GOODWOOD FESTIVAL OF SPEED Vol.2 Go Fast! ヒルクライムを疾走するスピードのDNA

グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード。通称 FoS。歴代のモーターレースのチャンピオンマシンや世界中のアイコニックなレーシングカーが集結する唯一無二のスピードの祭典にLEXUSもエントリー。連載2回目となる今回は、イベントのハイライトである“ヒルクライム” の全容を紐解く。

COLUMN1

400 台、12 万馬力の大迫力

1993 年の初開催から数えて記念すべき 25 周年を迎えたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードが 7 月 12〜15 日の日程で開催され、今年も 400 台近い歴代チャンピオンマシン、特別チューンナップのスペシャルエディション、最新パフォーマンスモデルなどがヒルクライムレースにエントリーをした。

オークションハウス、自動車史研究家などの協力も得て招待される名車の数々は、第 1 回より比類なきレベルのラインアップで、イギリスのロックバンド、ピンクフロイドのドラマー、ニック・メイスン氏が BRM V16 をエントリーし、さらにはマクラーレンのロン・デニス氏が 1970 年のマクラーレン M14 を駆るなど、集まった 2 万 5000 人の観衆(現在は 20 万人)を歓喜と熱狂の渦に包み込んだ模様は、センセーショナルな出来事として世界に伝えられた。また当時、グランプリサーキットでしか見ることの叶わなかった F1 マシンも第 2 回の 1994 年よりエントリーがはじまり、ウィリアムズにいたっては前年にタイトル制覇を果たした、ウィリアムズ・ルノー FW15C を送り込む気合のいれようだった。

スタートゲートに姿を現した LEXUS RC F Cup Car。

チャンピオンマシンとスーパーカーの共演

現リッチモンド公爵の理想を実現した初期の高いコミットメントが FoS の礎となり、それを系譜に築かれた今日の驚くべき出走ラインアップがある。さらに 2018 年は、ニコ・ロズベルグ氏とルイス・ハミルトン氏のセットアップで、2016 シーズンに 21 戦中 19 勝の史上年間最多勝利を収めた現代のテクノロジーの粋を集めたメルセデス・ベンツの F1 マシンや、ル・マン 24 時間レースを制したポルシェのLMP1 マシンなど数え切れないほどのチャンピオンマシンが、ヒルクライムのトラックを駆け抜けた。ヒルクライムレースとは文字通り山や丘で行う自動車の登板競技であるが、FoSの特筆すべき点は、タイムを競うものではなくショーと成立させているところにある。

さらにFoSを盛り上げているのが、日常ではまずお目にかかることのできない各メーカーの技術の結晶ともいえるサーキット専用のリミテッドモデルだ。“史上もっともワイルドなアストンマーティン”と称されるヴァルカン AMR や、フェラーリの FXX KEVO などをコックピットの隅々まで間近に見ることができる。そして会場のどこを歩いていても常に鳴り響いてくるエキゾーストノートに、観客はいやがおうにも反射的に振り返ってしまう。エントリーしたクルマの馬力を合算すると12 万馬力を超えるというから、その数字からだけでもグッドウッド・エステートの丘を駆け上がるレースカーたちのパワフルな雄姿と官能的な排気音を思い描くことできるだろう。

(上)ジェンソン・バトン氏は1968年ホンダ RA301に乗って登場。
(下)グッドウッド・ハウスの前のアクションスペースには大きなスタンドが設置されている。

どこを切り取ってもエキサイティングで美しい光景

グッドウッド・ハウスの前のアクションスペースには大きなスタンドが設置されている。

レースの舞台も最高峰なら、出走する“キャスト”もオールスターが顔を揃える。ヒルクライムのフォーマットは戦前のビンテージカーに始まり、F1 マシン、プロトタイプ、スーパーカー、GTマシンなど、出走車は各カテゴリーに選別された“バッチ”ごとに行うタイムトライアル形式となっている。選別テーマも秀逸なのがグッドウッドの特徴で、ル・マンのウィニングカーや GTマシン、プロトタイプまでを網羅する「SPORTS RACERS 1966-2000」、F1 マシンのターボ時代からノン・ターボとなった 1990 年代を振り返る「TURBO ERA AND BEYOND」、現代 F1 マシンで構成される「CONTEMPORARY FORMULA ONE」、注目のリミテッドモデルが揃う「MICHELIN SUPERCAR RUN」など 40 を超えるテーマで選別が行われている。このバッチを回すサイクルを会期の 4 日間繰り返すため、どのタイミングで会場に到着しても、目当てのレースカーがアタックすするシーンを見逃すことはない。

観客の目と鼻の先をど派手なカーアクションで駆け抜けていく。

ど派手なエンターテインメント

コースは会場をうねりながら横断するように設けられた全長 1.16mile(約 1.9km)の狭い一本道で、平均勾配は 4.9 %の登り基調だ。フォトポイントとしても有名な木立に囲まれたスタートラインでは、バッチごとに出走前のクルマがずらりと並ぶ圧巻の光景が広がる。マーシャルの合図とともに各車はタイヤを空転させながら白煙をあげてスタート。この瞬間に会場全体からモニターを通じて熱い視線が一気に注がれる。直後にコースは右へ折れて「パーク・ストレート」と呼ばれるホームストレッチへ。セイフティーバリアとして設けられた昔ながらのストローベイル(藁でつくった緩衝材)越しにVIPのホスピタリティエリアや大きな観戦スタンドが設けられているエリアだ。グッドウッド・ハウス前ではドリフト走行やドーナッツターンをするスペースが設けられ、エキサイティングなカーアクションが超一流のドライバーの手によって披露される。これがFoSのヒルクライムがレースではなくショーと呼ばれる所以だ。

グッドウッド・ハウスの前を通過し、ここから大観衆の前を一気に丘を駆け上がっていく。

一気に丘を駆けあがる

大歓声を受けたクルマは、シフトアップしながら甲高いエンジンサウンドとともに一気に勾配のあがる坂を加速していく。そして深い森のなかへ。木漏れ日を受けてきらめくマシンは、森を抜けると丘の頂上にあるスタンドで待ち構えるファンを眼前にゴールを迎える。どこを切り取ってもエキサイティングで美しい光景が満載のレイアウトだ。

ヒルクライムを果敢にアタックするシーンを心待ちにする観客の興奮度は常に最高潮。アドレナリンは全開だ。しかし FoS が醸す独特の雰囲気は観客のみならず、参戦するレースドライバーたちにとっても唯一無二の体験だという。

「日本、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカなど世の中には素晴らしいクルマがたくさんあって、素晴らしいモーターショーもたくさんある。アメリカにはペブルビーチ・コンクール・デレガンスのような最高のイベントもある。そのすべてを見てきたし、世界各国のレースにも出場してきた。その僕でさえ、ここ FoS を初めて訪れた時は、本当に驚いたんだ!」と語るのは、現在、レクサスのアンバサダーを務めるスコット・プルエット選手。INDYCAR や NASCAR など各レースカテゴリーで歴戦したモータースポーツ界のレジェンドにとっても“FoS は格別”と断言する。

路面に刻まれたスキッドマークがカーアクションの大きさを物語る。

このスゴさは足を運ばないとわからない

「20 世紀初頭のクラシックカーから、フェラーリ、ポルシェ、LEXUS などのスーパーカー、最新 F1 カーまですべてがここにある。もちろんル・マン優勝など偉大な実績をもつレースカーも勢揃いしている。テレビや雑誌でしか見たことのなかった憧れのクルマが目の前を走っているんだ! さらにはハンス=ヨアヒム・スタック氏、デレック・ベル、エマーソン・フィッティパルディ氏といった歴代の素晴らしいレーサーたちも会場に集まってくる……仲間のレーサーからいろんな話を聞いて FoS のことを理解しているつもりでいたけど、このスゴさは実際に足を運んでみないと分からない、と思い知らされたね(笑)」

百戦錬磨のプルエット選手にとっても規格外といえる FoS。2018 年はさらに F1 ワールドチャンピオンの実績をもつジェンソン・バトン選手やミカ・ハッキネン選手、現役 F1 ドライバーのバルテリ・ボッタス選手、ストフェル・バンドーン選手から、WRC で活躍するエルフィン・エバンス選手など錚々たる顔ぶれもヒルクライムに参戦し、英国のみならずヨーロッパや中東など各地から訪れた観客でにぎわう“モーターレースのガーデンパーティー”を一層盛り上げた。

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LEUXS RC F GT3のステアリングを握った伝説のドライバー スコット・プルエット選手。

ラグジュアリーからラグジュアリー・パフォーマンスへ

このモーターレースの新旧レジェンドがしのぎを削るヒルクライムに、LEXUS は、RC F GT3 を筆頭に、RC F Cupcar、LFA、LC、RC F 10th Anniversary をエントリー。2016 年に LFA で FoS デビューし、鮮烈のインパクトをグッドウッドの歴史に刻んだ前出のプルエット選手は、今回、GT3 のハンドルを握ることに。「FoS に来る観客はエンターテインメントを求めている。だからこそ一瞬で終わるシンプルなレースではなく、”ショー”にすることが重要なんだ。そうすることで、観客はみんなそのエキサイティングな光景を何年経っても忘れない」とレース前に意気込みを語っていた。

「Modern GTs」のバッチにカテゴリーされ、ベントレー・コンチネンタル GT3 やジャガー・F-type GT4 などの GTマシンとともに爆音を立ててパドックから出走した LEXUS RC F GT3 のヒルクライムコースのインプレッションをあらためて訊くと…。

観客は数々の歴史的なトラックでの人馬一体となったアクションを記憶と記録に残す。

その光景をファンは覚えている

「2016 年にここで LFA をドライブして、グッドウッド・ハウスの前でドーナツターンを披露したんだけど、観客たちは大喜びだったよ。みんなはその光景をずっと覚えていてくれるんだよ。ただクルマが走っているだけでは誰も覚えていてはくれないからね。大半の観客はグッドウッド・ハウス前のパフォーマンスエリアに注目しているけど、レーシングドライバーとしてはコース全般、始まりから終わりまで全部好きだ。終盤にさしかかると石垣でできた高い塀が続くんだ。そして一気に視界が開けたと思うと、ファンで埋め尽くされたゴールスタンドが待ち構えている。その光景は、いい意味でクレイジーそのものだよ(笑)。みんなが歓声をあげ、叫び、手を叩いているんだ」

真のモーターレースファンが集まる“クレイジー”な舞台で、世界の名だたるチャンピオンマシンやスーパーカーと肩を並べ、観客の心に残る走りを披露し続けてきたことで、LEXUS に対するブランドイメージが大きく変化していくダイナミズムを実感しているという。

(上)バーンアウトしながらスタートを切るスコット・プルエット選手がドライブするRC F GT3。
(下)豪華絢爛スーパーカーのカテゴリーにLFAが参加。

10周年を迎えた『F』の真価

「かつて多くの人は、LEXUS と聞くと単なるラグジュアリーカーをイメージしていた。しかし、ハイパフォーマンスの『F』ブランドが誕生し、10 周年を迎えた今、LEXUS はラグジュアリーなだけではなく、パフォーマンスが高いことにもスポットライトが当たりはじめている。実際に GT3 以外にも市販車である LFA や LC、RC F を走らせることで人々にそのパフォーマンスをお披露目できるんだ。グッドウッドに来る観客は、AMG、フェラーリ、ランボルギーニ、マセラティ、マクラーレンなどのパフォーマンスカーを見るためにやってくるのであって、SUV やセダンを見にくるのではない。だからこそ、ラグジュアリーとパフォーマンスの双方を観客とライバルたちに披露することができる FoS は、LEXUS にとってとても重要なイベントなんだ」

豪華絢爛スーパーカーのカテゴリーにLFAが参加。

FoS に惜しみない賛辞を送るプルエットだが、LEXUS と FoS の“いい関係”はまだ始まったばかり。しかしその関係が“蜜月”に変わる日はそう遠くはないと確信しているかの表情でインタビューを締めくくった。LEXUS Fがハイパフォーマンスモデルだということを大勢の自動車ファンに知ってもらえたに違いない。

 

連載最後となる次回の 3 回目では、ヒルクライムだけではない FoS をバーチャルツアーで紹介!豪華 VIP エリアや特別展示、メーカーパビリオンなど本場英国の自動車文化に浸った 1 日をドキュメントする。

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