今週はもう一つ、触れておくべきことがあった。3月11日は東日本大震災から10年だ。
「もう、10年経つんだなと思います。だからといって、何が出来るか分からないんですけどね。プロゴルファーなので、結果を出すしかないと思います。こっちで2位とか3位では、あまり日本で報道されないと思うので、優勝出来るように頑張りたいです」
しかし、思いとは裏腹に、最近は目立った戦績を残せていない。振り返れば、松山がアメリカでフル参戦を開始した2014年以降、1~3月にトップ10を一度も記録しなかった年は、これまでない。だが、今年は15位タイがベスト。遠因は、初日の出遅れだろうか。2021年で一番の初日順位は、23位タイ。70位以下は、3回に上る。そろそろ好発進が欲しい。
初日を10番からスタートした松山は、難コースのTPCソーグラスを着実に攻めていった。名物ホールの17番では、1打目をピン右手前4mにつけ、右に曲がるラインを読み切って初バーディー。前半を1アンダーで折り返した。
しかし後半に入り、松山は突然乱れた。1番では、グリーン左バンカーの目玉のライから13ヤードの3打目を、ラフにバウンドさせてピンから2.5mオーバーに抑えるスーパーショットを見せたが、パーセーブ出来ず。3番では、1打目がキャリーでグリーンをオーバー。左足下がりのラフから13ヤードの2打目も、再びグリーン手前でクッションを入れるつもりが、直接グリーン面に飛んでピンを22mオーバーし、3パットも喫して、ダブルボギーを叩いた。出血は、さらに続く。4番では、129ヤードの2打目が、バックスピンで池に落ち、ボギー。6番では、140ヤードの2打目でダフり、16ヤードの3打目も5mオーバーさせて、怒りがこみ上げた。3つ目のボギーを数えて、通算4オーバーはトップから11打差の112位タイ。またしても、スタートダッシュを決められなかった。
ただ、いくら出遅れたとしても、今年はまだ予選落ちが1回。「持ち直すのが難しいですけど、明日切り替えて、トータルでアンダーパーくらいを目指して頑張りたいと思います」と臨んだ2日目は、前半から順調にスコアを伸ばした。2番で、左ラフからショートサイドのピンに対して23ヤードの3打目を、タップインの距離につけてバーディーとすると、5番では、188ヤードの2打目を2mに絡めて、2つ目のバーディー。7番では、1打目が左の池に捕まってボギーとしたが、この日の松山はミスを引きずらない。8番では、1打目をピン奥3.5mに止め、9番では、残り261ヤードからピン手前3.5mに2オン。連続バーディーとし、前半だけで通算スコアを1オーバーまで盛り返した。
この時点で、予想カットラインは1打上のイーブンパー。後半9ホールで、松山はその1打にチャレンジしつづけた。11番では、グリーン手前フリンジから5m強のバーディートライがショート。12番では、5.5mのバーディーパットがカップ右に外れた。13番では、ピン左手前2mと絶好の場面も、入ってくれない。逆に14番で、グリーン左バンカーから16ヤードの3打目をショートし、ボギーとなってカットラインが遠のいたが、松山は諦めなかった。16番で2オン2パットとし、再びあと1打とすると、松山の執念を示すように、17番では1打目がピン筋に飛んで、奥3m弱。18番でも、セミラフから141ヤードの2打目がピンを指した。しかし、17番ではパットがカップ右に逸れ、18番では2打目がピンを7mオーバーし、バーディートライも一筋、カップ左にずれた。
「最後の2ホールは入らなかったですが、凄く良いストロークが出来て良かったと思います。でも、週末にプレー出来ないというのは悔しいです」
通算1オーバーで72位タイ。松山が、年明けから3月までに予選落ちを2度数えたのも、2014年以降初だ。苦戦の理由を松山は、「途中、ガタっと一発大きなミスが出ると崩れてしまい、次のホールで悪いイメージを払拭出来ないのが現状です」と自己分析する。
「徐々に明るい兆しは見えてきていますが、結果が出ないのは悔しいです。ちょっとしたキッカケで、凄く良い方向には行きそうな感じで来ているので、結果を早く出したいです」
次戦は2週後のWGC-デル・テクノロジーズマッチプレー。ヒントを掴むためには、出来るだけ多くのマッチをこなしたい。2015年以来の決勝トーナメント進出が必須だ。