>ARTISTIC CRAFTSMANSHIP アーティスト 舘鼻則孝 QUALITY OF LEXUS

ARTISTIC CRAFTSMANSHIP アーティスト 舘鼻則孝 QUALITY OF LEXUS

アートがプロダクトになる
瞬間を目撃する
妥協なきクラフトマンシップが
作り上げた究極の“工業芸術”

最先端技術と伝統技術の融合――この表現はしばしば目にするが、「LC」にこそふさわしい言葉ではないだろうか。レクサスのアイコンとして、脈々と受け継がれてきたスピンドルグリルに起きた革新。量産品でありながらも、まるでアート作品のように精巧に作られたインテリアの数々。これらを現実へと導いたのは、デザインに対する高邁な思想、そして長年の経験と知恵に裏打ちされた高度な職人技と、並々ならぬ情熱に他ならない。
芸術作品ともいうべき、魂の込められたパーツが生み出される奇跡を、シューズデザイン・現代美術・舞台など多岐にわたる分野で才能を爆発させる、若きアーティスト舘鼻則孝氏が目撃した。

一つひとつ形状が異なるブロックで
構成された美しきスピンドルグリル

これまでもレクサスの「顔」というべき象徴な存在であり、人々を惹きつけてきたスピンドルグリルが、「LC」で新たなる進化を遂げた。メッシュ状に連なるブロックの構造体が、ロアからアッパーへその大きさを変化させながら、ボンネットへと繋がる美しいフォルムに仕上がっている。一見するからに複雑かつ緻密な構造は、いかにして生まれたのか。設計を担当するデジタルモデラーは、「これまで築き上げてきた手法を見直し、ゼロベースからの挑戦だった」と語る。

困難を極めたのは、「LC」のデザインフィロソフィーである、エレガンスさと機能の両立に加え、安全性を確保しなければならないことだった。平面的にも見えるブロックは、実はダイヤモンドカットのように、数十もの面を持った立体形状に加工が施されている。これは歩行者保護のために、エッジが出ないよう配慮されたもので、デジタルモデラーはすべてのブロックそれぞれに微調整を加えていった。 また、グリルのロアエリアは、走行時に空気を取り込みラジエーターを冷却するために空間が広くとられている。しかし、このままでは飛び石が侵入し、内部を傷つけてしまう恐れがある。この問題を解決するために導き出した答えは、二重のメッシュ構造だ。フロントメッシュのさらに奥に、細かいメッシュを配することで、デザインを損なうことなく機能を確保した。こうした厳しい制約を一つひとつクリアしていくことで、先進さとエレガンスさを兼ね備えた、唯一無二のスピンドルグリルが完成した。

一本のラインを縫うためだけに
特注された専用ミシンの数々
緻密なステッチで三次元構造シートの
妙技を演出する

シートを生産する工場へ足を踏み入れると、コの字を崩したような弓型にずらりと並んだ何台ものミシンに目を奪われる。なんと、一本のステッチを縫うためだけにそれぞれカスタマイズされているのだという。
「LC」では一般的なシートの倍近い、およそ60枚ものピースでシートを成形することで、複雑な立体形状を実現している。採用されるのは、セミアニリン本革とアルカンターラ®/本革の2種。厚みも特性も違う生地同士をアール形状に縫い合わせると、歪みが発生しやすくなるのだが、専用ミシンと洗練された職人技で見事に仕上げていく。

“いい道具だけでも、
優れた技術だけでも成り立ちません
ふたつがうまくリンクして初めて、
人の心に響くんです”

成形された大きなシートをそのままミシン台の上で縫ってしまうと、通気性を確保するために薄く加工された座面に、折りジワができてしまう。本来であれば “仕様”として見過ごされてしまう部分でさえも、完璧を追求する「LC」では、シートを吊るしながら縫う、という方法を編み出し問題を解決していったという。革の特性を知り尽くした職人だからこそ成せる技である。

「天然素材の革は長い年月をかけて、ようやくその特性を理解できるようになります。私自身、靴をはじめとして作品制作で膨大な皮革と向き合ってきましたが、革を思いのまま扱えるようになるまでに10年かかりました。道具もまた、世界中から集めて自分に合ったものを探し出しています。それら全てがそろって初めて納得のできる作品を作り出せるのです」と舘鼻氏は語る。 最終工程ではステッチがミスなく縫われているか、指先で一目一目確認していく。こうした地道な作業をこなしていく姿勢こそが、「LC」が「LC」たる所以だ。

“精巧なドレープの秘密は
高度な吸引技術にあったんですね”
ドアトリムに見る、
寸分の狂いもない曲線美

エレガントなドレープが印象的なドアトリムの生産工房へと向かう。まずはベースとなる基材に接着剤を吹き付け、乾燥機にかける工程からスタート。乾燥時間は秒単位で厳密に管理され、乾燥が終わると、素早く基材と表皮をプレス機にセットし、圧力をかけていく。注目すべきは、その圧着方法にある。プレス機には小さな穴が空けられ、裏側から表皮を吸引することで、寸分のズレもなく圧着できるのだ。ここで舘鼻氏は「吸引技術のおかげでドレープの形状を保ち、同時に、角度のついた溝も正確に出せるんですね」と吸引のもう一つの秘密を的確に見抜いた。

革の張り込みから、
抜き、検査に至るまで
膨大な手間をかけても
ハンドメイドにこだわる理由

続いて、ドレープと隣り合うパーツに表皮を張り込む作業へと移る。開発当初は縫い合わされた表皮の針穴部分がささくれるなど、理想通りに進まなかった。そこで考え出されたのが、ビデオカメラによる撮影だ。スロー再生で縫い付けの様子をチェックして、糸や針の太さ、ピッチまで細かく原因を追求し、ベストな条件を探っていった。

工房では熟練した職人が出来上がった表皮を、手早く張り込んでいく。引っ張る方向や順序、力加減など、その正確さに寸分の狂いもない。全ての情報が職人の指先にインプットされているのだ。ひと通り張り終えると、カッター刃のついた台に基材を固定し、ドアグリップ開口部をハンマーで叩き抜いていく。最後に傷や汚れがないかチェックして、ようやく一つのパーツとなる。完成するまでに、通常の10倍の手間がかかっていることを職人が話すと、「その手間を惜しいと思わないほど、『LC』には惹きつける力があるんですね」と舘鼻氏は納得の表情を浮かべた。

シフトノブひとつに
費やした2年もの開発期間
実現不可能と言われた
意匠を現実のものにした、
職人の意地と魂

「LC」の鼓動と人間の意思がダイレクトに繋がるシフトノブは、ドライブインプレッションを大きく左右する重要なパーツだ。手のひらに収まる小さなシフトノブに要求された技術は、かつてないほど高いもので、デザインスケッチを見た職人は、「具現化するのは不可能だと思った」と語る。しかし「LC」に“妥協”の文字はない。試作品を作ってはやり直しを繰り返すこと約2年、膨大な時間と情熱を注ぎ、一歩一歩着実に、実現への糸口を見出していった。

“完璧な佇まいの裏に、
試行錯誤の痕跡を感じます”
0.1mmの追求に表れる
手仕事の真価

シフトノブの生産は、支持体を覆う革の原皮チェックから始まる。専用の台に取り付けた革を、一定の張りを維持しながら、傷や塗料ムラがないか丁寧に精査していく。基準はとても厳しいもので、目を凝らしてようやくその存在を認識できるかできないかという程度でも、決して見逃さない。「こんなに小さなものまで、傷として弾かれるんですね」と舘鼻氏は驚きを隠せない。マーキングされたところを避けながら、一つひとつ手作業で型を抜いていき、一枚の革から製品として使える部分は、全体のわずか30%ほどだという。

切り抜かれたパーツは、立体的に縫製できる特殊な部品がついたミシンで、ゆっくりと確実に縫い合わせていく。縫い代はたった2mm。支持体にある細く浅い溝に入れ込むために求められる限界の幅だ。いよいよ、職人に不可能と言わしめた巻き込み作業へと進む。接着剤の塗布、張り込み、張り具合の調整――。わずかなズレが失敗へと繋がるコンマ1mmの作業に、舘鼻氏も思わず息を呑む。
巻き込み作業をより高度なものにしているのは、インステッチ加工にある。表皮を折り返しながら巻き込んでいくことで、縫い目の見えない仕上がりとなるのだ。完成品を手に取った舘鼻氏は「私が普段から行っている作業に近いので親近感がありました。ですが一品モノならまだしも、量産品としてこのクオリティが出せることは、ただただ驚くばかりです」と語った。