕がここにいる理由は、SUPER GT や SUPER FORMULA を世界に知らしめるためなんだ!」

ナイトセッションに入り、ドライバー交代を待つキャシディ選手

ソーシャルメディアを活用してファンを惹きつける

欧州、日本とモーターレースを経験してきたキャシディ選手だが、ファンに向けたソーシャルメディアの活用という点でアメリカはほかと大きく異なるという。
「アメリカではソーシャルメディアの活用がかなり普及していて、最初のドライバー・ブリーフィングでもソーシャルメディアについてだけ学ぶセッションがあった」
主催者側からは各ドライバーが、自身の SNS チャンネルで利用できる写真も提供しているという。
「まだレースもしてないのにこの 2 ヶ月でフォロワーが 7,000 人くらい増えたよ(笑)。『SUPER GT のチャンピオンがアメリカでどんな走りを見せるか見てみたい』なんていうコメントを見るとモチベーションが上がるよね」
アイコニックなバンクの攻略についても尋ねてみる。
「トラックをよく知るため、シミュレーションによるトレーニングを繰り返した。ただ実際に走ってみるとバンクは想像以上に上がり気味になっているから、目をしっかり開けて攻めていかないといけない。身体がちょっと傾くくらいだと思っていたんだけれど、実際には丘をのぼっているのに近い傾斜感覚で本当に驚いた。ここのバンクは本当にクールだ」

世界中のプレミアムブランドの GT3 カーがライバルだ

デイトナはモータースポーツにおける“マジソン・スクエア・ガーデン”

60 年近い歴史を誇るデイトナ 24 時間レースは、ロレックスがオフィシャルタイムキーパーを務めており、勝者には「コスモ・グラフ・デイトナ」が贈られることはモータースポーツ界では有名な話。ちなみに、この特別なタイムピースが贈られるもう 1 つの世界的なレースがあることをご存じだろうか。それはル・マン 24 時間レースである。世界的なウォッチブランドによるふたつのレースに対する特別なリスペクトの現れと言えよう。そうした事実からも、デイトナはモーターレース史に燦然と輝く金字塔的存在のひとつだ。アメリカで LEXUS のモータースポーツマーケティングを担当するジェフ・ボール氏はこう語った。
「たとえばアメリカを代表するミュージシャンのブルース・スプリングスティーンが、ヨーロッパツアー中だったとします。でもなにかの拍子にマジソン・スクエア・ガーデンが急に空いてコンサートができることになったら、ツアーを中断してでもニューヨークに戻ってきて演奏するでしょう。それくらいマジソン・スクエア・ガーデンは特別な場所なのです。このデイトナは、まさにレース界におけるマジソン・スクエア・ガーデンと呼べる場所なのです」

ナイトセッションではスポッターやファンが確認しやすいように、車両も LED ライトによって個性的にライトアップを果たす

デイトナ史上類を見ないサバイバル戦が展開

いささか雲の多い空模様の下、レース前のセレモニーを終え、14 時 35 分に伝統の一戦が幕を開けた。ポルシェ、アウディ、BMW、メルセデスなど強豪がしのぎを削るレース序盤に健闘を見せたのは、AVS の 12 号車だ。タウンゼント・ベル選手を筆頭にすえるチームは、前半 22 周にわたって、GTD クラスをリードする活躍を見せる。その後、トップから 2 周ほど後退する辛抱の時間帯もあったが、素晴らしいチーム戦略で順位を確実にあげていった。キャシディ選手がハンドルを握った 14 号車もリードラップを記録するなど、レース全般を通じて上位フィニッシュの可能性を感じさせるパフォーマンスを披露した。
17 時を過ぎると日が落ち始め、トラックサイドに明かりが灯る。幻想的な美しい景色ながらも、戦うチームにとって最もタフな時間を迎える。夜も深まるレース開始から14時間後には激しい雨が降り出し、コースアウトやクラッシュが相次ぎ、合計 17 回にわたってセーフティーカーが投入されるなど、サバイバル戦の様相を呈していく。

LEXUS の新チームが初レースでクラス 2 位を獲得したことで、今シーズンへの期待は高まる

タイトル争いに値する実力を見せつけたパフォーマンス

翌朝を迎えても豪雨の勢いは止まず、レースは赤旗中断を余儀なくされる。そして残り約 2 時間となっても、レースカーがサーキットに戻ることはなくそのまま赤旗終了となった。結果、12 号車は見事にクラス 2 位で表彰台を獲得。14 号車も総合クラス5位を記録し、伝統の一戦を終えた。
豪雨によってコース各所にできた水たまりによるクラッシュとリスタートを幾度となく繰り返す、マネージメントの難しいレース展開ながら、上位に食い込む力強いパフォーマンスを披露した AVS。元 CART チャンピオンのジミー・バッサー氏とともに共同オーナーを務める、ジェームズ・サリバン氏は次のようにレースを振り返る。
「RC F GT3 を手にしてから 100 日ほどと非常に厳しいスケジュールだったので、最初のレースにそれほど大きな野望をもっていたわけではありません。しかし同時に、このような良い結果を出せるのではないかという予感があったのも事実です。初めての 24 時間レースで完走を狙っていること、そして自分たちがタイトルを獲るに値する実力を備えていることを示すために、我々はデイトナにやってきました。デビュー戦での表彰台獲得は素晴らしい結果です。が、本音をいえば、レースが再開して GTD クラス優勝を狙うことができていれば最高だったのにと思います。我々のスピードであれば優勝も可能であったと信じています」

前日の24時間レースの激闘の証が残るトラックを RC F SPORT で訪ねた

レースとともに“LEXUS F”はパフォーマンスブランドとして進化する

「デイトナに足を運ぶのは筋金入りのレースファンだからこそ、ライバル勢と遜色ない LEXUS の実力を見せることが何よりも重要」とレース前に語っていたジェフ・ボール氏にとっても、今年のデイトナ 24 時間レースは願ってもないシーズンオープナーとなった。
「モーターレースでのパフォーマンスや成功が、LEXUS F =パフォーマンスブランドという認識を築いてくれるのです。ドイツのメーカーたちは、スポーツカーブランドとしての出自からラグジュアリーブランドへと転身を果たしています。我々は、逆にラグジュアリーでありながらパフォーマンスをも包括する強力なブランドへとの軌跡を描こうとしているのです。たゆまず開発を続け、高次元のパフォーマンスを世界各国のレースで披露することでそれが実現できると信じています。実際、RC F GT3 というクルマがこの3年間でそれを実証しているのです」とボール氏。
総走行距離約 2,630km 及んだサバイバルレースを表彰台フィニッシュの好成績で終え、LEXUS のモーターレーシングプログラムは、これからの 1 年でまた新たな進化の一章を刻むことになるだろう。

最終回は、デイトナ 24 時間レースの激闘から一夜明け、フロリダ半島の南へ。 近年デザインやアート、ライフスタイルの分野での深化が著しい都市マイアミを抜け、フロリダ半島の最南端キー・ウェストへと続く全長約 180 キロの海上道路「オーバーシーズ・ハイウェイ」を RC F SPORT でドライブするロードトリップをお届けします。

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