LEXUS SETS
THE BAR HIGH
FOR ITS QUALITY

TEXT BY RYO INAO / PHOTOGRAPHY BY KO SASAKI

“匠”がつくりあげるレクサスクオリティを目撃する

レクサスの生産拠点は国内と北米工場の6拠点に限られている。
なかでもレクサス車生産総計の約6割を担うトヨタ自動車九州宮田工場(福岡県宮若市)は、
米国市場調査会社J.D.パワーによる品質調査(「IQS」自動車初期品質調査)の工場部門で
最高位のプラチナ賞に通算5度も輝く世界屈指の自動車生産現場としてその名を広く知られている。
生産工程に“匠”を配することで職人の精神が宿るレクサスクオリティを生み出すかの地に、
日本のファッション界を代表するクラフトマンシップを誇るテーラー・信國太志氏が足を踏み入れた。

複数モデルが混流する生産ライン

宮田工場の年間生産能力は43万台、1日平均1750台のペースでレクサスES、CT、RX、NX、そして2018年冬から新たにラインナップに加わったUXの計5車種を生み出すラインがあり、混流生産と呼ばれる方式で複数車種を単一のラインで完成させるプロセスをもっている。ディーラーでの購入段階で、自分の好みに合わせたカスタマイズオーダーを叶えるのがこのプロセスだ。ボディカラー、インテリア、各種オプションなどオーダーは千差万別だが、そのすべてがひとつのラインで完成されるのだ。

なかでも塗装、組立、検査の各工程にはプログラミングされた通りに動作するロボットだけでなく、多くの作業者の姿も見受けられる。なぜなら職人の高度な技術力を投入して製造された数々のパーツを組み上げ、最終的にお客さまのもとに届くレクサスクオリティに仕上げるのもまたクラフトマンシップに長けた技術者を筆頭にした作業者たちだからだ。
稼働するラインを目の当たりにして信國氏は、作業の“キメの細かさ”を印象深い点としてあげた。「洋服をつくるテーラーに限らずシューメーカーなど日本の服飾業界の職人が世界中から高い評価を得ています。では、日本の職人のどこが関心を集めているのかというと、ディテールへのこだわりや見えないところにまでいたる緻密さなんです。そこに通ずるものを感じますね」と信國氏。

鏡面仕上げのボディ塗装

宮田工場ならではの“キメの細かさ”が表れている例として、塗装がまずあげられるだろう。ボディは電着塗装の後、中塗りが施される。中塗りによって現れる表面の凹凸は熟達した人間の手によって丁寧に磨かれる。塗装技術の向上に伴って一般的には省略されるようになった中塗り後の磨きだが、レクサスではあえてこのひと手間を惜しまず、鏡のように美しい車体を確固たるものにしている。そして上塗り工程におけるベース塗装とクリア塗装では、ともに人の手~ロボットの順で施される。
何段階にも分割された丹念な塗装は、私たちの目に触れない内側やパーツ同士の接合部分にいたるまでこと細かに徹底されている。

塗料を吹き付ける際、塗料の噴射口とボディの距離は一定でなければムラができ、鏡面のようなツヤは現れない。こうしたミリ単位の正確性が求められる工程はロボットの得意とするところであるが、随所に人の手を経た作業が存在するのは信國氏が感じ取った“キメの細かさ”への配慮以上の理由がある。それは、クルマに乗るのがロボットではなく、人間だからだ。人が魅了される美しさや快適な時間を過ごす空間は、人なしには創出し得ないはずである、とレクサスは考える。熟練の能力を備えた人間の手によって生み出されるクルマだからこそ、乗り手に与えることができる感動や躍動があるのだ。この精神性は塗装だけでなく、開発から完成までのあらゆる工程に共通しているが、なかでも最終検査において顕著である。

0.1ミリの誤差も見逃さない触覚

人間とロボットが適材適所に配され、寸分の違いもなく1台のクルマを次々と構築していく。そうして組み立てられた車両の隅々にいたる約1800項目の確認事項を入念にチェックするのも先述の精神にのっとって人間が行う。組み付け精度、各所ドアの開閉感覚、異音の検出など検査員が五感をフル稼働させるのだ。各検査項目の担当者は専門の訓練を受けており、例えばボディ表面を担当する検査員は、指先の触覚だけで0.1ミリの凹凸を感じ取れるほどの研ぎ澄まされた感覚を備える。
彼らは毎日の出勤時に官能検査の精度をチェックすることが義務付けられており、万が一の場合、その日はラインに立つことが許されないほど厳しい。万全な体調でないと長年の経験をもつ者ですら見過ごしかねないほどの微細な誤差を感知する感覚がブレてしまうからである。まるで最善のパフォーマンスのためにコンディション管理を怠らないアスリートを彷彿とさせるストイックさだ。

「これからは、IT企業や電器メーカーもクルマをつくり出す時代。ともするとサプライヤーから手軽に部品を集めればどこもかしこもがクルマをつくることができるようになる、と思いがちです。そんな時代だからこそ、各部品のクオリティもさることながら、消費者の手に届く最終的なクルマを仕上げる組み立ての精度が重視されるはずです。宮田工場のような現場で最高水準の組み立て、そして検査を経て完成するレクサスは、ますます群雄割拠を極めかねない自動車業界で、際立った存在感を放つブランドとなるでしょう」。そう語る信國氏は、宮田工場の生産の美学に、常に高きを目指すレクサスクオリティの真髄を見た様子だった。

信國太志

テーラー
1996年に英国セントラル・セント・マーチンズ美術学校修士課程を修了。98年、ファッションブランド「TAISHI NOBUKUNI」をロンドンで設立。2004〜08年にかけて「TAKEO KIKUCHI」のクリエイティブディレクターを務めながら、07年には自身のブランドをリニューアルし「BOTANIKA」に改名。その後テーラーを志し、11年にはテーラーサロンを銀座にオープンした。
http://www.taishi-nobukuni.co.jp