
前回お話したステアリングホイールやシフトノブの加工ですが、操作性を向上させるために、本当に細かいところまでこだわりました。
ステアリングホイール、シフトノブの本革には滑りにくいくぼみ加工のディンプルを施してグリップ感を向上させました。 また、ステアリングホイールの縫製にはかがり縫いを採用するとともに、本革の継ぎ目を下端のみとしました。それにより長距離のドライビングでも、指先の引っかかり感や、グリップ感の低下からストレスを感じないようにしています。
指先を通じて感じるクルマとの一体感を、ぜひ試乗で確かめてほしいですね。

伸び感は、単にエンジンパワーを上げるだけでは生まれません。車をグッと加速させ、トルクをいかに出すかが大切です。
たとえばトルクカーブがフラットな特性を持つエンジンの場合、低速からトルク感を感じることはできます。
しかし、トルクがフラットということは、加速Gもフラットということです。そのようなエンジンの場合、車速の上昇とのリニア感が少なく、自分でコントロールしているという体感が得られなくなってしまいます。 アクセルを踏んで車速が上がっても、トルクの盛り上がりがなく、頭打ちになるように感じるのです。
トルク特性を検証するスタディとして、何十人ものスタッフが集まって、テストコースでいろいろなエンジンを積んだ何十台ものクルマを乗り比べました。
そして、伸び感という感性を数値化し、開発スタッフ全員で共有できる一つの方針を決めていくという作業を繰り返しました。
散々みんなで議論した結果、「伸び感のあるエンジンは、高回転で一気に盛り上がるトルク特性をつくりだしたものだ」という方針が決まり、そのトルク特性を生みだすためのパワー特性も決まり、開発が進んでいきました。
トルクの変化を創るために、吸気制御については、街中の走行での微妙な吸気コントロールと、サーキット走行に必要なパワーを生み出すための大量の吸気量を両立させることも考慮し、吸気口の数そのものを変化させる方法を考えました。
それがIS Fで採用したデュアルインテークです。
低中速域ではプライマリポートのみを開き、高速域ではプライマリとセカンダリポートを開くことで、エンジンに送る空気の量が切り替わり、トルクも変化します。
トルクピークの設定も重要でした。そこでサーキットと街中で使用される回転域から、閉開ポイントをシュミレーションして、トルクのピークとパワーのピークを研究した結果、トルクピークを5200r.p.m.、パワーピークを6600r.p.m.に設定しました。
トルクのピークとパワーのピークが近いので、ググッと引っ張っていく感覚がより高まり、伸び感を感じさせます。
タコメーターの針が上がっていくにしたがって、パワーが盛り上がって、それが頭打ちになるのではなく、「まだまだこの上にいきそうだよな」と予感を残しながらシフトアップしていくものになったと思います。

また、IS Fはサーキット走行を前提としたクルマなので、高速コーナーなどで強烈な横Gが発生した場合に、エンジンオイルがシリンダーヘッド回りに滞留し、オイルパンに戻りにくくなるという問題が発生しました。 そこで常にエンジンの潤滑性を確保するために、常時作動させるスカベンジポンプを新開発し、確実なオイルの潤滑を実現しています。
このオイルと同じく、ガソリンも強い横Gにより影響を受けます。ガソリンが偏り、ガス欠のような症状が起こるのです。
この現象を防ぐために、フェールタンクにも「ある工夫」をしています。
どんな工夫なのか、実車を見ながら想像してみてくださいね。
