Co-Creation 実践者たちが表現する。
CRAFTEDが創り出す
新しい価値とは

2020年2月17〜20日
Industry Co-Creation (ICC) サミット FUKUOKA 2020

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レクサスブランドに脈々と流れる考え方……それが「CRAFTED」。その構成要素とは、ものづくりでも大切にされる職人としての技や精神(Craftsmanship)に加え、あらゆることに気を配って考え抜く日本の歴史が育んだ美意識(Thoughtfulness)だと考えています。

ありとあらゆる方法で、CRAFTEDを追求するレクサス。世の中にあるさまざまなプロダクトやサービスにも、CRAFTEDを見出しています。

2020年2月17〜20日にかけて開催されたビジネスカンファレンス「Industry Co-Creation(ICC)サミット FUKUOKA 2020」にレクサスは公式スポンサーとして参加。その一環として、豊かなライフスタイルの実現に寄与する新規サービスを集めたピッチコンテンスト「CRAFTED カタパルト」を実施。登壇者8組によるプレゼンテーションが行われました。

この記事では、その上位入賞プロダクト、そして当日夜に行われた優勝者を含めたスペシャルセッション「CRAFTED NIGHT」の模様から、実践者たちの姿を通じて「CRAFTEDが創り出す新しい価値」の形に迫ります。

「ものづくり」や「ライフスタイル」の
登竜門

ICCとのコラボレーションによる「CRAFTED カタパルト」は今回で3回目の開催。これまでにもクラフトチョコレートブランドの「Minimal -Bean to Bar Chocolate-(ミニマル)」、九州の農業素材と伝統加工技術を掛け合わせた“KYUSHU ISLANDブランド”を展開する「一平ホールディングス」が優勝を手にしてきました。

また、参加者にはサービスを順調に拡大させていたり、投資家からの資金調達を達成したりしたものも生まれ、「ものづくり」や「ライフスタイル」に主眼を置くサービスの登竜門の一つとなりつつあります。

今回のICC サミット FUKUOKA 2020でのCRAFTED カタパルトには、全8組が参加。朝採り野菜を農家から直接買えるオンラインマルシェの「食べちょく」、デニム生地の名産地である岡山・瀬戸内発のブランド「EVERY DENIM」などの参加者を前に、開催にあたってLexus International レクサスブランドマネジメント部 Jブランディング室 室長の沖野和雄がメッセージを贈りました。

「私たちも、精神に基づいたプロダクトやサービスがもたらす豊かな時間や体験を一人でも多くの方に感じていただきたいという思いで、CRAFTED カタパルトの参加者とのイベント共催やメディアを通した発信を強化したりしています。ぜひ、この優しさと情熱に満ちたCRAFTEDコミュニティに加わってもらえたら嬉しいです」

伝統的産業を「技術力」や「情熱」で
現代へアップデート

壇上では持ち時間の限り、参加者それぞれが自身のサービスについての熱い想いを審査員へ語りました。食にまつわるサービスの場合は、自社商品を審査員すべてに配るシーンも。プレゼン資料だけでは伝えきれない味覚にも訴えかけます。

今回のCRAFTED カタパルト上位入賞者は、いずれも伝統的な産業を「技術力」や「情熱」で現代に合う形にアップデートし、また各地域の地場産業を助けるところに共通点があったように感じます。

第3位はWorld Matcha Inc.の抹茶メーカー「Cuzen Matcha」。共同創業者でCEOの塚田英次郎さんは、昨年春の創業まで大手飲料メーカーに21年間勤め、新商品開発や新規事業創出を担ってきました。人気商品を生み出した経歴もあり、近年はアメリカで抹茶ドリンクの展開を担当に成功。可能性を感じるなかで本社から帰国の辞令が出るも、塚田さんの心には抹茶への想いがくすぶっていました。

そのような中、後にWorld Matcha Inc.のもうひとりの共同創業者である八田大樹さんの実家が営む、お茶の生産地として知られる福岡県・八女の茶畑を訪れると、生産者の高齢化や耕作放棄茶園の増加などの課題に直面。日本国内では高品質の日本茶葉の需要が減り、価格も下がり続けていることを知ります。

塚田さんはその課題に対し、「アメリカで高品質な抹茶の需要をつくろう」と決意。独自に抹茶のエスプレッソマシンを開発し、日本産の良質な茶葉をサブスクリプションで販売するビジネスを展開。「アメリカだけでもコーヒー市場は8兆円ある。それを徐々に誘引していきたい」と意気込みを語りました。

第2位はパンフォーユーが展開する冷凍パンのオフィス向け販売サービス「オフィス・パンスク」が射止めました。代表取締役の矢野健太さんは、小規模ベーカリーでも導入しやすい独自の冷凍技術を開発。減少傾向にある小規模ベーカリーから、大型の設備投資をせずとも冷凍パンを送れる環境をつくり、それらを集約。オフィス向けの定期配送型の福利厚生として提供をはじめました。

小規模ベーカリーの販売機会を増やすだけでなく、「製造と販売の分離」も促進します。従来、小規模ベーカリーは製造拠点と消費者小売の店舗を兼ねることが多く、製造者は早朝からパンを焼きながら、閉店まで売る作業を並行する仕事を続けざるを得ない状態にありました。しかし、冷凍技術の導入により、立地や売り場面積に左右されず、商圏外への販売が可能に。また、夕方などの空き時間も製造に活用できるように。

現在は大衆店から高級店まで冷凍パンの需要が伸びていることから、それらのOEMも開始。また、家電メーカーとの専用オーブンも開発。矢野さんは「地域のパンを通じて、ともに新しいパン経済圏を作りましょう」と呼びかけました。

今回の第1位に輝いたのは、京都の丹後で300年前から続く伝統産業「丹後ちりめん」の技術を用いたネクタイなどを作る「KUSKA」。日本の絹織物の6割をつくる一大産地でありながら、「着物離れ」と安価な輸入品の影響で、生産量は最盛期の3%にまで激減。

ブランドを作るクスカ代表取締役の楠泰彦さんは、帰省した折に衰退する地場産業、廃業寸前の家業に直面し、「生まれ育った自分でなければ、この仕事は継げない」と思い立ちます。すぐさま職場を退職し、家業に入りました。商品としての独自性を追求し、大量生産・大量消費から脱するべく、それまでの織物機械をすべて破棄し、昔ながらの手織りの良さと、現代機械の生産性をハイブリッドさせた、世界でも稀な自社設計の手織り機を誕生させます。

次に流通改革として、「KUSKA」ブランドを立ち上げ、メイン商材をネクタイに一本化。素材に空気を含むような立体的な織り方で、職人ひとりが一日に3本しか織れない、世界で唯一のネクタイが完成。大手セレクトショップ、百貨店、航空機内のほか、イタリア・フィレンツェでの展示会出展などを機に、著名な海外ブランドとのコラボレーションも実現させていきます。

「表面的なロゴや和柄などのデザインを入れるのでなく、その素材の持つ風合い・質感を最大限に活かし、それを使う道具、工程、職人の手仕事こそが本質的なデザインを生み、本当の美しさが表現できる。それが我々の考えるCRAFTEDです」

丹後ちりめんで培ったものづくりの技術を、KUSKAのクリエイションで表現する。楠氏は「ものづくりは嘘をつかない。そして京都・丹後の美しいものづくりを通じて、世界中を幸せにする」というKUSKAのミッションを高らかに宣言しました。

審査結果を受け、レクサスの沖野は「“CRAFTED魂”を突き抜けると、世界中にいる同じ想いを持つ人、まだその価値に気が付いてなかった人も、新しい発見でつながれる時代なのだと改めて気づかされました」と話し、登壇者がそれぞれで発見した「価値」についての賛辞を贈りました。

“CRAFTED魂”のある
ものづくりの要素とは?

同日夜には会場を移し、トークセッションや親睦会などを交えたイベント「CRAFTED NIGHT」も開催。これまでのCRAFTED カタパルト登壇者が自社商品やサービスの展示・試食などをするブースも設けられ、まさに沖野が感じた“CRAFTED魂”が満ちた会場は盛況を見せました。

トークセッションには、前回のCRAFTED カタパルト優勝者である一平ホールディングス代表取締役社長の村岡浩司氏をはじめ、岐阜の繊維メーカー・三星グループ代表取締役社長の岩田真吾氏、「コエドビール」で知られる協同商事コエドブルワリー代表取締役社長の朝霧重治氏、そしてクスカ代表取締役の楠泰彦氏が顔を揃え、『衣食住を通じてCRAFTEDを考える』をテーマに語り合いました。

モデレーターは、デザイン・イノベーション・ファーム「Takram」のコンテクストデザイナーで、慶應義塾大学SFC特別招聘教授である渡邉康太郎氏が務めました。渡邉氏は冒頭で「CRAFTEDのあるものは五感の体験から入り、ブランドに近づいていくと共に、人の目線をそのものを上げていくと思う。良いビールをひとつ飲んだら、クラフトビールやお酒全体にも興味が向くようなものです」と言います。

これに岩田氏は「商品スペックは人へ広く伝えていくときに効果を発揮しますが、人間が本当に体験するのは五感。僕らの“着たら感動するTシャツ”という商品も、できるだけ触ってもらうことを大事にしています。その感動で日常の価値をもっと上げられるはずですし、そういった感覚を大事にするほどに毎日はもっと豊かになるはず」と応えました。あらゆることがロジック優先で比較されやすくなるなかで、感覚への回帰を訴えます。

村岡氏も「感性に価値は宿る。買い手が対象を本当に好きになり、没入して語り始めると、作り手も買い手もイコールになれる瞬間がきます。作り手上位ではないものづくりの形がある」など、前日のイベントでも議論に挙がったコンテクストデザインを参照するかのような言葉を重ねました。

「一方で、“CRAFTEDなもの”を突き詰めることで目線が上がると、クオリティが至らないものにも気づきやすくなってしまうし、多くは作れなくなるのでは?」と渡邉氏は問います。良いものを求めるあまり、ビジネス的な規模を追えなくなるのでは、という疑問です。

この疑問に前提から向き合ったのが朝霧氏。「ビールの本質でいえば、生産規模の大小はクオリティには関係ない。むしろ、クラフトなものは少量で作ることを信奉しすぎるところもあります。あくまで味としての楽しみがあることが食にとっては最大の価値」と話します。クラフトマンシップと聞くと、つい少量・高品質となりがちなところに、規模の大小は本質的な問題ではないという土台の議論は、確かに見過ごされがちかもしれません。

渡邉氏は「コンテクストデザイン」のセッションからも話題を引き、「CRAFTEDの価値は“非効率だけど長期的には無駄にならない取り組み”や、“すぐにお金に替えられない価値”になるのではないか」と聞くと、岩田氏や楠氏は自らの実践を答えます。

岩田氏は原材料を知ることの“非効率エピソード”を明かしました。「ぼくはあくまで生地屋ですから、糸屋がサプライヤーです。ただ、今の時代にどこの羊から作られた糸なのかを知らないなんてあり得ないな、と思って現地視察をしたことがあります。オーストラリアの南にあるタスマニアまで行きました。ぼくらの布をヨーロッパで売るときや製品作るとき、環境づくりからして過酷な牧場の仕事を伝え、そこから出てきた繊維だから……と価値について話せるようになった。いずれは社員みんなを連れて行くのが夢ですね」。

京都・丹後から世界に一つのネクタイを届ける楠氏は、自社ブランドの発展はもちろんのこと、それが長く続くためには地域そのものの魅力発信が必要だと考えます。「丹後ちりめんは生産量が激減しながらも、着物文化自体はあり、職人が多く残っているが珍しい。ただ、徐々に減っている現状を思うと、産地自体をブランディングしないといけないと思っています。丹後は観光、海、食と魅力が他にもある。自社でメディアをつくり、そこで丹後の情報を発信するようにして、醸成しているところです」と今後の構想を語りました。

CRAFTEDコミュニティを紐解くことで
見えるもの

実践者が語るCRAFTEDが創り出す新しい価値。これまでのエピソードから、どのような共通項を見たでしょうか。美意識や感性を内包するだけに、その明確な答えはありません。

ただ、一つには、CRAFTEDは決して破壊的イノベーションを指すのではないといえそうです。脈々と受け継がれてきた技術、伝統、素材、生産品……それらの価値を改めて見つめ直し、現代のライフスタイルに合わせていく。

CRAFTEDコミュニティに属する商品やサービスを、丁寧に紐解いていくことで、よりその価値や魅力が浮き彫りになっていくのでしょう。

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