INTERSECT BY LEXUS - TOKYO 1Fガレージで展示・制作を行った、Ryu Itadani氏による立体アート作品「A Room in The Room」は、飲食や会話を楽しみながらアート作品の中で過ごせるカフェスペースとして11月16日(月)まで解放しています。
10月23日(金)から徐々に完成させた空間の見どころを、Itadani氏ご本人に伺いました。
《見たことがあるようで見たことがない、不思議な部屋》
壁面のアートワークには、バウハウス系のクラシカルなガラスの棚や、インゴ・マウラーがデザインした70年代の照明といったインテリアに混ざって、修正液やトイレットペーパーなどの生活感溢れる小物も描かれている。「僕が普段乗っている自転車もあるし、お気に入りの文房具もあります。でも、普通はギリシャのコラム(柱)なんて家の中にはあるはずがなくて、まさに誰かの部屋であり誰の部屋でもない『A Room in The Room』です。とくに男性の部屋、女性の部屋ということも意識していない、人種や、国籍もない。僕自身がいろいろな国や場所に住んでいたので、より要素のミックスされた、さまざまに感じられる空間になっているはず」。そうItadani氏が話すように、たしかにどこかで見たことがあるモチーフに彩られつつ、その色も含めてItadani氏の感覚を通してまた違う世界が体験できる空間になっている。
《INTERSECT BY LEXUSだから生まれた作品》
「ペンギンの絵は、銀座の〈ポーラ ミュージアム アネックス〉で個展をやったときのモチーフです。LEXUS車のように見えるのは、ドバイのLEXUSディーラーショールームにある子ども用の乗用玩具。この部屋はフィクションですけど、ベースになっているのは実際に僕が見聞きしたモノです」。本棚に並ぶ本の背表紙にItadani氏が過去に住んだ国の名前や常任理事国の名前が並んでいるなど、そこかしこに遊び心がちりばめられている。ベルリンで壁面用に描いたアートに対して、立体物へのドローイングはすべて展示期間に、ライブで制作したもの。「それこそ、ここで描いているときに目に入った〈CRAFTED FOR LEXUS〉のサングラスとか、今朝いただいたカフェの海老カツサンドなど。入ってすぐのところにあるのは、LEXUS車のキーを描きました(笑)。展示を観に来てくださった人と話すなかで、そこからインスピレーションをうけ、少しずつ仕上がりが変わっていくこともありました。普段ひとりでスタジオにこもって制作しているのと違い、“Intersect(交差する)”の名前のとおり、みなさんと交流しながら、そこで得た感覚を取り入れながら、インタラクティブに作り上げていきました。」。
《作品を生み出す瞬間をも展示した、最高に贅沢な空間》
「皆さんは、僕の作品は1度塗りだと思われていますが、じつは違います。クルマのボディもたくさん塗り重ねている色のほうがキレイですよね。それと同じです。絵具はマットで不透明なんですが、キャンバスの地が出てしまうので3回以上塗り重ねるんですよ」。乾くのを待つ間、ときにテーブル、ときにボックスと移動しながら少しずつ描き進めていく。「ベルリンにいる間も、模型を使ってINTERSECT BY LEXUS - TOKYOとはイメージを共有していました。それでも実際にこの空間で見たテーブルはすごく大きかった(笑)。ひと思いに進めず、描く場所を移動したり、色を塗る作業からモノトーンの線を引く作業に変えたり、たとえばコーヒーを飲む日もあれば、今日は紅茶がいいなと変えていくような感覚で、自分の中でバランスを取っていました」。
《モチーフからストーリーを想像し、絵の中に没入する楽しみを味わって》
ここは“主人の姿を創造してほしい部屋”。1つひとつのモチーフにItadani氏のエピソードがあるものの、ぜひ自分自身でそのストーリーを想像して欲しい。「とくに正解があるわけではありません。観に来た人があれこれ想像したり話をしたり、そこからコミュニケーションが生まれたらいいなと思っています」。また“部屋”を撮影する際にも楽しみ方がある。「工具が数メートルの大きさでスケールアウトして描いた中に、コートや椅子などは実物サイズで描いたので、ぜひ人と一緒に空間を写して欲しいです。リアルな人が入って撮っていただくと、より誰かの部屋の中にいるような写真になります。絵の中に入り込むような没入感を体感してください」。
“部屋”の奥では、「部屋の窓の外」をイメージしたモニターにItadani氏の過去の作品を映し出しています。いまや実物は消えてしまった壁画作品などもあり、これをこの空間で観るだけでも貴重な体験! また、自宅にいる時間が長くなっているいま、実際の自分の部屋、インテリアのアイデアにするのも楽しみ方のひとつ。何より、Itadani氏の作品の一部になりながらコーヒーを楽しめる機会を逃す理由はありません! 今年見ておくべきアート作品のひとつであることは間違いなしです。