
まずは、前回にお話したエキゾーストディフューザーとマフラーの間に作った空間について、タネ明かしをしたいと思います。
エキゾーストディフューザーとマフラーの間にあえて空間を設けることで、排気ガスの流れをコントロールして、低音の聴かせたい音が響く様な仕掛けがしてあるんです。
それをあえてやった理由は、アイドリング域での重低音を発生させることで迫力を増すためなんですよ。
運転の楽しみを全身で体感してもらうために、音だけでなく、ATにもこだわりがあります。

街中ではショックの無い滑らかなシフト制御が求められますが、サーキットの中で走るなら、きっと物足りなく感じるでしょう。ですから、あえて従来のATでは考えられない変速時のショックを「感じさせる」シフト制御にこだわったんです。
トルクセンサーを搭載した車両でドライブし、心地よい変速ショックの数値化を図る評価テストを実施し、そのデータを元に最適なギアを選び、加変速を行う楽しさを創出するシフト制御を行っています。
なぜ、こんな所にこだわったのか?
それは、一台のレーシングカーとの出会いがあったからなのです。
IS Fの開発に入るずっと前、全日本ツーリングカー選手権(JTCC)を戦っていたレーシングカーに乗る機会がありました。
そこで得られたクルマとの一体感や音は、私にとって忘れることができないほど衝撃的なものだったんです。
ステアリングやスロットル、そしてすこぶるダイレクトなブレーキで、吸排気音も振動を含めて直接身体に響いてくる。
けれども、発進の難しさという点では、誰もが楽しめるクルマというわけではありませんでした。
「もし市販のクルマでこんな走りを達成しつつ、イージーなスタートができたのなら、もっと走ることを楽しめる人たちが増えるのではないか」
そのレーシングカーに乗って以来、そんな思いが私の心の中に常にあったんです。
ATの特性で「発進時の、ストールトルクを使ったイージー トゥ スタート」なところを生かせるな、と思ったんです。 けれど、ATでは走り出した時に、アクセルオンする瞬間のトルクコンバーターのスリップがやっぱり気になる。
前々から、ATのロックアップクラッチを使えば伝達効率が上がるので、MTのようなスムーズなつなぎで走りを再現できるんじゃないかと思っていたんです。
ロックアップクラッチが導入された当時に「これ、やれないかな?」とエンジニアに相談したら、「そんなことをしたら、ロックアップクラッチがもたないし、油圧制御が追いつかない」って言われてしまった(笑)。
そもそも、ATのロックアップクラッチというのは燃費向上のために取り入れられたものですからね。
けれど、IS F企画の段階では、LS用に開発したミッションであれば、大トルクに対応して油圧制御も改善されて、ハード的には使用可能なところまできていたんです。

だから、レクサスだからこそ、「できるんじゃないか」という話になったんですよ。
今までスポーツ走行からATをイメージすることってなかったでしょう?だから、「それをひっくり返してやろう!」と思ったんです。
IS Fは、ノーマルモードのDポジションでは滑らかな変速で快適な走行、サーキットでのスポーツ走行まで想定したMポジションでは、アクセル操作に対するダイレクト感と変速レスポンスを体感できる本格的なスポーツドライビングという二面性を持っています。
私たちが目指したのは、従来のAT制御の概念を打破し、ATの特性を生かしつつレーシングカーのような走りを実現するクルマでした。
その思いが、Mポジションとエンジンスタート時のインフォメーションディスプレイに込められていますので是非チェックしてみてくださいね。
