
前回お話したフェールタンクですが、IS Fではフェールタンクにサブタンクを設置すると共に、ガソリンの偏りに対応するオフセットポンプを採用。強烈な横Gがかかってタンク内のガソリンが偏ったときでも、必要量のガソリンを供給し続けられるようにしました。
公道だけをターゲットにした車ならここまでのメカニズムは必要ありませんが、サーキット走行を前提としたIS Fには欠かせないメカニズムです。
サーキットでの高速走行もできるクルマですから、高い路面追従性を持つ必要がありました。
路面追従性をつかさどるのがサスペンションとタイヤです。
まず、サスペンションは、レーシングカーの足回りのセッティングをするときと同様にセンサーを付けて、「足回りを構成する部品一つひとつがどのように動いているのか」という検証を一からやり直しています。そうして、本当に動かさなければいけない部品をどうやって動かすかを1個ずつ徹底解析し、ブッシュの特性までも新設計しました。
サスペンションに関しては、レーシングドライバーに“Fantastic!”と言われたほどの完成度です。

次に、タイヤです。街中での走行とサーキット走行では、タイヤに求められる性能が異なります。接地面をどう作るかというのが重要なポイントでしたね。
ホイールの軽量化も重要なアイテムです。高価ですが軽量で高剛性のアルミ鍛造にすることで1輪当たり4〜5sの軽量化も実現しています。
これにより、ばね上重量を100kg以上軽量したのと同じ効果が得られているとさえ言われていますから、運動性能の向上に大きく貢献しています。
スポーツモデルとして、「安全性」と「操る楽しさ」をどうやって両立していくかというのは重要なポイントだと思います。安全性を高めるために、操る楽しさが阻害されてはいけないし、逆に操る楽しさだけを追求して、安全性が保証されないのでは話になりません。
両方を追求した結果、それを両立させるSportVDIMの開発を進めることになりました。
SportVDIMは、路面の変化を予知して、クルマの挙動が崩れる前に制御する「Normalモード」エマージェンシー用の「OFFモード」に加え、よりドライバーの感性にあわせた制御を介入させる「Sportモード」の3モード。700パターンに及ぶ車両制御データを収集して、ドライバーにより異なる動作や、その時の車両の状態を分析して開発を進めました。
特に高いスキルを持ったドライバーのために設定したSportモードは、レーシングドライバーの走行テストでも、OFFモード時以上のタイムを記録しているほどです。サーキット走行でも、より安全に限界性能を引き出した走りを堪能することができます。

安全性の向上にはブレーキも重要なファクターです。
IS Fでは街中の低速走行でも、ハードなブレーキングを繰り返すサーキットでもしっかりと効く制動性能が必要でした。
一方で、どの速度域でも減速フィーリングに安心感があることも重要でした。
そのため、高摩擦係数でありながら、どの速度域でも自然なフィーリングでブレーキングできるパッドを四輪に採用したほか、そのパッドの性能を引き出せるよう、フロントのブレーキキャリパーを対向6ポッドのモノブロックを採用しました。
そのほかにもブレーキペダルのペダル比も変えるなど、トータルな視点で細かいところまでチューニングしています。 そこまでやって、初めて高性能のものができるのです。
また、冷却性を上げるための設計も随所に施しています。フロントの冷却ダクトをリンゴが入る大きさにしたほどです。
以前にもお話したように、IS Fはベンチマークとしたクルマがありません。 今までの基準どおりにつくっていたら、今までのクルマを超えるものは創れませんからね。
私とプロジェクトメンバーが一からスタディを積み上げ創り上げてきたものですから、IS F開発は新しい問題と発見が山積みでした。しかし、私が昔から創りたいと望んでいたクルマを、皆さんにお届けすることができたと思います。
IS Fは、「操ることを楽しむ」ためのクルマです。私がどれほど言葉を尽くすよりも、実際に乗ってもらうのが一番だと考えています。
街中での走行はもちろん、レーシングドライバーも驚くような性能を持っていますから、ぜひサーキットでの走行も体験してもらいたいですね。 サーキット走行でしか体感できない世界に、IS Fは連れて行ってくれるにちがいありません。
ぜひご試乗で、あなただけの「操る楽しさ」を見つけてください。

