運転が好き。走ることが好き。だから楽しいクルマをつくりたかった。IS F 開発責任者 矢口 幸彦

Vol.07「シーンに合わせて変化する、聴覚に訴えるエモーショナルなサウンド」

前回お話したフロントグリルの部分のメッシュ形状は、実はレクサスの「L」をモチーフにしたデザインになっているんです。
ちなみにメッシュ間の隙間は、上に向かうほど広がっていく意匠としています。
ぜひ実車でじっくり確かめてみてくださいね。

気持ちのいい音の音譜はできている、あとはその音をどうクルマに演奏させるか

皆さんはスポーツカーに乗っているとき、どんな「音」を期待しますか?

私は振動騒音開発に携わっていたので、音にはとてもこだわりがあります。

エンジンをスタートさせた瞬間から、低く重厚に響く「排気音」、アクセルを踏むごとに楽しくなるような「吸気音」、エンジン回転が自分の身体に伝わってくるような「メカニカルサウンド」。

振動騒音の開発をしていたとき、そうしたクルマを操る上での楽しみを増幅させる「音」に関しても、仲間内でいろいろと分析してきました。

また、レクサスの伝統ともいえる静粛性を生み出す “音のクリーニング”を行うことで、どの回転域であれば音がきれいに聞こえるか、といったスタディが土台としてありました。

「排気音」は、排気管の共鳴で生み出されるから常に聞くことができる。

「吸気音」はアクセル操作にリニアに感じられる。

「メカニカルサウンド」はエンジン回転が高ければ高いほど、エンジンの回転変動が減ってきれいに聞こえるから、高いところだけ聞かせるのが一番いい。

そうした音に関するスタディがバックグラウンドにあったので、あとはその「音」をIS Fでどうやって創り出していくか、クルマにどう演奏してもらうかが課題となりました。

IS Fでは、それぞれの音の一番いいところを3つ組み合わせて、走り出しと低速域では「排気音」を、加速する時にはアクセルに反応するように「吸気音」を、高速域では「メカニカルサウンド」を聞かせる、という三段階のチューニングを行っています。

タコメーターを見ないで、音だけでエンジンがどこの回転で走っているかが分かるほど、音にはこだわっていますよ。


“F”サウンドで、語りかけてくる。

走行シチュエーションによって変化する心地よいサウンドを生み出すため、サウンドシミュレーターを搭載した試作車でサーキット走行を繰り返して、サウンド特性を解析していきました。

まずは低速域での「排気音」。

一番大きな共鳴というのは、排気管の長さで決まるので、アクセルを踏まなくても、一定した音色が出せます。ビール瓶の口をフーッと吹いているときに出る音と同じ原理です。

低速域でアクセルを踏んでいなくても、排気音で気持ちいい音が鳴っていれば、ハイパフォーマンスカーに乗っているようなイメージが作れます。

しかし、アクセルを踏んだ時にも排気音を聞かせるのでは変化が少ない。そこで登場するのが「吸気音」です。

吸気系は、排気系と異なり長さを変化させることが簡単にできるので、音色が変えやすいんですね。

また、アクセルを踏んで吸気量が増えれば音も大きくなって、緩めれば音が小さくなるという変化もつけやすいので、アクセルに対してリニアに感じられる音作りができます。

そこで、2つの吸気口を設けることで吸気量と吸気系の長さが切り替えられるデュアルインテークを開発しました。高速域で従来のプライマリポートに加えて、セカンダリポートを開くことで、音色・音量の切り替えポイントを創っています。

音に変化が起こるのは、通常加速以上を得たいと感じるポイントを想定した3,600回転。

一番加速したいときに、ドライバーをその気にさせる200〜300Hzくらいの「パワー感や軽快感を感じる音」の周波数をつくることで、まるでクルマが語りかけてくるような感覚を感じられるんです。

吸気量が変わりますから、エンジントルク特性も切り替わり、伸び感を感じることができます。

エンジンの「メカニカルサウンド」は、クランクシャフトの回転部品やピストンなどの摺動部品のフリクションの低減、バルブ駆動時のバルブスプリングの反力にカムシャフトがたわまないような支持構造にすることで、高回転をスムーズにしてノイズを低減しています。

最高回転域でも研ぎ澄まされた純粋なサウンドが楽しめるようにしています。

また、シフトダウン時にも操る楽しさを感じていただけるポイントを創っています。

私のこだわりと、これまでのスタディが生かされたIS Fならではのサウンド。ぜひ試乗で実際に体感して、確かめてくださいね。