2015.3.27-28 第4回ドライビングレッスン @ 富士スピードウェイ
OPENING
スペシャルインストラクター登場
誰もが目を奪われるほど鮮やかな稜線を春の青空に刻んだ富士山。その裾野に広がる富士スピードウェイで、2013年夏から数えて第4回目のLEXUS AMAZING EXPERIENCE ドライビングレッスンが開催された。
前日に北海道からやってきた人、山形からクルマを走らせてきた人等々、全国各地から参加者が集結。その内、約3分の1がサーキット走行未体験者で、女性一人の応募者も複数いた。回を追うごとに参加者の顔ぶれも個性豊かになってきている。
2日に渡るドライビングレッスン。初日の金曜日は、昼過ぎのドライビングベーシックからスタート。ここで最初に紹介されたのは、全8名のインストラクターの中でもスペシャルな二人だ。まずは日本を代表するレーシングドライバー、LEXUS TEAM PETRONAS TOM'Sの伊藤大輔選手。そして、今シーズンからLEXUS TEAM SARDのメンバーとなり共にSUPER GTシリーズを戦うことになったヘイキ・コバライネン選手。彼は2007年から7年に渡りF1で活躍し、優勝経験もある元グランプリドライバーだ。予告なしの二人の登場に参加者は息を飲んだ。
「僕がインストラクターを務めさせてもらうのはこれで2回目ですが、講師陣皆で内容を吟味し、LEXUSの世界観を楽しめるようプログラムを考えました。普段はなかなかファンの方と触れ合う時間が持てないので、今日はクルマの楽しみを思う存分共有しましょう」
伊藤選手の挨拶に続いてコバライネン選手がコメント。
「このようなイベントは、クルマの魅力を知ってもらうためにとても大事だと考えています。LEXUSのパフォーマンスを信じて、それぞれリミットまで挑んでください。僕も皆さんの背中を押します」
二人の笑顔を見て参加者は割れんばかりの拍手を贈った。その響きの大きさは、これから始まる"大人の遊び"に向けた期待値そのものだったろう。
AMAZING SWITCH & BLIND GYMKHANA
難しいってわかるだけでも大きな発見
初日の午後、3組に分かれた参加者には3つのプログラムが用意された。第1は、ショートコースを使った"AMAZING SWITCH チャレンジ"。コース上に記された色分けベストライン(ブレーキング=赤、アクセルキープ=白、アクセルオン=青)をトレースしながら、もっとも速く安全にサーキットを走るための術を学ぶ基礎プログラムだ。コーナーのイン側クリッピングポイント8カ所にAMAZING SWITCHを設置。それをタイヤで踏むというゲーム性も加えた。使用車種はRC350 とRC300hのF SPORT。プロレーシングドライバーのインストラクターが助手席で随時レクチャーしてくれる。
簡単な説明の後、すぐコースイン。
毎回のことだが、何より体験を優先させる潔いレッスン姿勢には参加者全員が驚いていた。
「思っていたより自分のドライビングにメリハリがないことを指摘していただきました。プロのアドバイスは効きますね」。普段からサーキット走行を楽しんでいるというベテラン参加者は腕を組んで感じ入っていた。レースデビューを夢見て練習に励んでいると語った単独エントリーの女性は、「ライン取りやブレーキングなど、もっと考えて運転しなくちゃと思いました。でも、2本目は限界に近づけたと褒めてもらえたんですよ」と照れくさそうな笑顔。
緊張の取れないメンバーを見つけ、伊藤大輔選手がそっと近寄った。
「案外難しいでしょ。でも、僕らプロもこういう基本をしっかり身につけたからこそ限界ぎりぎりまで攻められるんです。難しいってわかるだけでも大きな発見なんですよ」。それを聞いた後のチャレンジで褒められたのが先述の女性。伊藤選手、ナイスフォローである。
第2は"ブラインド ジムカーナ チャレンジ"。広場を利用したジムカーナだが、その名の通り段ボール箱を積み上げたブラインドを各所に備えた、実にアメイジングなプログラムだ。用意された車種はIS350 F SPORT。
「僕もこんなジムカーナ、初めてです。いい機会ですから、思いっ切り攻めてください」、コースサイドのブリーフィングルームで新田守男インストラクターから檄が飛ぶ。
それを受け、独身時代にジムカーナを趣味にしていたという男性がストップラインで静止しきれず、目の前の段ボールフェンスにタッチ。
「ちょっと勢い余っちゃいましたね。でも、そのおかげで力が抜けて、2本目は満足いく走りができました」
各自2本の練習走行を済ませると、いよいよタイムアタック。結果が明確になる唯一のプログラムなので、参加者のボルテージも次第に高まっていった。ジムカーナ初体験者は上気した表情でこう言った。「自分の記録が更新されるとやっぱり悔しいですね。何かを競うなんて久しぶり。思わず興奮しちゃいました」
忘れていた興奮、あるいは新しい刺激。参加者それぞれにとって"走る楽しみ"を存分に味わったプログラムになった。
DYNAMIC CONTROL
舌を巻くコバライネン選手のデモ走行
グループ別レッスンで新設された第3の挑戦が"ダイナミック コントロール チャレンジ"。これまた広場を利用し、水を巻いた滑りやすい路面の上でリアタイヤを滑らせながら、180度から360度までの旋回を行う。通常ではあり合えない状況でいかにクルマを思い通り操るかを楽しみながら学ぶことができる。
まずはコバライネン選手がRC Fでデモ走行。終始リアを滑らせながら見事な定常円旋回を披露した。「上手すぎるなあ」とマイクに向かって驚きの声を上げたのは福山英朗インストラクターだ。彼はアジア人として初めてアメリカのNASCARシリーズ決勝に進出し、シーズンを通して参戦を果たしたドライバーでもある。そんなレジェンドですら舌を巻きつつ、「あの技を上回ったら皆さんもSUPER GTにデビューできますよ」などと冗談を飛ばし、緊張を和らげていた。
しかし、肩の力は抜けても半ばスピン状態の車体を制御するのは容易ではない。腕に覚えのある男性は、「もっとアクセルワークを研究しなきゃいけませんね」と真摯だ。
また、人生初のドライビングレッスン体験という男性は「日常生活で経験できないシチュエーションですからすごくおもしろいです。できれば半日これだけやりたい」と目を輝かせていた。
また、かつて別の走行会でLEXUSを運転したという参加者は、一風変わったコメントをくれた。「クルマがよくなってる。その進化に心が動かされています」
6 SENCES DRIVING
親密なドライビング解説
「新たな運転領域を目指して第六感を研ぎ澄ます」というのが"6 センス ドライビング"。初日最後のプログラムとして、参加者全員が再びショートコースに集結。ここまでのプログラムを踏まえ、加速と減速のタイミングとその操作、ライン取り等を総合的に検証する。RC FとRC350 F SPORTを乗り換えながら、各車に設定された基準タイムにどこまで寄せられるかというゲーム性も用意した。さらに、この日すべてのプログラムをインストラクターが採点。成績優秀者上位3名にはプレゼントが贈られるとアナウンス。ガレージ内に歓声が響き渡った。
6 センス ドライビング開催中には、同じくショートコースを走ったAMAZING SWITCH チャレンジで収集した各自の走行情報を記録したデータロガーが公開された。このデータロガー、実際のレースでも使われている精密かつ本格的なシステムだ。
その解説を引き受けたのは、伊藤大輔選手とコバライネン選手の二人。それぞれが事前にショートコースを走ったデータと各参加者のデータを比較しながら、運転向上のポイントを伝えた。伊藤選手のファンだという女性は、「こんなことってあるんですか?」と、この時ばかりは声が1オクターブ高くなっていた。
「ダメだとは決して言わないんです。僕はこうした。だからこんな風に走れた、というアドバイス方法なんです。とても親切でした。なにしろF1で見ていた人ですから、こんな貴重な体験はないですよ」。これはコバライネン選手の横に座った参加者の感想だ。
両選手とも身振り手振り、あるいはペダルを踏む足振りまで取り混ぜた説明を繰り返していた。その熱のこもった指導にすべての参加者が引き込まれた。
HOSPITALITY
クルマの楽しみを心地よく語ってもらうために
「クルマでつながる大人の遊び」を提案するLEXUS AMAZING EXPERIENCE。レッスン以外の時間は、クルマの楽しみを心地よく語れる空間をつくるべく、ホスピタリティの充実にも力を入れている。
今回初の試みは、東京・神楽坂のATELIER KOHTAオーナーパティシエ、吉岡浩太氏によるデザートのおもてなし。
ATELIER KOHTAは、店内のカウンターに座った客の前でつくる"美味しい瞬間にこだわったデザート"で人気を博しているが、そのスタイルを富士スピードウェイのピットガレージ内で展開した。
レッスン同様、ホスピタリティにもライブ感を表した形とした。吉岡氏にとってもかつてない経験だが、クレープシュゼット、モンブランショコラ、フレンチトーストといった、店でも出しているものにアレンジを加えた3品を用意し、手際よくオーダーに応じていた。参加者はもちろん、同伴者にも大好評。甘い香りに誘われて、3品すべて口にした人もいたらしい。
ランチをまかなうのは、吉田友則シェフ。地の食材をふんだんに使う出張料理を得意としており、LEXUS AMAZING EXPERIENCEではこれまでに何度も"見て楽しく食べておいしいメニュー"を披露してきた。
今回、2日目のアフターレッスンパーティでは、富士山周辺の食材を取り入れたランチを提供。9品目のお重にパスタと肉、スープをコーススタイルで提供した。こちらもまた、会話をより弾ませる内容だった。
その他、ショートコースや各会場でもホット&コールドドリンク等を準備。いかなる場所でもLEXUSを楽しんでもらえるような、五感を刺激するホスピタリティを目指した。
F EXPERIENCE
最高に楽しいドライブ!
LEXUS AMAZING EXPERIENCEの華でもあり、多くの参加者が待ち望んでいるのが、LEXUSのスーパーカーLFAと、走る楽しさを徹底的に追求したRC Fのハンドルを託される"F エクスペリエンス"。
2日目の午前8時半。ブリーフィングを行うメインコースのガレージのシャッターがおもむろに開く。
ピットレーンには3台のLFA。それに続くのは、Carbon Exterior packageを含む同じく3台のRC F。吸い寄せられるように立ち上がり、カメラを構えて近寄っていく参加者。それは年齢も立場も超えた、純粋なクルマ好きにとって当然の衝動だ。
「LFAにつられて応募したけれど、この2台を交互に乗れるというのもまずありえない経験ですよね」とある参加者が改めて驚いていた。
「富士山が目の前に広がって、最高に楽しいドライブでした」と弾けるように言ったのは、サーキットを始めて走った女性だ。
RC Fを次期愛車候補に挙げている男性は、笑顔で胸の内を明かしてくれた。「ほぼ心は決まりましたね。でもLFAも素晴らしい。買いたくても買えないけれどね」
RACING TAXI
すべての体験がしみ込んでいく
2日間に及んだドライビングスクール最後のプログラムは、インストラクターの運転によるその名も"レーシング タクシー"。ここでいよいよ伊藤大輔選手とコバライネン選手もヘルメットを被った。
このレーシング タクシーの最大の特徴は、参加者それぞれがここまでの各プログラムで得た経験値を、プロのレーシングドライバーのそれと比較できることだ。ただ助手席に座るだけの同乗走行とはその点が大きく異なる。ゆえに参加者のコメントも、「ブレーキング時の足元だけ見ていた」「無駄のないハンドルさばきに感心した」というような、興味の焦点が絞られたものが多くなる。
日本人2人目のル・マン24時間ウィナー、荒 聖治インストラクターのドライブに同乗した男性はこんな感想を聞かせてくれた。
「視線の置き方、ライン取りのポイントなどを丁寧に説明してもらって、レーシング タクシーでの荒さんの運転を見て、レッスン全体の指導の意味がよくわかりました。このレッスンはそういう形で集約させていくんですね。すべての体験が頭と体にしみ込みました」
一方で、「興奮した」「一生忘れない」と感嘆符のようなコメントが多く聞かれるのもこのプログラムの特徴だ。すべての参加者を別世界に誘い、2日間のレッスンは幕を閉じた。
CLOSING
これまで知らなかったクルマの楽しみ
すべてのプログラムを終え、全員で富士スピードウェイ内のLEXUSカレッジへ移動。インストラクターと同じテーブルでランチを共にするアフターレッスンパーティが開催された。
まずは、初日のプログラムの成績優秀者の発表から。1位に輝いたのは、ブラインド ジムカーナ チャレンジでジムカーナ熱が再燃したと語った男性だった。「うれしいです。でも、困っています。いや、これからは家族みんなで楽しめる方法を模索します」。その表情、困ったところなど微塵もないように見えた。
これだけ走り回ればもう初心者とは言えないと笑った男性は、「ともすれば危険を伴うのに、こんな私にもハンドルを預けてくれるのは、クルマに対する強い自信があるからなんでしょうね。実際、怖い場面は一度もなかった。プログラムも精査されているんでしょうね」
「プログラムの内容はもちろん、その流れやスタッフの対応が他とはまったく違いました。ドライビングを楽しむことに集中させてくれたのが素晴らしかったです」。様々なドライビングスクールに顔を出したことがあるという参加者は語った。
やがて別れの時間となり、それぞれが会場を後にする中、ひとりで訪れた女性が最後にこう話してくれた。
「昨日までは見ず知らずの人同士が、今は昔から知っていたみたいに仲良くなっている。連絡先も交換しちゃいました。こんなクルマの楽しみ、生まれて初めて知りました」
SPECIAL INTERVIEW
トップドライバーもファンも、同じ話題で盛り上がれる
第4回のLEXUS AMAZING EXPERIENCE ドライビングレッスン終了直後、今回のリーディングインストラクター、伊藤大輔選手とコバライネン選手、LEXUS INTERNATIONAL Jマーケティング室 室長の沖野和雄に、このイベントの意義を語ってもらった。
――ドライビングレッスンが終わった直後の感想は?
伊藤選手: まずはホッとしています。サーキットは安全第一ですからね。それが守られるよう僕らも毎回準備して、今回も無事に果たせたことに満足しています。参加者がうれしそうな表情で帰ってくれたのが印象的でした。
コバライネン選手: 集まってくれた人たちの基礎スキルの高さに驚きました。こうしたイベントに参加した経験がありますが、場合によってはハンドルの握り方から教えなくちゃいけないこともある。でも今回は違った。だからいきなり高いレベルの説明ができました。実力が一気に上がった人が多かったんじゃないでしょうか。
――レーシングドライバーとしてドライビングレッスンに参加する意味、メリットは?
コバライネン選手: インストラクターとしては、各参加者の実力を瞬時に把握して、適切な指導をするのが大事です。それによって上達していく姿を見るのは本当にうれしい。伊藤選手と同じように、クルマ好きと直接会って話すのは僕らにとっても楽しい経験です。ゴルフやトレーニングや、レースと関係ないこともジョークを交えて語り合えたのはおもしろかった。もしまた機会があれば、今度は参加者をもっとプッシュしてあげたい。
伊藤選手: より安全で走る楽しさを知ってもらえたらと思います。パワーのあるクルマでサーキットを走ってドキッとする場面もあったでしょうけど、そこで自分のスキルレベルがわかるじゃないですか。自分を知れば無茶はしない。それはレースも同じ。どれだけ丁寧に走らせるか、普段からよく考えて運転するとドライビングの懐が深くなります。あと、直接目を見てアドバイスできるのは楽しいですね。これを機会にLEXUSファンになってもらい、僕らのレースを見に来てくれたら何よりです。
――こうした豪華なインストラクターを招聘するLEXUSの思いとは?
沖野: 我々がもっとも伝えたいのは、クルマの楽しみです。それを深く知り尽くしているのが二人を始めとする一流ドライバーですから、一般の方に彼らの存在、あるいは彼らの世界観に触れていただくことはとても大事です。そしてクルマが素敵だと思うのは、トップドライバーもファンも、同じ話題で盛り上がれること。このドライビングレッスンがそういうあたたかいコミュニケーションの場になったら、それも素敵なことですね。
――今後もトップドライバーの参加はありますか?
沖野: もちろんです。クルマブランドがクルマの楽しみを発信するためには、彼らのご協力が不可欠ですし、その関係性に大きな意義があると感じています。次回も豪華なインストラクター陣とより中身の濃いプログラムを用意しますので、ぜひ楽しみにしていてください。
- ※車両は現行モデルとは一部仕様が異なります。
- ※車両は現行モデルとは一部仕様が異なります。