TWO EPIC ROADSフロリダが誇るもう一つの偉大な道「オーバーシーズ・ハイウェイ」をドライブしキーウェストへ
サンゴ礁の島々を無数の橋で繋いで建てられた「オーバーシーズ・ハイウェイ」。20 世紀初頭のフロンティア精神によって開拓された、世界最大級の長さを誇る“海上道路”を RC F SPORT でドライブする。
キューバ危機に端を発するアメリカとキューバ両国の国交断絶により、バハマに取り残された 50 年代のアメリカ車がいまだ現役で街を走り、キューバの重要な観光資源になっていることは広く知られている。そのキューバとの交易で大きな役割を果たしたのが、アメリカ・フロリダ州南部にある「フロリダ・キーズ」だ。点在するサンゴ礁の島々の総称で、これらの小島を42の橋で繋いで敷かれた幹線道路「オーバーシーズ・ハイウェイ」は、マイアミ屈指のドライブルートとして知られている。その名のとおり“海上を走る道路”であり、南洋独特のエメラルドグリーンが視界の限りに広がる海をバックに、ミニマルな風情の橋がどっしりと構えて建つ風景は、一瞬現実のものかと目を疑うほど美しい。
このハイウェイ終着点に位置する街がキーウェスト、旅の最終目的地である。アメリカ本土最南端というロケーションで、同じフロリダの州都マイアミからよりもキューバからの直線距離が近いため、元来からキューバとの結びつきが強い土地柄だ。例えば、建物はパステルカラー調でキューバ的な“コンチ・スタイル” (テラスを前庭に備えた木造住宅)のものが多く、また移民やその子孫が運営する葉巻工場では、年間 1 億本近いシガーを生産していた時期もある。しかし前述のとおり、フィデル・カストロがキューバ革命(1959 年)を起こし、両国の国交が断絶されたことで、人々のみならず交易の往来も停止を余儀無くされた。
そんな歴史と政治の趨勢に翻弄されてきた背景からか、マイアミからキーウェストへと続くエリアには、まるで往事のまま時計が止まったのではと、錯覚してしまいそうなほど「古き良き時代」をしのばせる場面に巡り合うことも少なくない。今回は、「RC F SPORT」のステアリングを握り、時にタイムスリップしたかのようなマイアミ〜キーウェスト間をドライブする。
グローバルシティへと進化したマイアミ
州都にしてフロリダ州最大の都市、マイアミ。近年はニューヨークなどと並んでカルチャーやライフスタイルの先進都市として、アメリカ国内外から注目を集めている。後述するようにファインアートとデザインを軸とした、市をあげての投資と拡大は、マイアミを世界的に重要な“アート拠点”としての地位へと一気に押し上げた。また 1 年を通して温暖な亜熱帯性気候は、特に冬期に北の寒さを逃れて訪れる富裕層に人気で、高級不動産開発ブームから市内のいたるところで急ピッチの建設工事が続いている。
こうした街の進化とともに、ライフスタイルはミニマルでコンテンポラリーなベクトルにアップデートされており、食、ファッション、音楽などでもグローバルスタンダードが満喫できる街へと進化を遂げている。
また LEXUS との縁も深く、2017 年に発表した、流麗なフォルムが特徴の「LEXUS Sport Yacht Concept」のワールドプレミアは、ここマイアミのフォート・ローダーデールで行われている。
独特の開放感とゆったりとした時の流れを愉しむ
本土にあるマイアミのダウンタウンから見ると、まるで離れ小島のようにして浮かぶ「マイアミ・ビーチ」や、イタリア・ヴェネツィアの街を手本にした「ヴェネツィアン・アイランズ」など、この街の移動は海に掛かる橋と陸地を交互するのが面白い。例えばアール・デコ調のホテルが軒を連ねるサウスビーチに向かって走っている最中、思わぬところで海の上を渡っていることに気づくという具合だ。そうした街の特徴のせいか、例えば高層・低層の建物がぎっしりと詰まった街区を、渋滞ラッシュの激しい片側 6 車線の道路が縦断するロサンゼルスの街と比べると、クルマを運転していても独特の開放感やゆったりとした時の流れを感じることができるから不思議だ。
そんな街を RC F SPORT でクルーズする。高低差の少ない平坦な地形だが、アメリカらしく直線が気持ちよく伸びやかに続く幹線道路や、全長約 2 キロで弓状を描くリッケンバッカー・コーズウェイの橋の立ち上がりなど、パワーが必要な場面では、241 馬力のエンジンがアクセルのインプットに即時反応して快適に目指す道をスイスイと進んでくれる。
「アートバーゼル・マイアミ・ビーチ」は注目大
100年ほど前までは、ワニが徘徊するほど原始的だった沼地帯が、大型クルーザーが停泊し、高級高層マンションが建ち並ぶ現在の街へと変容を遂げた事実は、すでに一つのサクセスストーリーといえるかも知れない。そして、この街は、進化のスピードにブレーキをかけるつもりはないようだ。
その象徴的な取り組みが、30 年以上にもわたって続けているアート&デザインへの投資だ。アート界のパワーコレクターたちが、プライベートジェットで集まる世界最大のアートフェア「アート・バーゼル」のアメリカ版を、この地で開催していることからも、その“本気度”が伺える。このアート・バーゼル・マイアミ・ビーチの期間中には、20 近い関連フェアも同時開催されるが、なかでもアートの雄たるアート・バーゼルに対峙するデザイン界の最右翼が「デザイン・マイアミ」だ。LEXUSはこのデザイン・マイアミのオフィシャルパートナーを務めており、アートとイノベーションの可能性を探るインスタレーションや展示を手がけている。
またファインアートのみならず、ストリート系アートにも力を入れており、近年、再開発が進んだウィンウッド地区には、ポップな“グラフィティ”で彩られた建物やビルが並んでいる。
42 台のクルマがファサードを飾る
ウィンウッド地区でストリートアートを満喫したら続いて北に足を延ばす。移動時間はクルマでわずか 10 分足らずという目と鼻の先に、今度はデザイン・ディストリクトがある。見るからに新しい瀟洒なビルが並ぶ街区には、世界的な高級ファッションブランドや著名シェフが手がけるレストランが居を構えており、どこかロサンゼルスのロデオ・ドライブを思わせる雰囲気。しかし、デザイン・ディストリクトの看板に当然偽りはなく、いたるところに現代芸術のアートピースが点在している。
なかでも圧巻が、2017 年に新築オープンした現代アート美術館「インスティチュート・オブ・コンテンポラリー・アート、・マイアミ」の真向かいに建てられた「ガレージ・パーキング」だ。世界から選ばれた 5 つの建築事務所が、このエリアの象徴となる7階建てパーキング 1 棟を共同でデザインするという驚きの事業で、スタイルやコンセプトのまったく異なる外壁デザインが一つのコンクリート建造物を取り囲む仕掛けだ。ちなみに左写真のゴールドとシルバーに塗装したクルマのボディ 42 台分を外壁に配した作品は、スペインから参加した建築スタジオ「Clavel Arquitectos」の作品だ。
マイアミに別れを告げ、いざキーウェストへ
アメリカ本土最南端の土地としても知られるキーウェストは、マイアミから陸路で 260 キロほどの距離にあるが、実は、アメリカに数ある高速道路の中でも最長としても知られる「国道1号線」の南端終着点でもあるのだ。ちなみにカナダ国境沿いの北限に位置するフォート・ケートの街から計算すると、14 の州と一つの特別区(=ワシントン D.C.)を抜けて、全行程はなんと 3,800 キロ超にもおよぶ。
また地図で一見すると、キーウェストを単なる“辺境地”と勘違いしそうだが、かつてフロリダ州で一番裕福な街として知られた時代もあり、文化・文芸との関わりも強い。ノーベル賞作家のアーネスト・ヘミングウェイが「武器よさらば」を執筆し、劇作家のテネシー・ウィリアムズが戯曲「欲望という名の電車」を書き上げるなど歴史的な逸話も多い土地柄だ。さらには冬でも温暖な気候が重宝され、歴代のアメリカ大統領が「ウインター・ホワイト・ハウス」と名付けた冬季専用の大統領執務施設を設け、長期滞在することも多かったという。
廃線となった鉄道路を改修したオーバーシーズ・ハイウェイ
フロリダ半島とキーウェストを陸路で結ぶオーバーシーズ・ハイウェイの土台となったのは、キーウェストを交易の戦略的な要衝に仕立てようと試みた実業家、ヘンリー・フレイグラーが建設した鉄道路だ。1905 年に建設が始まり 1912 年から実用に移されたが、1935 年に発生した巨大ハリケーン「レイバー・デー・ハリケーン」(最強ランクのカテゴリー5で上陸)によって壊滅的ダメージを受け、再建・再開不能の悲運に見舞われた。
フレイグラーの断念によりそのまま海の上に浮かぶ歴史的遺構となっても不思議ではない状況だったが、アメリカ政府が出資し、遺された線路用のインフラを利用して自動車道を新たに建設することを決定。それがそのまま現在のオーバーシーズ・ハイウェイの原型を形成しているのだ。1938 年のハイウェイ開通より80年を超える変遷の中で、新たに建設・改修された区間もあるが、往事の姿を残す旧道が並行して残されているため、在りし日に思いをはせながらドライブできる。
偉容を誇るセブン・マイル・ブリッジが旅のハイライト
フロリダ半島を離れ、オーバーシーズ・ハイウェイを進んでいくと最初に現れる島がキーラーゴ。ここから終着地・キーウェストまでの約200キロは、直線といっていいロードプロファイルだ。
距離を刻んでいくと車窓から見える風景が徐々にトロピカルな様相を帯びてくることに気づく。また潮が薫る海風がドライブに高揚感をもたらしてくれるのも嬉しい。
観光名所として知られるイスラモラーダやマラソンといった街々を通り過ぎると現れるのがオーバーシーズ・ハイウェイのハイライト「セブン・マイル・ブリッジ」だ。文字通り全長が 7 マイル(約 11.2 キロ)あり、フロリダ・キーズを結ぶ橋の中でも最長スケールを誇る。
こうした壮大さに感嘆が続く道のりのロードサーフィスは、繰り返し補修を重ねた凸凹も多々あるが、F SPORT 専用チューニングが施されたスポーツサスペンションが、路面からの強い入力を和らげ、心地良いドライビングフィールをもたらしてくれる。また海上道路特有の強い横風に対しても、RC の計算されたボディワークも相まって直進安定性が高次元で実現されていることも思う存分体感できるドライブルートでもあり、あっという間にキーウェストに到着したという実感だ。人生を謳歌するようなドライビング体験は、物理的なディスタンスをも縮めてくくれる気がする。
アメリカ本土最南端からキューバを望む
横長なカタチをしたキーウェストの島は、幅 6.4 キロで、縦には 1.6 キロと徒歩で周りきれるほどのサイズしかないが、漁業、造船業、塩の貿易などで繁栄したという歴史は、カラフルで瀟洒な建物が並ぶ街並みからも容易に想像できる。特に目抜き通りであるデュバル・ストリートには、バハマやスペイン文化の影響が見られるビクトリア調のマンションが軒を連ね、バー、ギャラリー、ブティックなどは観光客で大いに賑わっている様子がうかがえる。
そしてキーウェストまで足を伸ばしたのなら見逃せないのが「アメリカ本土最南端地点」を示すブイの形を模したモニュメントだ。「90 Miles to Cuba」と大きな文字で宣言されているとおり、州都であるマイアミよりも近い、150 キロ弱のところにキューバが位置していることを教えてくれる。
近づきつつある前線の影響で荒れ模様の海を前に残念ながら目視は叶わなかったが、20 世紀の先人がもった野望と卓越したビジョンによって切り拓かれた道中をドライブしてきた記憶を胸にすると、現実には見えない風景も、目を瞑ると心象では見通せてしまえそうな不思議な感覚であった。
デイトナ、そしてオーバーシーズ・ハイウェイというアメリカが誇る「2 つの EPIC -“道の偉業”」を巡る今回の旅。
ヨーロッパと異なるスタイルを持つアメリカ発祥のスポーツカーレースの最高峰で戦う LEXUS のレースカーの 24 時間、2,630 キロにおよぶ激闘を目撃し、もう一方はキューバとの交易に商機を見出し、サンゴ礁の小島を繋いだ横断道路を新型 RC F SPORT で走破。一見するとジャンルは大きく異なるが、マイアミという土地に深く息づく先駆者、アントレプレナーとしての“開拓精神”をまざまざと体感することができた貴重な旅となった。
lexus.jp 公式SNS / Mail News
LEXUS の MOTORSPORT 活動の最新情報はもちろん、
コンセプトモデルを含む LEXUS 全車種、
様々なブランドアクティビティをご紹介しております。
おすすめコンテンツ
PAGE TOP