The Vision

終わりなき道の先を
見つめ、
決して歩みを止めない
伝統産業「輪島塗」の
担い手たち

ある日突然、日本のどこかに現れ、わずか数日で消えてしまうプレミアムな野外レストラン『DINING OUT』。
2019年10月、『DINING OUT WAJIMA with LEXUS』は「漆文化の地に根付く、真の豊かさを探る。」をテーマに、奥能登の棚田を舞台に開催されました。
今回、その食卓を彩り、珠玉の料理と見事な融合を見せたのが、オリジナルに作り上げた6種の「輪島塗」です。
これらの器のクリエイティブプロデューサーは新国立競技場の設計でも知られる建築家、隈研吾氏。
デザインの最先端をひた走る隈氏と、技を究め、伝統技術を守る輪島塗職人たちの魂の響き合いが、そこにはありました。
LEXUSとも深く共鳴する職人たちの哲学、輪島塗への想いを、更なる進化を遂げたLEXUS RXと共に探ります。

『DINING OUT WAJIMA with LEXUS』のディナーを終えた隈氏は、輪島塗の器作りを振り返り、「ひとつの建築を作り上げるのと同じくらい大変なチャレンジだった」と感慨深く語りました。輪島塗の器は完成までに124とも言われる工程を要し、その過程は完全分業体制が取られています。この途方もない手間ひまをかけて完成させる輪島塗の個性に着目するとともに、各職人の卓越した職人技にフォーカスした隈氏は、「木地」「布着せ」「地塗」「上塗」「沈金」など器が出来上がる製造工程を表現した一連の食器をデザインしました。
輪島塗の歴史上あり得なかった、製作過程も「輪島塗」として世に出してしまうチャレンジは世界的建築家だからこその独創的アプローチです。

始まりの工程「木地」。通常は長ければ5年もの歳月をかけて乾燥させる輪島塗用の木材。椀や皿などの丸い器を専門に削り出す職人「椀木地師」、寒長工房の寒長茂氏は「ただただ、綺麗な木地を挽きたいだけ」と作業に没頭します。視線の先にあるのは鋭い刃物が付いた棒状の道具“カンナ”。粗挽きから中挽き、仕上げまで何種類ものカンナを使い分け、木地の内側と外側に当てながら、光に透けるほどの薄さに削り出していきます。綺麗な木地を挽きたいというひたむきさから、先人の想いを引き継ぎ、更に自身の技を乗せていく。そこには常に美しさを追求する姿がありました。

輪島塗の特徴である分業制は「輪島六職」と呼ばれ、ひとつの器が製造工程で職人から職人へと渡っていきます。「それぞれが頑張って、全員が頑張るから、使う人の手元に届く」と強調するのは、「布着せ」と「下塗」を担当する向工房の向敏郎氏。布着せとは椀の縁など木地が薄くて破損しやすい部分に漆で布を貼り付け補強する、輪島塗ならではの工程のことです。

下塗の漆に輪島地の粉と呼ばれる珪藻土を混ぜるのも輪島塗特有。配合する地の粉を段階的に細かくしながら、漆を数回重ねて塗り、その度に時間をかけて乾燥させ、丁寧に研磨します。「職人の世界って何十年もやってると、“手が決まる”と言って、覚えたことの基礎で毎日の仕事はこなせるようになるんです。でも、いやそうじゃない、もっと速く、もっと美しくできないか……と器に向き合います。」。通常、漆で塗り隠してしまう部分もあえて見せる。たとえ表から見えない仕事であっても、決して手を抜くことは無い輪島プライドを表立たせました。

上塗を担当するのは、茶平漆器店の上塗師・小川正雄氏。上塗には性質の異なる様々な精製漆を使います。季節や気候に合わせ、最良の塗膜に仕上がるように漆を調合し、ホコリ等がつかないよう細心の注意を払いながら刷毛塗りします。全てを漆に捧げているとも言える小川氏は、鏡のように美しく輝く器を愛情深く見つめます。「上塗師として明日は今日できた以上のことをしていかなければ。そのためには常に先を見なければいけない。この道にはきっと終わりはないのだと思います」

幾重にも漆を塗り重ねることで到達できる深い色味。LEXUSもまた、特有の深みと艶感のあるボディを何層にも塗装を重ねることで生み出しています。匠の技と感性によって、複雑に湾曲したボディに対し塗料の厚みを均一にし、鏡面仕上げで艶を極限にまで高める事で、朝から昼、夜の時間の移ろいによって表情が変わっていく「時の流れ」までも表現していきます。妥協することなくボディの究極美を追求するLEXUS、そして常に美しさに向かって前進する輪島塗の職人たち。そこには確かな共通項がありました。

塗りの仕上げの工程「呂色」は、研ぎ炭を使って平滑に研ぎ、漆を摺り込みながら磨き作業を繰り返した後、最終仕上げは人の柔らかな手肌と脂で行われます。「漆の肌は人肌に近い。漆の肌と会話するように、人間が直接触って一枚一枚仕上げるのが理想的やと思います」とは大橋呂色店の大橋清氏。人の手による感性で仕上げるからこそ生まれる最高品質です。

最先端技術の結晶であるLEXUS。その技術を精緻にコントロールし、まとめ上げるのもやはり、人の手による感性です。なぜなら、人間の感性は機械よりも繊細かつ精密だから。熟練したLEXUSの匠たちの卓越した技術、そして不完全なものを許さない徹底した姿勢は、機械では検知できない数ミリ、数ミクロンの違和感をも見逃すことはありません。静粛な室内、安定した走行性能は、彼らの感性によって実現されているのです。

加飾の技法「蒔絵」や「沈金」も輪島塗では洗練を極めてきました。上塗や呂色で仕上げた表面にノミで文様を彫り、金箔や金粉を入れて装飾を施す沈金は、絶対に失敗の許されない工程。「器には、木地から下地、中塗り、上塗り、呂色までされた方の全責任を負うという意味で自分の名前を刻みます。一回一回が全て真剣勝負」。沈金師、前古工房の前古孝人氏は、そう話して襟を正します。今回、同氏が担当したのは縁をぐるりと真円の沈金で彩る工程。手作業で美しいカーブを描き真円を削り出す技は、鍛錬の末に体得した匠の技そのものです。

想いを込めて、繰り返し、繰り返し、刻まれる線。途方もない反復の末に辿り着くことができる究極の美しさがあります。LEXUS RXの精悍なグリル。何千回もグリルの線を描き、手作業を積み重ねながら丹念につくり込んだからこそ生まれた形です。見る角度によって表情が変わるブロックをエンブレムから放射線状に構成し、力強さとともに華やかな印象を創出しています。

「終わりはない。死ぬまで勉強」。
「我々も常に進化していくだろう」。
今回の隈研吾氏との取り組みによって、輪島塗の制作現場には、未来へ向かって飽くなき挑戦を続ける職人たちの力強い言葉がありました。彼らの哲学は、LEXUS RXのテーマである「進化し続ける」と共鳴します。モノづくりは守るだけでは廃れてしまう。常に進化していくことで伝統になる。今日の自分に満足せず、常に挑戦し続けることが、確かな進化を実現していくのです。